第二十四話 -優位なんてものは幻想で弱点-
「んー?」
なー君ワキワキフェスティバルを引き当てたアタシは満足いくまでワキワキしようとしていたのだけど、なー君似の気配が移動することを察知して仕方なく切り上げた。
代金は昨夜支払っているので滞りなく宿を出ることが出来た。
昨日、森を出ようとしたら何やら衣玉ちゃんが語り出しそうな歪みがあったので、もしなー君なら出られないだろうからそう慌てることじゃない。
アタシは、幸いにも同じような歪みを以前に衣玉ちゃんと体験したので衣玉ちゃんのマネをすることで脱出する事ができたのだ。
今から思うと、元居た世界も案外オカルティックであったのね。
真似事で成功するって事はかなりいい加減なものだったのだろうけどねぇ。
気配から察するに歪みを突破出来ていないみたいなのでアタシは悠長に進むことにした。
アタシは低血圧だから朝が苦手なのよ。
なー君をワキワキ出来るかもしれないと思わなければ今頃ベッドの中でスリーピングタイムを堪能していた。
ドリームタイムでもいいわ。
なー君なら力づくで出てきそうだけど、多分時間がかかるだろうし森の外で待っておいてドッキリでも結構しようかな。
もしかしたら森の中心にいる人達に出方を教えてもらうかもだけどそれならそれで追いつけばいいかな。
一晩考えたけど、やっぱり、あの気配はなー君に違いないのよね。
気配が他人の空似ってレベルを遥かに超越して似ちゃってるし、容姿も似てる。
多分あのお爺ちゃんが何かしたんじゃないかなぁ。
もしこれでキューティーになってなかったらお爺ちゃんの命運はそこまでだったわね。
森の中心にいる人達と接触したみたいだし、もうすぐ出てくるかな、と伸びをして欠伸をして気楽にしていると――
「あー、なー君怒っちゃったなぁ。もしかして、あの実験動物かと感じていた気配、逆鱗に触れる幾つかの中の一つだったのかなぁ」
となると、アタシの推論は正しく、彼はなー君確定ということになる。
それなら、この感じる殺気は間違いなく問題だ。
「そうしない為にあの島にいたっていうのにこんな所でそれを無下にしちゃだめじゃない。まったく、更なるワキワキをしなきゃいけないわね」
アタシの感覚にもビンビン来てるし、可愛い弟子の止めどきも来てるし、何とかしちゃいましょうか。
なー君を一番溺愛してるのはアタシだって自覚もあることだし、それに準じようじゃない。
「ほいほいー、さっさっさー」
急いでいるのではしたないけど近道をば。
森の中の近道といえば木々の枝を飛び交って直進するのが早いのよ。
「うんうん、いたいた」
見ると、なー君が森の中心にいた人たちの方へと疾走する寸前だった。
間に挟まれるようにいるガーゴイルみたいなのが怒っちゃった原因かなぁ。
「とりあえずっ」
同行していた女の子は自体について行けていないのか呆然としているし、止める人は居ないみたい。
なら、アタシは愛に任せて愛に従うのみね。
なー君が普段以上の速度で昨日持っていた刀で斬りかかろうとしていたので、ナイフを取り出し相殺した。
更に、相殺したことで隙が出来たので回し蹴りの要領で後頭部を蹴り飛ばした。
なー君には悪いけど、他に方法思いつかないし。
ごめんねっ、なー君。
もうすぐでこのよくわかんない人たちだけじゃなくて、ガーゴイルにしか見えないけど人の気配をしたなんて言えばいいのかわかんないのを切殺しちゃうところだったじゃない。
キレて周りが見えてないなぁ。
悪い癖だからやめなってちゃんと釘を刺しといたのに。
刺したりなかったかなぁ。
「ん? ああ、なー君は大丈夫だよ。ほっとけば治るだろうし。取り敢えず、おじゃま虫はご退場かなぁ」
と、女の子に説明も兼ねて漏らす。
アタシってすっごく親切。
なー君の好感度がこれで上がるといいけどね。
よくわかんない人たちはよくわかんない事を発してよくわかんない事をしていた。
うーん、何か光ってるし、もしかして魔法とか何かかなぁ。
神様いたし、衣玉ちゃん経由で色々見てるからかそういう結論が出た。
火の雨って言い表せばいいのかな。
彼らが何やら光の塊を空に放ったと思ったら見上げて見える範囲全てが火の玉で覆われた。
あれって当たったら火傷で済まないよね。
なー君ならある程度大丈夫だろうし放置しとくとして、後ろの女の子はあぶないかもしれないなぁ。
やっぱり守った方がいいのかな。
と、やや心配になって後ろを見ると――
「!?」
後ろ姿しか見てなかったけど、今ならわかる。
某有名シュミレーションRPGのアグリアスに瓜二つじゃない!
