表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

第1章 出会いと始まり

大阪の蒸し暑い夏の夜、陽介はいつもの居酒屋で仲間と仕事の愚痴をこぼしていた。27歳の彼は、中堅の飲食チェーンで働きながらも、給料は安く残業も多く、いつも疲れていた。だが、その日だけは少し違った。彼のスマホに東京の真理子からメッセージが届いたのだ。


「今日、無事にプレゼン終わったよ。陽介くんも頑張ってね!」


真理子は広告代理店で営業として働く26歳。東京の忙しい毎日に追われながらも、彼女は陽介とのやり取りを楽しみにしていた。ふたりは大学のサークルで知り合い、社会人になってからも遠距離で付き合い始めたばかりだった。


「遠く離れていても、こうして話せるだけで救われるな」


陽介は呟き、スマホの画面を見つめる。大阪と東京、約500キロの距離。会いたい気持ちは募るが、現実はなかなか厳しかった。


それでも、二人の心は繋がっていた。遠距離恋愛の始まりは、寂しさの中に小さな希望を灯すように、静かに、でも確かに動き出していた。


陽介は居酒屋の喧騒の中、スマホの画面を何度も見返した。真理子のメッセージには、いつも彼女の忙しさがにじんでいた。広告代理店の仕事は激務だと聞いていたし、夜遅くまで残業する日も多いらしい。だが、そんな中でも彼は、彼女が自分を気遣ってくれる言葉に救われていた。


「俺も、もっと頑張らなあかんな…」


そう思いながらも、現実は給料が低く、休日出勤が増える一方だった。大阪と東京の距離だけでなく、時間とお金の壁も二人の間に立ちはだかっていた。


「次に会えるのはいつになるやろう…」


陽介はため息をつき、グラスを傾けた。


一方、東京の真理子もまた、仕事帰りの地下鉄の車内でスマホを握りしめていた。陽介から届いた短い返信に心がほっと温かくなる。


「お互い忙しいけど、必ずまた会えるよね」


心の中で何度も繰り返した。


遠距離の寂しさはいつも二人を試すように襲った。けれど、たとえ今は会えなくても、支え合う気持ちだけは決して途切れなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