第3章 孤独と寂しさ
陽介は大阪の狭いワンルームで一人、薄暗い照明の下、ぼんやりと天井を見つめていた。仕事の疲れだけでなく、心にぽっかりと空いた穴がどんどん大きくなる気がした。真理子とは頻繁に連絡を取ろうとしても、忙しい彼女はなかなか返事ができず、その時間の長さが彼の孤独を深めていく。
「寂しいって、こんなに重いんやな…」
スマホの画面に残る未読のメッセージを何度も見返しながら、陽介は胸の中のもどかしさをかき消そうとする。そんな時、ふと窓の外の夜空を見上げる。東京もきっと同じ星空の下にあるのだろう。そう思うと、少しだけ心が軽くなった。
一方、真理子も東京のアパートで涙をこらえていた。仕事のストレスと孤独感が重なり、涙が止まらなかった。陽介に会いたい、声を聞きたい、その気持ちは日に日に募っていたが、連絡のタイミングが合わず、言葉にできないまま胸の内に溜まっていく。
「どうしてこんなに会えないんだろう」
そんな思いを抱えながらも、二人は離れていても繋がっているという信じる気持ちを捨てなかった。遠距離の孤独と寂しさが、逆に彼らの絆を試し、育てているのだと信じて。
陽介は深夜の静かな部屋で、スマホを握りしめながら、過去の写真を何度も見返していた。二人で行った大阪の海辺、初めて一緒に食べた串カツ屋、真理子が笑っている姿…。その一瞬一瞬が、今は遠く感じて、胸を締め付ける。
「俺は、こんなにも彼女が大事なのに…どうして、すぐに会いに行けないんやろう」
そう呟くと、スマホが震えた。画面には「真理子からの着信」。慌てて電話に出ると、遠く東京の声が耳に届く。
「陽介?ごめん、仕事終わらなくて…やっと電話できた」
真理子の声は少し疲れているけど、聞くだけで安心した。
「俺も仕事終わらんくて、もうクタクタや。でも、話せて嬉しいわ」
二人は時間を忘れて話し続けた。会えない時間の辛さ、寂しさ、不安…。でも、その言葉のひとつひとつに支えられている自分たちを感じていた。
「覚えてる?初めて会った時、真理子が大阪のたこ焼き屋で熱そうに笑ってたの」
陽介が笑いながら言うと、真理子も笑った。
「あの時、初めて陽介と手をつないでドキドキしたの。あんなに楽しかったのに、今は遠くて切ないね」
「でも、あの時の気持ちがあるから、乗り越えられると思う」
電話の向こうで、二人の声は優しく重なった。
寂しさの中にある確かな愛。遠く離れても、二人は確かに繋がっていた。