と、なると間違いなく守らないといけないわね。
みなぎってきたわぁ。
再び視線を戻すと、先程より迫っている火の雨がやっぱりあった。
全部防いだほうがいいかなこれ。
幾つか方法が思いつくけど、一番成功率が高いヤツを選ばざるをえないわ。
兎に角、何とかしちゃいましょう。
-light line side-
感じる殺気はナークからでした。
雰囲気も尋常ではないです。
「ナーク?」
名前を呼んでも反応はありませんでした。
まるで聞こえていないかのようなまでの無反応さです。
ナークは何時の間にか昨夜の刀を構え魔族へと向かって行きました。
いえ、それは向かっていったと言っていいものか。
私には視認できなかったのです。
突如消えた、そう表現した方がいいかもしれません。
魔族側には見えているらしく魔法の詠唱を始めました。
しかし、ナークの迎撃には間に合わないでしょう。
案の定、詠唱が終わりきる前にナークは魔族の前へと現れました。
「っくそ! こいつ人なんじゃないのか!」
魔族は焦燥しか浮かべていません。
ナークの手がブレ、魔族が切り刻まれる光景を幻視したのですが、それは発生しませんでした。
突如、上空から見知らぬ女性が現れ、ナークの刀を全て弾く事で防いで見せました。
それだけではなく、突如ナークが吹き飛ばされました。
一瞬何が起きたのかわかりませんでしたが、格好から見ると、どうも蹴り飛ばしたようです。
女性が浮かべる顔は非常に悲しそうというか、申し訳ないという様な表情でした。
格好からして猟兵の様ですが、ナークに匹敵するレベルの猟兵となると、国が抱え込み有名になるはずなのですが、私はこの女性を全く見た覚えがありませんでした。
女性は、私達に背を向けて魔族と対峙する格好になっていました。
私も同じですが、魔族側も困惑の表情です。
「■? ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」
女性が何やら話しているようですが、何を言っているのかよくわかりません。
イントネーションの関係で、疑問系か否か、程度が辛うじて分かる程度です。
山奥で別の発展でもした村の方なのでしょうか。
この理解出来ない言葉は訛りのようなものなのかと思いました。
訛りにしては、まるで同じ言葉のように思えないということが不思議でならないのですけれど。
女性は、こちらを振り向き、目を見開きました。
驚愕の表情というものです。
その驚きようは凄まじいものでした。
黄金色の断裂としての私を知っているのでしょうか。
存在は知っていても黄金色の断裂が私であるということを知る人間は猟兵にはそう居ないはずなのですが。
女性が再び視線を魔族の方に戻すと、その頃には魔族の困惑も解消され、詠唱も完成していたようです。
火炎球を空へと放ったかと思うと、それから無数の火炎球が放たれました。
対象は、角度から言って私達全員。
突如現れた女性もそこに含まれるようです。
「っく!」
回避しきれ無いと思い、烈火断層を放つも、女性の方まで手が回りません。
女性はそれを驚いた表情で見ていました。
私の力不足のせいで、女性を助けられそうもありません。
「ああ、大丈夫だよベヒス」
ナークは落ち着きを取り戻したのかいつもの調子で私の所まで歩んでき、そう言いました。
ナークはそう言いますが、ナークじゃあるまいしあれを耐えぬくなんて事は、知名度の無い猟兵では不可能でしょう。
何とかできるのなら、普通なら確実に知名度があがるのです。
それ程、出来る人間が少ないということです。
猟兵でも数人居る程度じゃないでしょうか。
殆の猟兵は、相手の方が人数が多い場合、魔族には手も足も出ないのです。
それほどまでに人間と魔族には根底的な性能差というものがあります。
「宇美音子さんなら俺よりもっと余裕を持ってあれをどうにかできるよ」
信じられません。
が、雨のように火の天井の吊り天井のように無数に降り注ぐ火炎球を女性は全て回避して見せました。
