伝えたい事があるわけで。
未開の森に入り、1時間ぐらいが経過したぐらいだろうか?
俺達が暮らす村の北側にある山脈に辿るつくとそこには2メートル近い穴の洞窟があった。
「うん……穴の大きさ的にもここがジャイアントアントの巣だろうね。
蟻って名前だから適当な場所に穴でも掘ってるのかと思ったが、普通に洞窟なんだな。
「とりあえず、今回はラフィくんとローズさんは入り口で他の蟻が侵入できないように警戒お願いね。
外に出てこようとするのも一緒に倒しちゃって」
「了解です」「はい」
ロキ達は潜っていき10分ぐらいだろうか? 経過したとき、ローズがボソッと呟いたのが聞こえた。
「……ないとな」
「ん?」
小さい声だったからほとんど聞き逃してしまったのでもう一度彼女に何か言った? と聞いたが、なんでもないと返されてしまった。
少し気になったがタイミングが悪いのか洞窟の中から数匹の蟻の足音が聞こえてきた。
待ち構えていると出てきたのは50センチ程のジャイアントアントだった。
「あれ? 小さいな……」
「小さくはないと思うけど」
しかし、一応Aランクの依頼である、油断はしないように気を引き締め、先頭の一匹に襲い掛かる。
動きも先日のジャイアントアントより遅く、殻も柔らかいようだ。
先日のは叩き割るといったイメージだったが、今回は叩き瞑れていた。
「なんだ? 柔らかいのかこいつら」
そう、呟いているといつのまにか天井に張り付いていたジャイアントアントが襲い掛かってきた。
瞬間ローズが素早く飛び上がり横薙ぎにジャイアントアントを吹っ飛ばす。
壁にグチャっとあまり聞きたくない音が響いてジャイアントアントは絶命した。
「うん…このジャイアントアントなら楽ね」
俺とローズはそのまま出入り口で次々と現れるジャイアントアントを危なげなく倒していった。
1時間もすると蟻達も出てこなくなった。
「にしても気持ち悪いなぁ……」
「そ、そうね……」
現在、俺とローズは蟻の死骸を洞窟の入り口に運び出している所だ。
洞窟の入り口には蟻の死骸で山になっていて、一体何十匹居るのかさえ分らないほどだった。
そして見た目もグロテスク……夢に出そう。
『出そうか?』
遠慮するわ。
それから数十分かけて蟻の死骸を全て洞窟の外へ出し、ロキ達の帰りを待つことにした。
更に数十分経ち、昼近くになってロキ達は帰ってきた。
ただし、一人欠けて居たが。
「ギルドマスター、ご苦労様でした」
ローズはまだ気付いていないようだったが、彼らの顔はどこか浮かない表情だ。
「ギルドマスター、もしかして……」
「ああ、ボステソが新しい新種のジャイアントアントの奇襲を掛けられてね……」
そう、暗い表情でロキは答えた。
ボステソ、確かバルブバブの弟だったか。
「ジャイアントアントは、何か進化しはじめているのかもしれないね。今後はもっと気をつけて対処しないと……」
ボステソは死ぬには早すぎた。
最後にロキはそう呟いて暗い表情のまま村への帰路についた。
-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-
暗い表情のまま村に着き、村人達の声援を受ける。
その頃にはロキ達も表情は明るく笑顔を振り向いていた。
ただ一人、ローズを除いてだが。
その後、村人達から祝宴をあげてもらい、その席で俺とレギン、ローズの3人がAランクへの昇格を受けた。
そして、村人達も村始まって依頼のAランクがそれも3人も生まれた事に感動していたようだった。
次の日にロキ達は帰っていったが、やはり仲間の一人の死亡は辛いのだろう。
昨夜、ロキから聞いた話では、新種のジャイアントアントは尻の先から強力な酸を吐き出すのだそうだ。
サイズは通常のジャイアントアントより一回り小さく、尻のふくらみには黄と黒の縞模様が出来ていると言っていた。
もし、そいつが入り口に来ていたと思うと身震いを覚える。
ジャイアントアントの女王の討伐依頼が終わり半月程たち、ローズに呼び出された。
何事だろう? と思っていると依頼が終わったのに何も伝えにこないとはどういう事だと、怒られてしまった。
うっかり、新種の蟻のせいで忘れていた。
だが、今の状況では言える状態でもない。
そのため、夜にマスタールームに来てくれと伝え、今は逃げ出す事にした。
その日の夜、食事も入浴も済ませた後、ローズが来るのをマスタールームで待っていると彼女が部屋の扉を叩いた。
どうぞと返事をして、ゆっくりと扉を開けて入ってくる彼女。
12歳の時に告白はしたが、正直恐い程緊張している。
ぶっちゃけプロポーズは2回目なんだけども。
俺っていつからヘタレになったんだろうか?
