第4章 小さな幸せ
陽介と真理子にとって、遠距離の時間は決して楽なものではなかったが、そんな中でも小さな幸せを見つける瞬間があった。
ある週末、陽介はやっとの思いで大阪の実家から休みを取った。東京の真理子も偶然、急に予定が空いた。二人は久しぶりに会う約束をし、どちらも心の中に小さな光を灯していた。
「大阪駅で待ってるよ」
真理子からのメッセージを見て、陽介は緊張と期待で胸が高鳴った。
迎えに行った大阪駅の改札口で、二人は目を合わせ、自然に笑みがこぼれた。抱きしめ合った瞬間、寂しさや不安が一瞬で消えていくのを感じた。
その日は二人で大阪の下町を散歩し、昔よく行ったたこ焼き屋で夜ご飯を食べた。狭い店内の活気と、懐かしい味が二人の距離を一気に縮めた。
「やっぱり、こうして一緒にいる時間が一番幸せやな」
陽介の言葉に、真理子は頷きながらも、どこか寂しそうに微笑んだ。
「うん。でも、またすぐに東京に戻らないといけないのが辛いよね」
「せやけど、これからもこういう小さな幸せを大事にしていこう」
遠距離の壁は厚く高いけれど、二人はこの小さな時間を何よりも大切にしていた。
その日交わした約束は、遠く離れても互いを思う気持ちをさらに強くした。