久しぶりの家族に会うわけで。
ローズと二人でレキの村へとやってきた。
4年もたてば少々変わったような気がする。
というか、村がでかくなった。
どうやら、未だに周囲の村からここで移住する者は後を絶たないようだ。
「やはり、その辺の問題もあるよなぁ……」
まぁ、当然といえば当然なのかもしれない。
周囲の村に守られ安全なレキの村。
レキの村とは距離は近いが外側は未開の地、そして頻繁に襲ってくる盗賊。
どちらが安全かと言えば前者だもんなぁ。
家族の安全か、村の繁栄か。
どちらを選択するのも正しいからなんとも言えないが。
やっぱり絶対的にメンバーが不足してるんだよなぁ……
それか、メンバーとは別に自警団のようなものも必要かもしれない。
「……っと、ここだ」
レキ村を見ながら色々と考え事をしていたらいつのまにか家についていた。
にしても4年ぶりかぁ……久しぶりだなぁ。
「ふぇ!? つ、着いたのか?」
おお、普段あんなにクールなローズさんが大慌てである。
自慢ではないが彼女は俺の時だけ冷静じゃなくなるんだ。
まぁ、こうなるのは珍しいけどな、基本的にいつも怒られてるわけだが。
そういう時に限って神の奴が見てて、腹が立つ。
『ブフッ、しょうがないだろう面白そうな雰囲気がするといつも怒られる直前なんだからな』
うぜぇ。
「あ~……あまり気負わなくていいぞ」
「だ、だけど……ラフィのご両親に合うわけだし……へ、変じゃないかな?」
うわぁ、なにこの娘可愛い。
「ラフィなにニヤついてるのかな?」
うお、いきなり怖くなった。
「いや、なんでもないぞ! うん」
「ラフィ? 嘘を…「他所の家の前で騒いでるのは誰……あらラフィじゃない」……」
おお、母さんナイスタイミング助かった。
ローズは俺に顔を向けながら固まっている。
突然の母親登場に驚きのあまりフリーズしてしまったようだな、うん。
「母さんただいま、4年も戻ってなかったからね、一度顔見せに来たよ」
「嬉しいわ、手紙はいつも送ってくれてたけどずっと会いたかったのよ……で」
で?
「その綺麗な娘さんは誰なのよ」
「きき綺麗ですか!?」
おお、どもるローズ見たの初めてだ、面白いな。
「ああ、紹介するよローズ・アーネル、俺のクランのサブマスター」
「初めまして、ローズ・アーネルと申します」
俺が紹介したからか、少し落ち着いたようで、挨拶はできたようだ。
「あらまぁ、ご丁寧にどうもね。家の前ではローズさんに失礼だし、どうぞ中に入って?」
「はい、お邪魔させていただきます」
うん、いつも通りのローズに戻ったかな?
-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-
で、中に入って家を出てからの4年間の依頼の話とかを色々と親と話していると、外は暗くなりはじめてきた。
「あら、ついお話に夢中になってしまったわね……ラフィ、今日は泊まって行くんでしょう?」
「ああ、一応そのつもりだけど」
「あ、じゃあ私はギルドの宿を手配しに行きますので、そろそろお暇します……」
ん? ローズはそのつもりだったのか? てっきり家に泊まっていくとばかり思っていたな。
「ん…わかっ…「あら? じゃあ泊まって行きなさい、宿を取るの無料じゃないんでしょう?」…」
「で、ですがご迷惑では?」
「そんなはずないじゃない、未来の娘なんですし」
ブフォッ! 思いっきり茶吹いちまった!
「ちょっと、ラフィ汚いじゃないの気をつけなさい!」
いやいや、さすがに予想外だぞその言葉は。
「む、娘ですか?」
「あら、違ったの? てっきり未来の奥さんを紹介しに来たのかと思ったのに」
確かに俺はローズが好きだが。
ローズも俺の事が好きだと自認はしてるが……
「あら、両思いじゃないの? ラフィも何してんのよこんな綺麗な娘さんに手をつけないなんて男が廃るよ!」
おお、母さんの言葉でローズの顔が真っ赤に。
さすが元山賊の血筋。言う事がすごい。
「当たりのようねぇ? ローズさんさえ良かったら泊まっていきなさいね? 私も色々とローズさんの話聞きたいし」
フフフと笑う母親をこの日程怖いと思った事はないな。
「あ……はい、泊まらせていただきます……」
なんだ、今日は色々なローズを見れていい日だなぁ……
これはあれか? ギャップ萌えって奴なのだろうか?
「ラフィ? 何か良からぬ気配を感じたのだけれど」
勘がいいのか、俺の欲望が出てたのかわからんが恐い!
