五月の花火 〜最後にゾッとする怖い話〜
『校舎裏にて教師には内緒の花火大会!五月二十七日、深夜一時に集合!』
私の下駄箱に入っていた紙切れに書かれていた文字。
五月の今、花火は早い気もするし火遊びは危険だ。
全く、この紙切れを書いた頭のネジが外れたやつをドライバーで止め直してやりたいくらいだ。
だからこそ、あえて行ってやろう。
深夜に集まった腐った阿呆どもを、風紀委員である私が華麗に処罰してあげるのさ。
しかし深夜一時、しかも今日か……毎日九時には寝ている私にとってはなんともキツイ時間帯だ。世の思春期やらは遅くまでお疲れ様なこった。
私は花火大会招待状を折りたたみ、胸ポケットにしまった。
そうして下校してから数時間。
悪党討伐気分でルンルンに家を出た私は、ペットボトルの珈琲をちびちび飲みながら学校に到着。
よくホラーで題材になりがちな夜の学校は、外から眺める分には大して怖くも無かった。
五月の夜は冷える。
最近春らしからぬ暑い日が続いていたので、夜も暑いのではと思っていたがそうでは無いらしい。
眠いし寒いしで帰りたいが、新しい発見をしたことに関しては、火遊びに夢中な悲しき生物に、感謝ァ☆だな。
にしても、深夜の校舎は物静かだ。
こんな遅くなのだから当然は当然なのだが、花火大会当日にも関わらずこの静けさは合わない。
集合場所に行ってみても、そこに誰も居なかった。
もしかして騙されたか?
そんな考えが頭を過ぎった時。
「お、まさか本当に来るなんて……びっくりだなあ」
後ろからそう声をかけられる。
振り向くと、そこには見慣れたクラスメイトが居た。クラスで人気者、それでいて問題児でもあるカーストトップなやつだ。
「招待状を下駄箱に入れたのは君だね? 学校で火遊びはダメだと親や教師には習わなかったの?」
私の善意100%な説教に。
「ああ? 会ってそうそう煩いんだよ。ノリ悪いなおまえは」
反吐を吐いたような嫌な顔をして言った。
ノリが悪いと言うのは君の判断基準だ。全てが君の気分通りに動いてくれると思うなよ?
「それに火遊びはしねえよ、何勘違いしてんだ」
フっ……と鼻で笑うそいつに私は眉を細める。
「花火大会を開くのではなかったのか?」
「開くさ、たった今から……なッ!!!」
一歩後退りしたがもう遅かった。
腹から熱く、激痛が襲う。
そうか、ネジが外れていたのは私じゃないか。ここにまんまと釣られて来た愚か者なのだから。
「俺はおまえのことが嫌いだ。クラス全員が思っていることだ。ははっなんせ、窮屈なんだよ」
ネジを閉めるように、私の腹を捻じるように回したそいつは、血に染った包丁を引き抜く。
涼しげに透き通った五月の星空の下に、赤い花火が打ち上がっていた。




