尻に敷かれそうなわけで。
今俺は大ピンチだ。
Eランクの野盗退治だから問題ないと思ったんだが……
これはさすがに予想外だった。
目の前には4人の盗賊と何故か1匹のコボルトが居る。
どういう事だ、なんで人間とコボルトが一緒に居るんだ?
確かにある程度コボルトやゴブリンにも知恵があるのはわかってたが、まさか人間と協力するとは思わなかった……
「メンバーと言ってもガキだからなこいつを見て怯えるのはしょうがないか?」
「まぁ、今さら逃げようとしても逃がさないけどな、邪魔なメンバーは殺した後食糧は戴いてくか」
逃げるか、まぁ……無理な話だな下半身が言う事を聞いてくれないわ。
「おいおいあんまり脅すなよ震えちまってるじゃねーか可哀想に」
可哀想なんて思ってもいないくせによく言うわ。
あのコボルト……あの時のボス並とかはさすがにないよな?
あんな動きされたら今の状態じゃあ殺されるのがオチだわ。
どうやってこの状況を乗り切ったもんか……心は冷静そのものなのに身体が言う事聞かないとはな、参ったね。
「まぁ、いいか。犬ッコロその子供の相手任せたぞ」
盗賊の一人が言うとコボルトが頷き此方に近づいてきた。
不味いな……足だけじゃなくて眩暈までしてきたぞ……呼吸がうまく出来ない、思考は冷静なはずなのに身体は全く動こうとしない。
「ウォンッ!!」
コボルトが叫ぶと同時に飛び掛ってくる。
動きは大した事はないはずなのに身体が動かない、そのまま刃物を身体に打たれる訳にはいかないから腕をなんとか持ち上げコボルトの武器を受ける。
「ぐはっ」
足に力が入らないからコボルトの突進をモロに受けて数メートル吹っ飛んだ……背中を強かに打ちつけたせいで酸素が足りねぇ……
コボルトに吹っ飛ばされたせいか恐怖で余計に身体が縮こまる。
なんか、段々とムカついてきたぞ、コボルトの一匹が何だってんだ。
確かに前世の死因はこいつらだけど、最初の動き見ただけでもボスより弱いのはわかるはずだ。
それでもこの動かない身体は本当に腹が立つな……
「だらああああ! 動けボケがあああああっ!!」
手に持っている剣を右足へ刺す。
脳天に届くような痛みに目がチカチカと瞬く。
痛ぇ! 滅茶苦茶痛ぇ!
けど、その鋭い痛みのせいかさっきまで震えていた身体は落ち着いていた。
「あのガキとうとう頭がおかしくなったみてぇだぜ? 自分の剣を足にぶっ刺してやがる」
下卑た笑みを浮かべながら盗賊の一人が笑っているがそんなのどうでもいい。
今はこの情けない身体を叱咤して目の前のコボルトを除外する事だけを考える、そしてぶち殺す!
足から剣を引き抜いてコボルトへと向ける。
突然の奇行にコボルトも警戒しているようだ。
「おい! 早くそいつぶち殺せ!」
「ウォンッ」
その言葉に返事をするとコボルトが再度此方へ突っ込んできた。
右足は痛みのせいで悲鳴をあげるがちゃんと動く。
このコボルトは直線敵に突っ込んでくる事しか出来ないのか横に身体をずらせば隙だからけだった。
すれ違い際にコボルトの横ぱらへ横薙ぎに切りつけると手には肉を断つ感触。
剣に附着した血を振り落としながらコボルトへと向くと腹が半分切断されたコボルトが倒れていた。
なんとか倒せたか……
一息ついて盗賊達の方へ向くと彼等は唖然とした表情でこちらを見ている……いや、違うな俺の後ろか?