というよりも、火炎球に当たったかと思ったのですが、火炎球が地面に接触し、砂煙が巻き起こった後に無傷で女性は佇んでいた、という結果を見ただけです。
もしかすると、何らかの方法で防いだのかもしれません。
「■■■■■■■■■■■!」
女性が叫び声のようなものを上げ、刹那後には消え、魔族の前に現れ手に持つ短刀を文字通り目にも留まらぬ速度で振るいました。
本当に女性が人であるのか。
もしかすると、魔族なんじゃないのかと思わざるをえない光景です。
しかし、魔族はやはり魔族らしくそれを全て防いでいます。
見ると、魔族と女性の間には障壁が張られていました。
おそらく、それで全て防いでいるのでしょう。
障壁は、その効果を発する度にそれの度合いによって魔力を消費するのですが、魔族はその上限が人間の比ではないのです。
「燃えろ!」
更に、その障壁は発動するまでは詠唱が必要ですが、発動後は独立して存在しますので、他の魔法を発動することが可能なのです。
その性能で女性は一見攻勢に出ていますが、押されています。
火炎魔法が放たれる瞬間に間合いを開け回避して見せました。
信じられない速度です。
身体強化の魔法を使用しているのかと思い、探索してみましたが、それらしい痕跡はないことから、持ち前の身体能力のみで再現しているようです。
それは見たことがあります。
「――ナークと同じ……」
ナークと同じように、魔力が全く感じられないのです。
ナークは稀に魔力を放出しての戦闘を行うようですが、基本的に魔力は使用せず、信じられないことに持ち前の身体能力のみで戦闘を行っています。
カタブキと戦闘を行っていた際もそうでした。
カタブキは勇者の一人であるので、人間を凌駕した戦闘能力を何かしら秘めていたはずなのですが、ナークはそれを赤子のように扱っていました。
「■■■! ■■■■■■■■■?」
女性はこちらを――ナークの方を向き何か叫びました。
「ベヒス、ここは俺らにまかしとけ。どういう訳か知らないけど、宇美音子さんがいる。負けることはまずないさ」
という言葉を私は信じられませんでした。
いくらナークでも、生物的に上位種にあたるであろう魔族に対して敗北を得ないなど幻想としか思えません。
基本的に魔力を使用しないナークと魔力を発していない女性の二人は、実質上、猟兵でも何でもない平民と変わらないのです。
越えられない壁というものは確実に存在します。
それこそ、人間を超越した存在の勇者でない限りは――
-main side-
「なー君! なんとかならないの?」
ナイフを全て防がれ、その上火炎の追撃を受けた宇美音子さんはそう叫んだ。
どうやらあの障壁は物理属性にかなりの耐性もつものらしく、物理攻撃をはじいていた。
俺はベヒス嬢の方を向く。
「ベヒス、ここは俺らにまかしとけ。どういう訳か知らないけど、宇美音子さんがいる。負けることはまずないさ」
ベヒス嬢は信じられない、という顔をしていた。
まあ、普通の反応だろうな。
相手は魔族だけじゃなくて、あの人間だったモノもいるのだ。
さっきはキレちゃったけど、宇美音子さんの蹴りのお陰で冷静に対応できる。
「宇美音子さん! その障壁は多分物理属性耐性があるんだよ!」
俺と同じくしてゲームをこのなく愛する宇美音子さんの事だから理解してくれるだろう。
放たれる火炎魔法をナイフを高速で振り回すことによって生じる衝撃で打ち消し、一時の均衡状態を保っていた。
「げげっ! それほんと!? 不味いじゃーん。なんとかしてよー」
魔法を扱えない宇美音子さんにしては天敵といわざるを得ないだろう。
かと言って、このまま俺ひとりで勝てるのかというと確証は持てない。
「ベヒス、ここから先のことは他言無用で頼むわ」
ベヒス嬢が頷くのを見届けて俺は呟く。
「形状実装」
オッドルから貰ったオーパーツ的な素材を取り出し、形状変化を図る。
が、その形状変化は芳しくない。
「はーやーくー。あんまり持たないよぉー」
確かに、徐々に押されてきている。
