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魔王物語  作者: ragana
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第十五話 -例外は規格外を呼ぶ-

 俺はボサボサ白衣に手渡された鉛の様なものを見た。

 一見鉛だが秘められた魔力は鉛のそれの比ではなく、耐久値も大凡10倍。

 鉛の様で決して鉛では無いそれは加工できないと嘆く気持ちも分かる様な物であった。

「失敗しても文句は言わないでくださいね?」

 ボサボサ白衣はニヤリとする。

 先程まではドロドロとしている様で良いイメージは抱けなかったそれだが今は中々どうして不快では無く好感を持てそうであった。

「気にするな。どうせ国王に金の無駄から破棄しろと言われてるんだ。感謝こそしても文句など絶対に言わないし思わないさ」

 俺が前向きに検討し始めた瞬間からどうも友好的になっている。

 どうも現金な気がしてならないが不思議とそれに不快感は抱かなかった。

 カリスマ性と言うやつなのだろうか。

 ぱっと見はそんなもの全く感じないのだが。

「そうですか。まあそれなら良いですよ」

 彼から受ける印象が変ったのはそのまま彼の意識が変わったからなのか、俺の意識が変わったからなのかは知らないが、仲良くなれそうな気がした。

 良く考えてみると、友人と呼べそうな存在は生まれてからエドルしかいないんじゃないだろうか。

 以前の世界の事は一定の事を除いてあまり覚えていないのでもしかしたら居たのかもしれないが、覚えていないのならそれは居ないと同じであると思う。

「ところで、錬金に必要なものは何かあるかい? 魔法陣ぐらいなら記述を手伝えると思うが、大規模な魔法陣になるとすぐには記述できないし設備があるならそこでやっても良いぞ」

 と、言われても俺はずっとこの身一つでやっているのである。

 後で魔法陣について教えてもらうのも良いかもしれない。

 魔道書だと魔法の知識は入るが魔法陣と言った魔法を補助したりするモノの知識は得られないのである。

 いや、忘れているだけで実際は得られているのかもしれないが、魔法陣を記述する度に魔道書を展開なんてやってられないので学ぶ事にこしたことはない。

「いや、良いです。なにも必要ないです」

「じゃあ、何処かに移動するのか? それならついていく事になるが」

 良いから黙ってそこで立っていろと目で訴えるとどうやら伝わったらしく口を噤んだ。

 手にある鉛の様なそれは今までに使った素材とは格がそもそも違うものである。

 上手くいくかどうかは神のみぞ知る、でだろう。

 あの神のみが知る様な言葉であるので若干気に食わないが、この場では無理やり気にしないでおこう。

 体内に魔力の循環を感じ、手にある鉛からも魔力の循環を感じた。

 この素材が得られたら俺の戦力は大幅に上昇する事請け合いである。

 まじまじと見て思ったが、この取引は断らなくてよかった。

 この素材は多少のリスクを負ってでも得るべきものであった。

 そう思えるこの鉛の様な物でこの部屋にあるモノで言うと下位に属するのである。

形状実装(リード)

