第5章 転機
数ヶ月が過ぎ、陽介と真理子の遠距離生活にも少しずつ変化の兆しが訪れていた。
真理子の会社で新しいプロジェクトが始まり、彼女は営業リーダーに抜擢された。嬉しい反面、責任も増し、帰宅時間はさらに遅くなる日々が続いた。
「もっと一緒にいたいのに…仕事がこんなに忙しくなるなんて思わなかった」
真理子は疲れた声で陽介に電話をかけた。陽介も大阪の店舗でリーダー業務を任されるようになり、彼もまた忙しさを感じていた。
「俺も店長代理に昇進したけど、責任は重い。会える時間は減るかもしれん」
そんな中、二人はお互いの将来について真剣に話し合い始めた。
「このまま遠距離を続けるのは、正直つらい。でも、仕事も頑張りたいし…」
「いつかは一緒に暮らしたい。そのために、お互いどう動くか考えよう」
二人の心にあったのは、離れていても変わらない絆と、それを超えるための覚悟だった。
そして、真理子の上司から「東京本社への転勤」の話が持ち上がった。これは彼女にとって大きなチャンスであり、一方で二人の距離が広がるかもしれない重大な転機でもあった。
「この転勤、受けるべきか…」
悩む真理子に、陽介は言った。
「俺はどこでもついていく。真理子が決める道を応援するで」
その言葉に、真理子は涙をこぼした。
遠距離の壁はまだ高いけれど、二人は未来に向けて、一歩踏み出そうとしていた。