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最終章 家族のかたち
新生活が始まってから数年が経ち、陽介と真理子の暮らしは穏やかに積み重なっていった。二人は共働きで忙しい日々を送りながらも、支え合い、笑い合い、小さな幸せを積み重ねていた。
ある冬の夜、二人は古いアルバムを開き、遠距離だった頃の写真を見返していた。
「こんなに遠く離れてた時期もあったんやな」
陽介が感慨深げに呟くと、真理子が頷いた。
「でも、あの時の寂しさや不安があったからこそ、今の幸せがあるんだと思う」
二人は互いの手を握り締め、小さな声で誓い合った。
「ずっと一緒に歩んでいこう」
そして数年後、二人は結婚式を挙げた。家族や友人に見守られながら、遠距離の時間を乗り越えた絆を胸に、夫婦として新たなスタートを切った。
「遠距離だったあの頃の君と僕が、こうして家族になれるなんてな」
陽介が笑うと、真理子も笑顔で応えた。
「これからもずっと、二人で幸せを育てていこう」
遠く離れていた日々も、すべては今のこの瞬間のための大切な時間だった。二人はもう寂しくなかった。お互いの存在が、何よりの安心であり、幸せだった。