第2章 仕事とすれ違い
真理子の一日は朝から夜遅くまでぎっしり詰まっていた。広告代理店の営業職はクライアント対応に追われ、急なプレゼン準備や突発的なトラブル対応も珍しくなかった。そんな日々の中で、彼女が一番恋しく思うのは陽介の声だった。
「今日も電話できなかった…」
疲れ切った体をベッドに沈めながら、スマホの画面をぼんやりと見つめる。陽介も同じように忙しいのだろうと自分に言い聞かせたが、寂しさは消えなかった。
一方、大阪の陽介も仕事で頭がいっぱいだった。人手不足の店舗で、連日残業が続き、休日もほとんど潰れてしまう。そんな中、やっとの思いで電話をかけても、真理子は会議中や移動中で通じないことも多い。
「なんで俺たち、こんなに忙しいんやろう…」
苛立ちと孤独が積み重なって、時に二人の連絡は途絶えがちになった。
そんなある日、真理子からの返信がいつもより冷たく感じられた。陽介はつい、強い言葉を返してしまい、二人の間に微かな亀裂が生まれた。
「遠距離って、こんなに難しいものだったんだな」
それでも、二人は諦めなかった。仕事と距離という壁に負けず、少しずつ歩み寄ろうとする心の葛藤が、彼らの絆をさらに強くしていった。