運命の人と出会っていたわけで。
「ねぇ、ラフィ……貴方が苦しんでいるのってその夢のせい?」
彼女が俺に聞いてくるが、俺は混乱していた。
何故彼女がここにいる?
鍵は閉めたと思ったんだが。
というか、聞かれてしまった……
なんと彼女に説明すればいいんだろうか。
俺がレキの生まれ変わりでその最後の瞬間を毎夜夢で見て苦しんでいるといえばいいのだろうか?
言えば、彼女は信じてくれるだろうか?
それとも……
「……」
「私には言えない事?」
なんと言えばいいんだろうか……
「……私は……貴方の支えになりたいと思っているの」
全て伝えれば彼女は俺を救ってくれるんだろうか?
それとも離れて行ってしまうんだろうか。
離れていく彼女を見るのはとても嫌だ。
まだ出会ってからそんなに経っていない。
それでも俺は彼女に惹かれている。
だからこそ失うのは怖い。
俺が死ぬ事よりも怖いんだ。
「私は貴方の力になれないの?」
そんなはずはない。
首を振り「そんな事はない」と意思表示をする。
「それなら……」
視界の隅で彼女の身体が動いたと思った瞬間、柔らかい感触が身体を包みこんだ。
「私は貴方の全てを知った上で支えてあげたいと思っているの」
「……え?」
思考が再びフリーズした。
彼女は何を言ってるんだ? だって、彼女はレギンの事が。
「私は、貴方が好きなのよ。だからクランに入れてくれるって行った時本当に嬉しかった……
貴方は知らないと思うけど私は貴方の事をずっと前から知っていたのよ」
俺は彼女と何処かで知り合っただろうか?
記憶にはまったくない。
「数年前メンバーになる前にレキの村へ行った事があるの。
その時にレギンと剣の練習しているのを見たわ。
貴方の動きはとっても綺麗で一瞬で目を奪われた……そして貴方の笑顔に惹かれた。
そして時折見せる物憂げな表情を見た時小さい子供のはずの貴方がとても一人の異性に見えた」
まったく気付かなかった。
そんな昔から俺を見ていた?
「私は貴方の悩みを全て受け止め、その上で貴方を支える。
愛する人の悩みなんて負担になんてならない……だからお願いよ……私に全て吐き出して。
お願いだから……」
涙声と貸した彼女の声を聞き、気付けば目から大量の涙が溢れてきた。
痛かった首筋は気付けば痛みはなく、心細かった心はあふれる程に満たされていた。
「うん……ありがとうローズ……俺も君に惹かれていた……
君を愛してる、だからこそ言いたくなかった。
負担になるのが怖かった……」
「バカ……負担なんかじゃない、貴方の悩みが聞けるなら負担なんかじゃないわ……」
顔を上げて、彼女に軽く口付けした。
「俺の悩み……いやレギンにも話した事のない秘密を聞いてほしい」
「ええ、聞くわ」
俺がレキの生まれ代わりという事。
首の痛みは致命傷となった時の傷が痛む錯覚の事。
コボルト等の亜人種との戦いが怖い事。
「情けない話だ、伝説にまでなったレキはただの臆病者なんだから」
「臆病者なんかじゃないわ……だって、あなたは戦い抜いたんだもの。
怖いのは当然よ、生まれ変わる事が出来るといっても痛みはあるんですもの。
貴方は強いわ、この世界に生きる誰よりも」
「ローズありがとう……良かったら、これからも俺を支えてくれないか」
「当たり前でしょう、私は貴方を愛している。
私は貴方を支え続けるわ、この身体が朽ちても、生まれ変わっても貴方を愛し続ける」
「ああ、俺も誓うよ……何度生まれ変わってもローズだけを愛する」
「フフ……信じてるわラフィ」
あの痛みはまったくなかった。
生きるという気持ちが溢れて来る。
俺は彼女を守る、いや守るだけじゃない守られるという覚悟も必要なんだ。
お互いがお互いを守る。
気持ちが羽のように軽くなった気がした。
『いい話ダナー』
空気読めよ……
『いやぁ、シリアスは好きじゃないので……ッポ』
キモい……
つーか、なんかようか爺。
『ああ、うん。その娘な」
ローズがどうした。
寿命がないとか言うなら俺が死んででも生き延びさせる覚悟はあるぞ。
『違う違う、その娘なレキの時の嫁さんだぞ』
は? どういう事だ、あいつはまだ生きてるだろ?
『なんというかなぁ……レキを愛している気持ちが形を成したって奴かね』
もっとわかりやすく説明しろよ。
『一つの魂だったのが、お前の死で深い悲しみを受けた。その自己防衛のためにレキへの思いを幾分か分けたんだ。その結果生まれたのがローズ』
簡単に言えば、あいつの魂の片割れって事か?
『うん、そんなもんだね』
ハハ……なるほどな、笑っちまうな。
惹かれあうのは必然だったと。
『うむ、まぁお互い無自覚だったが再開できてよかったな。祝福するぞ』
ああ、神に感謝するよ、また会わせてくれた運命にな。
来世もローズと一緒に添い告げられる事を願いながらな。
『その点は大丈夫だろう、お前の魂と娘の魂はどう変わろうと惹かれあうように出来ておる。
俗に言えば運命の人だな』
そうか……
「フフ……」
「ラフィ? どうしたの?」
「いや、俺とローズは惹かれあう運命だったと神のお告げがあったからな」
「そうなんだ……嬉しいな、神様のお墨付きが頂けるなんて」
お互い微笑あいながらもう一度口付けを交わした。
『リア充爆発しろ!』
爺さんの言葉は聞かなかったことにしよう。