幸いここは、魔力を放出しようと認識されない阻害の効果のある結界が張られている。
俺は魔力を抑制していた腕輪を一つ消失させる。
「!? この魔力は!? おい! 雑魚ども! 奥のやつを先に片付けろ!」
フェンがガーゴイルに俺を狙うよう命令を下す。
が、それによって生じた隙は一瞬だが、宇美音子さんにとっては大きな隙だ。
「はいはいっとー」
蹴りを放ち、宙に浮かせ、更に跳躍することで更に蹴りを三連放ち吹き飛ばす。
ベヒス嬢は俺の魔力量が気になるのか、多少意識がこちらを向いているが、烈火断裂を放ち牽制する。
烈火断裂は必殺で防ぎ用のないものだと思っていたが、フェンたち魔族はあっさりと防いでいる。
魔法に関しては魔族の方が上なのだろう。
魔力量もそうだが、技術も相当である。
「形状実装」
二本のナイフを作成する。
その耐久値は凄まじいもので、そこいらの物質よりも二桁ほど大きいものだった。
これなら、いけるかもしれない。
以前は一度の戦闘、いや、数撃だけで実質使い物にならなかった。
俺は魔道書を展開する。
初めてこの魔道書に頼る心境になったかもしれない。
俺の力量だと、これが上手く行かなければ間違いなくここで死ぬ。
それに、二人を守れない。
「――いけるか」
必要な知識が引き出される。
その知識は、理論上可能であると告げている。
ならば俺はそれに託すだけである。
無理だったら無理だったと何か方法を考えればいいだろう。
尤も、その余裕があるかは定かではないが。
「特性実装」
魔法を――特殊効果を施す。
――魔術式、構成完了
――接続、完了
――移植、完了
――固定、完了
形状融解反応無し。
存在固定、完了。
「宇美音子さん!」
と、叫び作成したナイフを放り投げる。
あらぬ方向に投げてしまうというような失態はなく、問題なく届いた。
「お、おお!? なー君すごいじゃーん。イケメンになったのは伊達じゃないってことだね!」
宇美音子さんがナイフを掴むと、速度が上昇した。
もはやフェンたちにもその姿は見えていないのではないだろうか。
ただ、これだけだと、物理遮断ともいえる物理障壁は突破できない。
あれはあくまで身体強化の付加効果なのである。
ベヒス嬢もそれを察したようで、未だ緊張しているようだ。
対する魔族側もそれに気がついているらしく、余裕の表情である。
魔法武器を作る原理と同じモノなので魔術効果付加、これ自体は全く珍しくないのだろう。
それ故に欠点も判っているのだろう。
魔法不可は基本的に一種のみ。
重ねがけも不可能なのだ。
理由として幾つか挙げられるが、一番はやはり付加したモノが魔法の威力に耐えきれずに崩壊してしまう事だろう。
次に、重ねがけを除いて複数付加は事実上同時に複数種の魔法を行使し接続し固定しなければならないのである。
魔族であるならば複数種を同時に扱うことは可能なものも居るだろう。
それ以降の作業である接続と固定はそれ以上の難度がある。
並々ならぬ魔力コントロールを要求されるのである。
それだけではないが、理由としてはそれだけで十分だろう。
魔道書からの知識は無論、その欠点についても教えてくれる。
ただ、腐っていても神だ。
あいつが寄越したモノ――神器は常識をも覆すものらしい。
知識の中には、その欠点を改善したものも存在するのである。
「なに!?」
フェンの叫び声が聞こえ、俺は口の端が釣り上がるのを止められなかった。
「うーん、これ、すごいね。衣玉ちゃんが使っていた霊能みたいな感じの何か? 人体発火の応用とかかなぁ」
宇美音子さんの両手にはベヒス嬢が扱っていた烈火断層による剣と酷似したものが握られていた。
ただ、刀身はサバイバルナイフ並の長さに調整されている。
「感想は後にしてくれよ。まずはあいつらを何とかしないと」
「だよねー、早く何とかしないと!」
このサイズの武器でなら宇美音子さんも全力を出せるだろう。
宇美音子さんはソレを察したのか微笑む。
