戦争一歩手前なわけで。
誓いを経てた後、軽く汗を吹いてからまた、部屋の前で任務についていた。
眠いがいつあの玉子が来るかわからんからな。
けど、眠いわけで器用に立ったまま寝る事にした。
この身体は器用だ。
耳とかに意識を飛ばしながらも睡眠が取れるのだから。
さすがに鎧をつけながら半日以上立ちっぱなしは足に来るが。
そして、昼食の時間ぐらいに玉子が昼食に招待したいとローズに会いに来ていた。
しかし、ローズ自信は「遠慮します」と言っている。
だが、さすが玉子様としか言いようがないぐらいに折れない。
あれか、玉子だからツルツル人の言葉が滑って脳に届かないのですか?
あまりにもしつこいので強引に忠告すると、俺を不敬罪で斬ると脅しを掛けてきやがった。
「出来るなら、どうぞ……そうすると、我が国との同盟はなくなりますね」
と、脅しには脅しを掛ける。
同盟国とは聞こえはいいが、カリブス国はシャウトール国よりも歴史がある。
それに、メンバー達の総本山があるため、依頼を出せばメンバー達も戦力となる。
まぁ、相手にも幾分かは流れるがな。
しかし、現ギルドメンバーやAランクのメンバーは8割以上がこちらに居る。
戦力さは明白なのだ。
メンバーという存在は国家間において抑止力になるのだ。
当時はこんな事想像さえしてなかったんだけどな。
「貴様の名前を聞いておこう」
「フェティーダ様に仕える最強の剣にして最強の盾、アラフィル=アッハバーナ」
「ふんっ……覚えておこう」
覚えなくてもいいわ、大人しくこの国というだし汁に漬かれて茶色く変色していろ。
捨て台詞を残して、視界から消えてく玉子を見送ってから、再度仮眠に入ろうかと思った。
仮眠に入る直前に玉子が来た逆の方向から足音が聞こえてくる。
次はなんだ? とそちらへ向くと、小隊長が歩いてきていた。
「アッハバーナ、変わるぞ」
「しかし」
「皆まで言うな、今回についてフェティーダ様は何一つ悪くないし、被害者だ。
同情こそすれ、フェティーダ様を疎ましく等思わん」
そう言うとさっさと休んで来いと俺に言って定位置に着いた。
「あ、フェティーダ様は、ご気分が優れませんので、誰もお通ししないよう申し付かっております」
「わかった、あの王子様も通すなという事だな?」
「玉子は、いえ失礼……シャウトール王太子だけでなく、カリブス王、王妃様も含め全てです」
「……わかった」
「フェティーダ様の勅命ですので、よろしくお願いします」
「ああ、勅命じゃしょうがないな、首は切られたくない」
そう、軽く笑い「早く行け」と言われたので、寝床につくため、詰め所に戻る事にした。
詰め所に戻り防具を取っていると、昨夜の夜会の事が話題になっているようだった。
玉子に対して、物好きや頭がおかしいと言う評価。
ローズに関しては愚か等、通りの通ってない罵詈雑言を吐いていた。
殺すか? と衝動的に考えてしまい、それを抑えるために素手で近くの壁を殴りつける。
石で詰まれた壁はいとも容易く砕ける。
うわぁ……自分でやってて驚き。
素手で岩が砕けちゃったよ、もう人間じゃなくね俺!
他の親衛騎士達は、ただ唖然としていた。
軽く舌打ちをした後、仮眠室へと入り、寝る事にした。
胸の苛立ちは取れないまま。
-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-
時刻は夕方。
予想以上に寝ていたようだ。
顔を洗い、軽食を調理場から拝借して小隊長と変わるために、ローズの居る客室へ急ぐ。
ローズの部屋の前では、またもや卵が騒いでいる。
夕食に招待するのだと、小隊長に言い続けている。
小隊長は同盟国の王太子に対し、強くでれないようだった。
頭でブチッと理性が切れる音がした。
殺気をフルにだして、ダンッダンッと足音を立てながら玉子へ向かっていく。
それを見た小隊長は、突如顔をギョッとした表情に変わり、俺へと歩を進める。
玉子は好機と読んだのか、扉を開き中へと入っていく。
更に俺の頭がブチッとなった音がした。
我が物顔で「他人の女に近づいてるんじゃねぇ」頭にあるのはその言葉のみ。
小隊長は必死で俺の身体を抑えている。
邪魔でしょうがない。
部屋の中からは、ローズと玉子が何か話している声が聞こえるが詳細はわからない。
「イヤァッ」
彼女の半場悲鳴のような声が聞こえた瞬間、頭の理性が全て切れた音が聞こえた。
小隊長の腕を取り、片手で後方へ飛ばすと、部屋へと入る。
部屋を見てみると、玉子がローズの腕を取り、片手を腰に回していた。
目は色欲の色を浮かべている。
今、自分がどんな表情をしているのかがわからない。
彼女がこちらを見る。
「ラフィッ!」
呼ばれた瞬間、胸に幸福感が浮かぶのと同時に、殺衝動も同じぐらい浮かんでくる。
その瞬間に玉子が俺の存在に気付いたのだろう。
「何? 彼女は私がもらっていきますよ」といった感じに勝ち誇った表情を浮かべている。
徒歩の速度で近寄っていく。
玉子がその時になって警戒し始めるが、全てが遅い。
彼女の腕を取った手を握り締め、あまりの痛みのせいか猫を踏んだ時のような悲鳴をあげる。
その勢いのまま玉子の首根っこを掴み、持ち上げる。
後ろから掴んでいるので窒息はしないが、握力の強さに呻いているようだ。
「お、俺は王子だぞ……騎士風情が何をしているかわかっているのか!?」
王族だから、何でも許されるとでも思っているのか。
「フェティーダ様の最強の剣であり盾にはむかって無事で済むと思っているのか?