「ごめんなさいねぇ、ウチの息子が」
「いえ、普段はお世話になってますから」
"普段"ってなんだ普段って……
『ニヤニヤ』
おい、ニヤついてんじゃねぇニヤついた爺ほどウザイものもそうはないぞ。
『こっちに八つ当たりはしないでもらいたいんだが』
じゃあ、喋りかけてくるなよ。
『じゃあ、黙ってニヤニヤしとくから頑張れ~』
毎度ながらイラつくわぁ、この神。
ローズは母さんに二人でこなした依頼や、普段の俺の生活ぶりを母さんに話している。
そして、俺は一人居辛い雰囲気に呑まれボーっとしていたりする。
俺の話なんだが、会話に入れないこの孤独感!
レギンめ……帰ったら覚えてろよ……と、一人で虚しい事を考えていると父親と爺さんが戻ってきたようだ。
爺さんとはウチの前世の親友ラージ・ブッチーニ爺さんだ。
そういえば、父親って出てきたっけ?
『そういうメタ的な発言は控えるように』
メタ的ってなんだ?
『……』
だんまりかい。
まぁいい、で父親のファブロ・ブッチーニで鍛冶屋をしてる。
「ラフィ、帰ってきたのか久しぶりだな。随分見ない間にでかくなって……そちらのお嬢さんは?」
「お帰りなさい、お父さん達。この娘はローズさんと言ってラフィの結婚相手だって」
「ブフッ! ゲホゲホッ……え、えっと……ローズ・アーネルと申します」
「あ、これはどうもラフィの父親のファブロです」
「そういえば、私の自己紹介はまだだったわね、テスタ・ブッチーニよ、気軽に義母さんって呼んでいいからね?」
母さんは完璧にローズを自分の子にしたいみたいだな。
父さんは父さんで呆けているし。
そういえば、ラージはどうしたんだ?
「あれ? 爺ちゃんは?」
「ん? 一緒に帰ってきたと思ったんだけど」
何処行ったんだろう?
爺さんもいい年だし探してくるか。
「ちょっと、探してくるよ。ローズはここに居てくれ」
「ん、わかった」
ローズに言い残して爺さんを探しに家を出た。
爺さん何処行ったんだ?
ギルドの隣にある酒場や、俺やブチの墓がある墓場に行ってみたが居なかったし。
広場にも居ない。
何か忘れ物でもして工業地帯にでも行ったのかな?
父親の鍛冶場まで行くと、ちょうど爺さんも出てくる所だった。
「爺ちゃん、どうしたんだ? 忘れ物かなにか?」
「そうだな、忘れ物と言えば忘れ物だ」
ん? 何か含みのある言い方だな。
「ここで渡してもいいだろうな、ほれ……コレを取りに行ってたんじゃ」
そう言って爺さんは俺の身長よりも長い大剣を俺に渡してきた。
って、すごい剣だな。
まさにファンタジーって感じの剣だ。
「ラフィの太刀筋は台風の様な振り方だからな、今の剣では少々物足りないだろう?」
だから、それを使えと爺さんは俺に言って来た。
確かに、いままでは子供時代から使っていたサイズの剣を使っていて、今の体長では少々リーチが物足りないとか軽いって思い始めてたから助かる。
けど、すごい巨大さだな……こんな剣見たことないぞ。
『ほう、僅か数十年でこれ程の武器を作るとはすごいのう』
そうなのか? 爺さんが何かしたわけじゃないのか?
『ワシはお主を見てるだけだからな、別の誰かに力とかはあまり貸さんよ』
まぁ、いい。
父親と爺さんには感謝だな。
「爺ちゃんありがとう、大事に使わせてもらうよ」
「ふん、気にせんでいい。それでお主の守りたい者達を助けるがいい」
若いときとは全然違った性格になったなぁ。
人間変わる時は変わるもんなんだな。
「じゃあ、そろそろ戻ろうぜ」
「そうじゃな」とラージは返事をして、俺の後ろを着いてきた。
-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-
「じゃあ、母さんまた今度暇があれば顔見せに来るよ」
「ええ、次来るときは子供楽しみにしてるわよ」
早いなおい……俺まだ16だぞ? 確かにこの世界では適齢期に入る頃だけども。
「こ、子供ですか? が、頑張ります」
ローズさん頑張りますって……俺まだプロポーズとかしてないんだけどなぁ。
つか、俺ってロマンチストなんだろうか?
「今度は、ワシがラフィの顔見に行くから、そのときはよろしくのう」
「ああ、楽しみに待ってるよ。じゃあ行って来ます」
「お邪魔しました」
家族たちに言うと、笑顔で俺達を見送ってくれた。
「ラフィのご家族って皆いい人達ね」
「そうだな、自慢の家族だよ」
帰り道ローズと二人で歩いてる間の会話は家族達の話題でいっぱいだった。
会話の間に「子供かぁ」とか言うので少し意識しているんだろうか?
なんというか、逆に言いにくい雰囲気というかな。
『ヘタレ』
うるせぇ、言いにくいもんは言いにくいんだよ!
もらった剣の脳内スペック。
全長:約2m
重量:約5kg
だんびらの様な分厚く幅広な剣。
イメージとしては刃が広いトゥ・ハンデット・ソードです。
一応死ぬ前まではこの剣で行こうかなとか考えてます。