第6章 決断
真理子の東京本社への転勤が正式に決まった日、二人は画面越しに何度も話し合った。これまで以上に忙しくなる現実に、遠距離の時間もまた長くなりそうだった。
「どうする?このままだと、もっと会えなくなる」
陽介は正直に心配を打ち明けた。
「私も同じ気持ち。でも…もう遠距離に耐えるだけじゃなくて、未来のために動かないとね」
真理子の言葉に、陽介は静かに頷いた。
「大阪から東京に引っ越すのは簡単やないけど、真理子と一緒にいたい。そのために仕事も頑張るし、新しい生活に挑戦するわ」
二人は具体的に同居の計画を練り始めた。お互いの勤務先の場所、家賃の問題、生活費のこと。お金がない中での現実的な問題も山積みだったが、話すたびに未来への希望が膨らんだ。
「まずは真理子が東京に来て、仕事に慣れてから、一緒に暮らそう」
「それがいいね。焦らず、でも確実に」
寂しさや不安は完全には消えなかったが、決断したことで二人の間に強い絆が生まれた。
その夜、電話の最後に陽介は言った。
「必ず幸せになろうな。どんなに遠くても、俺たちは一つやから」
「うん、家族になろうね」
二人の声は震えながらも、未来を約束する確かな力に満ちていた。