なんなら俺1人で貴様らを根絶やしにしてやろうか……」
首を掴んだ手を一層力を籠めると、玉子はうめき声をあげる。
彼女の視界に入るのさえ害だと判断し、玉子を扉の方面に投げ捨てる。
ドスンッと地面に投げ捨てられる玉子。
何が王族か、人間は人間だろうに。
「ラフィッ!」
彼女は玉子を投げ捨てたと同時に抱きついてくる。
ラフィとまた呼んでもらえるとは思ってなかった、その幸福感に胸がいっぱいになる。
「フェティーダ様、ご無事で何よりです、参上が遅れまして申し訳ございませんでした」
「いえ……本当にありがとうございました……ラフィが着てくれて本当に良かった……」
彼女は無意識のうちにラフィと呼んでいるのだろうか?
故意なのかはわからない、けれどもとても嬉しい。
「え、えっと……フェティーダ様、そのラフィという呼び方は……」
そう聞くと、彼女は自分でも驚いた表情を浮かべている。
無意識か……これは確定か。
「ご、ごめんなさい、つい出てしまったようです」
「いえ、構いません、不思議といつもそう呼ばれているような気がしますので」
「……私もです、遠い昔にそう呼んでいた気がするのです」
弱冠だが、覚えているという事なのだろうか?
「けれど、何故でしょう、さっきは無意識に心が温かくなる気がしたのですが、今はとても嬉しいのにとても悲しい」
如何いう事だろう? 何故悲しいんだ?
けど、今は彼女がローズの生まれ変わりだとわかっただけでもいい。
それだけで、俺の幸福感は最高潮だ。
「衛兵! 衛兵!」
俺とローズが二人の世界に入っていると、玉子が衛兵を呼んでいた。
間もなく、数十名の兵士達が部屋の前に集まる。
そして、騒ぎが気になったのか両国の王も集まってきていた。
「一体何の騒ぎだ」
「父上! あの者を処罰許可を私にください、あの者は私に暴行を働きましたゆえ!」
カリブス王は目を見開き、シャウトール王は無表情にこちらを見る。
「それは、真か?」
「体調の優れぬフェティーダ様を無理矢理連れて行こうとしていました故、致し方なく」
「ダズアイ、それは真か?」
「無理矢理等あるはずがありません、すべて同意の上です!」
「と、我が国の王太子は言ってるが?」
シャウトール王は俺の方を向き再度聞いてくる。
明らかに俺を疑ってる目を見せながら。
「どちらを信じるかはシャウトール王にお任せいたしますが、私はフェティーダ様の剣であり盾です。
フェティーダ様の害となるものは何者であれ、排除いたします。
それにシャウトール王がどう判断しようと、私は構いません、ただ……」
「ただなんだ?」
「フェティーダ様が死ぬなと申されれば、私の全力を持って抵抗する所存でございます」
カリブス王は俺の言葉に絶句し。
卵は顔を更に赤くし、こちらを睨んでいる。
ただ、シャウトール王のみは無表情のままだ。
「わかった、騎士殿の言葉信じよう、ダズアイお前は10日程自室で反省していろ。
ダズアイを部屋まで連れて行け」
「なっ!? ち、父上、私ではなくあの騎士風情を信じるというのですか!?」
「あの者は剣であり盾だと言った。
それは主の害となるものは全て排除する誓いだ、それが例え国であろうとな」
「お前も誓いを受ければわかる」と言った。
シャウトール王、格好いい所あるじゃねーか。
昨日の発言は許してないけどな。
「フェティーダ王女、それと騎士殿……我が愚息が大変失礼した」
「いえ、こちらこそ、シャウトール様のお国で大変なご迷惑をおかけしました、申し訳御座いません」
シャウトール王はたぶん、王子の頭を冷やして、ローズに現を抜かすなと言いたいんだろな。
けど、結果的にフェティーダに群がる悪い虫がつかなかったから結果オーライって奴だな!