一夜明けたわけで。
翌日、起きた時少し前までの不調が嘘のようによかった。
視界が広がった感覚だ。
背筋と両腕を命一杯伸ばし身体を起こすと左側から布が擦れる音がした。
そういえば、そのままローズは俺のベッドで寝たんだっけか。
『ゆうべはおたのしみでしたね』
いや、お楽しみしてないから。
普通に添い寝だから! 性的干渉はまったくないぞ!
それに俺の肉体は12だし。
『早くはないだろ?』
まぁ、確かに……この世界じゃ早すぎるって訳じゃないがな……
出来る事なら身体の成長が落ち着いてからがいいと思ってだな。
まぁ、それはもういいんだ!
それよりも、もし今日レギンが戻らなかったらどうするか。
さすがに俺も抜けるとクエストが溜まるだろうな。
唯でさえここ数日は俺のせいで消化されなかったんだから。
「んんぅ……ラフィ?」
どうやらローズも起きたようだな。
「ローズおはよう」
彼女の額に手を置きながら朝の挨拶をする。
途端に彼女の顔がみるみる赤くなっていき。
バッと布団を被り頭まで隠す。
何を照れてるんだろうか。
というか可愛いなおい。
「うう……お、おはよう」
布団の中にいるために少しくぐもった声で挨拶してくれた。
あー……この感覚懐かしい。
それも、ローズは前世の嫁さんと来たもんだ。
「うっし、朝飯でも作るか。ローズも食べるだろ?」
「あ……私が作るけど?」
「いいよ、まだ眠いだろ? 寝ておきな、出来たら起こしにくるから」
「う、うん……」
なんというか、新婚みたいでいいな。
あんなに余裕のないローズも新鮮でいい。
『変態』
失礼な俺は紳士だぞ、変態という名の紳士だ。
……さて、飯でも作りますかね。
ここ数日はろくに飯も食べれなかったから胃が早く食糧を寄越せと催促してる事だしな。
悪くなり始めた場所を取り除いた肉を焼いて一口サイズに切ったり。
野菜煮込みスープを作り。
自作種入りマスタードと焼いた肉からとった油で簡単なソースを作る。
それと昨日買ってきたパンを二人分並べて完成。
さて、彼女を呼ぼうと寝室の方へ向かうと彼女は既に居間に来ていた。
「……それってラフィが作ったの?」
俺が料理を作れる事がそんなに意外か?
というか、メンバーは野宿とかするだろうから料理できないとまずい気がするんだが……
まぁ、依頼中の食事は簡単な物しか作ってなかったからな。
筋肉質な男が家庭料理を作るってのもこのご時世シュールなのか……?
「まぁ、味は保障できないがな食べようか?」
ローズは少し呆けてたようだけれど俺が座るのを見て食器を並べてある反対側に腰を落とした。
うん、味はこんなもんだろうか?
一応味見はしているから問題ないけど彼女の口に合うか少し不安だ。
彼女の表情を盗み見ると何故だか涙を流していた。
ってうぇえええ!? そんな不味かったか……
悪い事したかな。
我ながらそれなりの味だと思ったんだけどなぁ……自信が無くなるぜ。
「すまん、口に合わなかったか……」
不味かったのかと聞いてみたけど首を横に振るだけの彼女。
不味くはないけど何故泣いているんだろうか。
さすがに不味いから泣くのはないか。
じゃあなんで泣いてるんだろうか?
「……美味しいよ、それに凄く……懐かしい味、昔からこの味を求めていた気がするんだ」
懐かしい味?
ああ、前世では俺がよく料理していたからか?
「なんだろう……胸の奥が温かくなる気がする味だね」
なんか段々照れてきたな。
「口に合ったならよかった、ちゃっちゃと食べてクエスト受けに行こう」
「そう……だね、うん」
イチャつくのは落ち着いてからでも遅くはないしな。
というか、羞恥プレイにも程があるので勘弁してもらう事にして食事を済ませた。
-=Ξ=-=Ξ=-=Ξ=-
で、現在Dランクのクエストの野獣退治を済ませて昼食を食べてる時にようやくレギンが戻ってきた。
数人程連れてきてくれたようだが。
問題は全員が女性というのは何故だ?
それも、クラン加入させろと騒いでいたのも数人居る訳だが……
また面倒な事になりそうだな……
「レギンおかえり……で、それは?」
「……ただいまぁ、いやぁ皆Dランクだよ一応……うん」
ここにいるのは腐ってもDランクの実力はあるって事か。
「まぁ、暫定ではあるが、この村のメンバー代表させてもらってるラフィだよろしく頼む」
一応、この村では最高ランクだから代表という事にしてある。
「ディネ・コンフです……よろしくお願いします」
一人は声をかけてくれたが、他の数名は黙っている。
はぁ……またこれか、どうせレギンが代表じゃないのが納得できないとかなんだろうな。
なんでこうもレギンのおっかけはこうかねぇ……
「んじゃ、レギンお疲れ。ローズ行こうか」
「ん? もう行くの?」
「レギンは今日は休んでていいぞ、俺はローズと依頼受けてくるから。戻ったら話を聞かせてくれ」
正直、この女性達とは一緒には居たくないしな。
「じゃあ、そういう事で」と言葉を残してローズと一緒にクエストを受けに行く事にした。
今回のクエストはCランククエスト(Eランク野党退治)だ、最近出没しだした5人程度の盗賊らしくこの村の畑とかを狙い農作物を盗んでいくらしい。
なんとも小さな盗賊である。
という事で盗賊達がまだ来ていない畑を二人で見張る事にした。
他の畑には警報装置の鳴子を仕掛けてある。
これなら多分、盗賊が引っかかれば気付けるだろう。
何処に住んでいるのかわからないから、攻められないのはキツいな。
俺とローズが耳を澄ましながら待つと俺が張っていた畑に盗賊が来たようだった。
数は4人か……聞いてたのより少ないが。
まぁいいか、早速終わらせてもらうとしよう。
「はい、盗賊の方々ご苦労さまでした」
「な……メンバーか!?」
「ご名答、心を入れ替えて村人として暮らすなら良し、抵抗するというなら容赦はしないがどうする?」
村人になるってんなら人口も増えて万々歳なんだけどねぇ……
ただ、窃盗をまた繰り返さないとは言えないけどな……
「ふん、どうせ嘘だろう! おい、アレを出すぞ!」
二人が森の中へ消えていった。
「おいおい、二人で俺を倒せると思ってるのか?」
「なーに、助っ人を呼びに行ったんだよ」
助っ人ねぇ……慢心というわけじゃないが俺を倒せる奴がそうそういるとは思えないんだけどな。
とか思ってたんだけどねぇ……
コレはやばいかもしれん。
だって……身体がトラウマのせいか動かないんだぜ?
大ピンチじゃね?