第7章 新生活
春の風が東京の街に柔らかく吹き込む頃、陽介はついに大阪を離れ、真理子の住む街へと引っ越してきた。荷物は少なく、慣れない都会の生活に少し戸惑いながらも、新しい一歩を踏み出す彼の胸は期待と不安でいっぱいだった。
真理子はそんな陽介を笑顔で迎え入れた。忙しい仕事の合間を縫って、二人は小さな賃貸アパートで新しい生活を始めた。狭い部屋ではあるが、一緒に過ごす時間が何よりも尊かった。
「ようやく一緒にいられるね」
真理子の言葉に陽介は力強く頷く。
「遠距離の間に感じた寂しさも、この部屋で全部埋めたい」
二人は協力し合いながら、仕事や家事をこなした。時には言い争いもあったが、それも二人の距離を縮める大切な過程だった。
休日には東京の街を散策したり、近所の小さなカフェでゆっくり過ごしたり。遠距離で会うことができなかった日々の分まで、たくさんの思い出を作っていった。
「これからは、一緒に未来を築いていこう」
陽介の言葉に真理子は涙ぐんで答えた。
「うん。これからもずっと、二人で」
長かった遠距離恋愛が終わりを告げ、二人の新しい生活が静かに、そして確かに始まったのだった。