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第1話
『ごめんなさい
東京に行きます
奈緒子』
最近流行している、可愛らしいキャラクターがついているメモ用紙にそう書いた。
コト・・・とペンを机に置いた途端、鼓動が早くなっていることに気付いた。
これから、自分は東京に行こうとしている。16年間住んできた、故郷を飛び出して。
今ならまだ引き返せる。ベッドの中に入って眠ってしまえば、いつものように朝が来て今しようとしたことは誰にもわからない。
淡いピンクのカーテンをそっと開けると、外はまだ暗闇に包まれていた。暗い空から、真っ白な雪がしんしんと降り続いている。
――――行くなら、今しかない!
そう思った途端、自分の中で何かが弾けた。
授業道具を詰め込んだ通学用の鞄を背負い、少量の着替えの入ったお気に入りの布バッグを持つ。コートを着てテキパキと準備するが、それは体が勝手に動いてやってくれているような、そんな感覚だった。