「うんうん。なー君がせっかく作ってくれたしやれるだけはやるよー。それに――」
宇美音子さんはそう言いながら烈火断層を放つベヒス嬢に視線を移した。
その視線からはどう考えても下心があることが見て取れた。
「あー、宇美音子さんの考えてることが何となくわかったよ」
ベヒス嬢、ご苦労様とだけ言っておこう。
なるべくそうならないように善処はしてみるが、人間には限界があるのである。
十中八九、どうしようもないだろうな。
「そーう? んじゃーちゃっちゃと行ってくるよー。っていうか、なー君もサボってないで参加しなさい。それで何とかできるんでしょ?」
と、魔道書に視線を移す。
所謂、オタクと呼べる域まで突入している宇美音子さんは当然、ゲームも嗜んでいるのである。
となると、RPGにも手を出している可能性もあるわけで、今はそれに漏れなかったのである。
RPG思考――厨二病的思考を放出すれば自ずと魔道書のことは朧気にも把握できるということだろう。
そもそも俺がゲームやらをやることになったのは宇美音子さんのせいだし、それをやってのけても俺は何の疑問も抱かない。
今も、コスプレで戦闘してるわけだし、オタクの重度さが見て取れるだろう。
それこそ文字通り。
「宇美音子さん、魔族の魔法は俺が何とかするわ。余裕があったら攻撃もやる」
放たれ続ける火炎球を回避しつつ相談とは名ばかりの宣言を開始する。
「はいはーい、オーキードーキーでっす! そんじゃ、全力で行こうか。なー君との共闘って久しぶりだし力が入るわぁ」
死が入り乱れる中で笑みを浮かべる宇美音子さん。
傍から見たら完全にイカれてると思われる所業である。
「人間風情の似非魔法でどうにかなると思うな!」
と、ガークが叫び魔力を高め、魔法を構築し始めた。
どうやら、今までは人間だと思って舐めて掛かっていたらしい。
魔力の向上具合からこれからは本気、というヤツでくるのだろう。
ソレに呼応するかのようにフェンも魔力を高める。
俺は先の能力行使で魔力を消費してしまったので現在の常駐魔力は彼らよりも低い。
単純な力比べだと負けること必至という事である。
宇美音子さんは彼らの魔法など無いと言わんばかりに先と変わらず突っ込んでいる。
俺のそんな心配とも呼べる心境を読み取ったのか、「なー君がなんとかするんでしょ?」と呟いた。
ふむ、そういってもらっちゃったら俺も期待に沿わなければなるまい。
「死ねぇぇぇぇ!」
ガークとフェンがそう雑魚よろしく、セリフを吐き雷の上位魔法を放つ。
魔法構成を見る限り、さすがは魔族。
人間が繰る魔法等は稚戯と呼べる程度にその内容の高度さが違う。
例えば、人間が繰る魔法が東京ドームいっぱいの水だとしよう。
魔族のそれは、同じ純度――東京ドームいっぱいの水――をサッカーボール程度まで凝縮できるのである。
そして、それを同じ規模――東京ドームいっぱい――を超えて扱える。
技量も素質も人間のそれに収まりきらないのである。
人間からすれば理解もできないのではないだろうか。
俺も魔力を視認する事ができなければ理解できなかったかもしれない。
それ程までに本能的に目を背けてしまいそうな力量差なのである。
無論、工夫次第でそれを覆すことも可能だが、現実的ではない。
「そのセリフって死亡フラグじゃない?」
宇美音子さん、セリフに容赦を設けたほうがいい。
狙われるし。
今、宇美音子さんは無防備にも突貫しているって事を忘れてはいまいか。
「ほんと、頼むよマジで」
俺の仕事が増える。
「なっ!?」
俺が魔道書の知識を行使し、反作用魔法を瞬時に展開し無効化すると、本当に雑魚よろしくのセリフというか叫び声を上げ慌てて次弾を構成し始めた。
残念ながらその隙だけで勝敗が決するという出鱈目な戦闘もあるということを種族的優位からか、認識していないらしい。
「っが……ぁ」
宇美音子さんが瞬間的に高速化し、消失したかと思うと、再び現れ、相対していた魔族は身体の要所要所を切り刻まれ地に伏した。
世の中は時として世知辛いのである。