「それで……ラフィ、伝えたい事って……?」
薄々感じては居るのだろう、若干顔を赤くしてモジモジしているローズ。
なんとも可愛らしい仕草である。
「ああ、それは……」
「それは……?」
「………」
「ラフィ…?」
「………」
「………」
「結婚してくれないか?」
「……え?」
え? って! 頑張ったのに俺! その返事がえ? って!
「え? け、結婚……」
大きく頷き、机の引き出しから随分前から買っておいた指輪を取り出す。
この世界では結婚相手に指輪を送る仕来りはない。
しかし、前世での結婚の時に同じように指輪を贈り言った。
だから、メンバーの中ではそれを神聖視している者や憧れている者も多い。
因みに宝石はルビーだ、何処で取れたかって? 神様と御都合主義と言って置こう。
この世界ではルビーという宝石もないんだけどな。
「これは……石なのか……? とても綺麗……」
「ああ、ローズにピッタリだと思ってね受け取ってほしい」
「それは結婚と共にって事……だよね」
頷き、彼女の返事を待つ。
「喜んでお受け取り致します……でいいのかな?」
彼女は涙目になりながら笑顔で答えてくれた。
「ああ、十分すぎる返事だ」
言葉は冷静っぽい事言ってるが脳内では絶賛裸踊り中だったりする。
嬉しい時するよね?
『普通しないだろ』
そこは冷静に突っ込んでほしくない。
『さいで』
嬉しさのあまり、椅子から立ち上がり彼女へと近づく。
彼女は首をかしげているが、次の瞬間固まってしまった。
何故かって? 俺が思いっきり抱き締めたからだよ。
抱き締めた回数なんて数える程しかしてないし、彼女は基本的にこういうスキンシップに慣れてない。効果はばつぐんです。本当にありがとうございました。
10秒ぐらいだろうか?もしかしたらまだ3秒ぐらいかもしれないし、10分ぐらいは経ったかもしれない。
固まったまま反応のない彼女が気になり彼女の顔を見ると赤面しながら意識を失っていた。
なんというか……若干悲しい。
『前途多難だな』
本当にねーそう思うよ。
しょうがないので、ローズを彼女の自室へ連れていき、寝かせる。
起きた時夢だと勘違いされないように指輪は彼女のサイドテーブルへと置いておく。
寝ているが、唇を重ねて「おやすみ」と呟いて俺も寝ることにした。
なんというか…だ……
翌日、彼女は目も合わせてくれなかった。
何故だろう? 何か悪い事をしたのか、それとも嫌われたか?
けど、指輪はしてくれているようなので嫌ってはいないとは思うし、了承もしてくれたんだろう。
そして、レギンがおきてきて、ローズの指輪に気がついた。気がつくの早いなおい。
「おはよう二人とも、あれれ? やっとローズさんに渡せたんだぁ……つけてるって事はおめでとう2人とも」
と笑顔で呟く、途端彼女は顔を真っ赤にして何処かへ走り去ってしまった。
「あれれ? なんか、思ったのと反応が違うね?」
「ああ、俺も思った……」
まぁ、それが良かったりするんだけどな。
それから数日、ローズは弄られる日が続いたらしい。