振り向くと剣を右手に持ちながら猛烈な勢いで駆けてくるローズの姿が見えた。
横に来たかと思えばその勢いのまま走りぬけ盗賊の一人を斬り付けた。
予想外の行動に呆けていると、仲間を殺され正気に戻った盗賊の一人が慌てて叫ぶ。
「に、逃げろ!」
その叫び声に反応したかのようにローズが叫んだ一人に剣を投げつけ絶命させる。
「逃がすと思って?」
感情が無いような抑揚の無い声に俺の身体が震えた。
え……これローズの声だよな?
なんか変なのが乗り移ってるわけじゃないよな?
どうやら震えたのは俺だけじゃなくて残りの盗賊達も同じようで逃げる事さえ頭から抜けているようだった。
-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-
最後の一人も斬り殺し静かにローズがこちらを向く。
その表情は今にも泣きそうに此方を見ていた。
「あー……ローズありがとう助かっ」
彼女にお礼を言おうとした瞬間思いっきり平手打ちを受けました。
右足は自分の剣で刺したから踏ん張る事も出来ず横に倒れこむ。
なんか今日は踏んだり蹴ったりだなと何処かずれた事を考えていると、ローズに抱きしめられました。
一体どういう事なんだ?
引っ叩かれたかと思えば次は抱き締められるとは、よくわからない展開に頭がついてこないんですが。
「また……目の前で死なれるかと思った……」
また……?
いや、それよりもだ……それだけ心配かけたって事なんだよな。
背中は吹っ飛ばされたせいで強打したし、右足なんて自分でとは言え刺したから血がドクドクと流れてるし。
「すまなかった……で、ローズさんそろそろ離してもらいたいのですが……足の怪我もあるし」
「足……? ラ、ラフィ足から血が!!」
今気付いたのか。
ハハ、笑えてきたわ。
「早く治療しないと、今ギルドへ運ぶからもう少し我慢してね!」
ローズは大慌てで俺を担ぎギルドへと運ばれていく。
全く、彼女には適わない気がする。
自惚れかもしれないけど、彼女は俺の為なら死ぬのも厭わないのかもしれないな。
いくら早死にが俺の運命だって彼女とはなるべく長く一緒にいたいものだ。
-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-
ギルドで簡単な治療を受けて自宅へと帰る。勿論ローズに運ばれてだが。
レギンが俺に気付くと大慌てで近づいてきた。
この二人と来たら俺が怪我したからって慌てすぎだろうと苦笑するとローズに叩かれた、何故だ……
「ラフィ、なんですぐ私に教えてくれなかったの?」
「そうだよぉ、ラフィはすぐ一人で突っ走るんだもんねぇ、僕達信用されてないのかなって傷つくよぉ」
両脇から話しかけてほしくないんだが……
二人には事の顛末を伝える。
当初は盗賊5人という事だったので一人で問題ないと思った事。
現れたと思ったら中にコボルトが一匹居た事。
助けを呼ぼうにもそんな状況じゃなかった事。
足は自分で傷つけた事等を。
足の傷は自分がやった事を言ったらローズに殴られた……グーは痛い。
文句を言おうと顔を上げたら彼女は我慢できずにボロボロと泣き出していた。
心配かけたのは本当の事なので罪悪感が……
「すまない……心配かけた事は謝る」
頭を下げて謝ったけど。
「嫌だ」
拒否されました!!
ええ? どうすればいいんだ?
「怪我治るまで看病させてもらうから……拒否はさせないから……」
涙を流しながらそんな事言われたら黙って従うしかないじゃないか。
彼女の頭を撫でながら「頼む」と伝えて部屋に戻る事にした。
「あー、レギン、悪いけどしばらくの間クエスト頼むな」
「うん、任せてぇ」
言い残した事を伝えて部屋に戻ろうとしたら、後ろから引っ張られた。
何事かと思い後ろを向くとローズに服を引っ張られているみたいだ。
「ローズどうした? 部屋に戻りたいんだが……」
「私が運ぶから」
「いや、これ「私が運ぶから」……はい」
前世みたいには行かないようで早速尻に敷かれてる俺がいるようです。