位の高い酒場
酒場の戸が開いた。するとそこから、16歳の男が、足を引きずるようにして店の中に入ってきた。中には、大男が3つの輪を作り、見えないほど奥にもまだ人がいる。男は酒を頼むと、3つの輪の中央に座り、目を瞑って耳を澄ませ、大男の身の上話を盗み聴いた。近頃は、男はいつも酒場に来ては、盗み聴きを繰り返す。男もまた盗人である。1つの輪の大男は、白髭を蓄え如何にも年上の気質を見せているが、対に座る輪の大男に向けて、なんとも腰の低い、哀れと言われんばかりの格好を見せている。すると大男は、激昂した様子で机を叩くと、白髭の大男に詰め寄ったが、一切の反論はなかった。店の中は落ち着かなくなった。当たりまえの様に2つの輪は、切り上げられた。男も、気が気でなくなり、店の奥へと逃亡した。
長い長い道のりだった。奥は広く、高い天井には高貴なシャンデリアが飾られている。そこにもまた白髭の大男が座っていた。辺りを見ても輪はなく、激昂した大男もそこにいない。だがしかし白髭の大男は、お構いなくいつまでも、腰の低い格好をしていた。男は、大男を好意的に思った。対に座ってやろうと思い笑顔になった。
笑う男が対に座ると、大男は至極当たりまえの様に格好をつけ始めた。如何にも白髭に見合った格好である。また男は軽んじた行為を後悔したが、もう意味はない。またまた白髭の大男は激昂した。激昂した大男は、笑う男に詰め寄ったが、一切の反論はなかった。
また店の中は落ち着かなくなった。
またまた男は気が気でなくなった。