 今までどおりに言葉を呟いた。

 が、何も起こらない。

 いや、魔力自体は消費している。

 現状と結果を鑑みると結論はすぐに出た。

 つまり、失敗。

「どうした?」

 ボサボサ白衣がそう聞いてくるが言い辛い。

「失敗ですね」

 その一言を発するまでに心の準備が必要であった。

 心の準備をした甲斐があると言わさんばかりに凄まじい落胆の表情を浮かべうなだれている姿を見せつけてきた。

 その姿に心が痛んだ、というような理由ではない。

 この素材を加工する術をこの隠蔽できる部屋で編みだした方が良いと理解出来ていたからである。

 だからこそ、もう一度、行おうと思ったのだ。

「もう一度やります」

 おそらく、能力発言の際に要求される魔力より使用できる魔力が少なかったのだろう。

 俺は袖をまくる。

 気合を入れる為という理由での行動ではない。

 そこにあるのは手以外に、螺旋状の針金の様な腕輪が5つ装着されている。

 これは俺が最初に作成した魔法道具である。

 魔法道具とは言っても魔法武器の様なものとは決定的に違う部分がある。

 素材――媒体を用いず魔法のみで構築されているのである。

 それ故に実態はあってない様な物で、だからこそ今まで邪魔にならなかったのだ。

 これらの秘める効果は封印。

 神に与えられた神に許され世界には許されない程度に膨大な魔力を封じ込めている。

 段階は5つで別けているが、1つ外せば倍に、2つ外せば2倍にと言う様な単純な封印方法では無い。

 現在、先の錬金の失敗の反動で魔力がほぼ底をついた状態であるが、おそらく1つ封印を解くだけでそれ以上、数倍の魔力を得られるだろう。

 全て外せば、外す以前とどれ程の差があるか分からない程全体の魔力は膨大である。

 魔力総量はこの世界の容量異常に存在する。

 それ故に全てを開放する事はあまり出来ないのだが、この1つで十分戦っていけるのである。

「それは、魔法道具――。それも完全構築方式か――。それだけじゃないな。完全構築だけで信じがたいがそれを5つ重ねがけしているのか」

 ボサボサ白衣がこの腕輪を見てそう適切な解析を行った。

 ああ、そうだ。

 ボサボサ白衣などという呼び名で済ます程彼の好感度は俺の中で低くはない。

「なあ、お前の名前は?」

 元の口調に戻し、俺を俺として振舞わせると出た言葉がそれであった。

 それに反応して腕輪を見ていたボサボサ白衣は顔を上げて好奇心で輝く目を向け答えた。

「――私の名前はオッドル・クヌサル。オッドと呼んでくれたら良い」

 唐突な振りにと口調の変化に警戒されるかと少々思っていたがそんな事はなく、寧ろ愛称まで考案してくれた。

 どうやら相手を気に入ったのは俺だけではないらしい。

「俺の名前は、な――ナークと呼んでくれ」

 思わず以前の世界での名前を言いそうになったが辛うじて阻止に成功した。

 頭文字の発音が同じで助かったと思わざるを得ない。

 元の名前が日本形式の名前で無くアメリカと言った外国の形式であったとしても"な"から始まるので対策は万全である。

「わかったよナーク。君は私の友人として覚えよう」

 俺の意向が伝わったのか、工程をすっ飛ばしてオッドはそう言った。

 中々に妙な気分だ。

 犯罪者になった時から、いや、犯罪者になる以前の準備期間に突入した時点で友人が出来る事など無いと思っていたし諦めていたのだ。

 それが予想もしない所で成されるとは思いもしなかった。

 折角の正式な友人である。

 エドルとは友人であるとは思っているが、今の様に確認した訳ではない。

 そう考えると、初めての正式な友人と言えよう。

 そんなオッドの期待を裏切る訳にはいかない。

「なら、ついでに、オッドの頼みを聞いた人物としても覚えておいてくれ」

「どういうことだ?」

「まあ――見ていればわかるさ」

 そう言いつつ、腕輪の維持を1つ止めた。

 すると、当然腕輪が1つ消失する事になる。

 同時に、魔力が今まで以上に放出する事が可能となった。

「――ナーク、君は一体何者なんだ? 人間なんだろう?」

 少々魔力に当てられ汗を見せるオッドはそれ以外に表面上にはそれらしいモノを一切漏らさずにそう聞いてきた。

 中々の根性であると感心せざるを得ない。

「俺は只の若輩者に過ぎない。人間かどうか――はどうだろう。俺は――そうだな、鬼と呼称して貰った方が正しいかもしれないな。いや、勿論、生物学的には人間だけれどね」

 そう喋っている間にダムの倒壊の如く勢い良く噴出していた魔力は落ち着きを取り戻した。

 どうやら、長期間――と言う程日時は経過していないが――封印した後に開放すると一定量吹き出てしまうらしい。

 魔力とそれを保存する場所は神のそれであるが、肉体は人間の俺なのだからそうなって当然で、寧ろ、封印している間、良く俺が持ったものだと不思議に思う程である。

 例えば、強度は鉄よりもある風船があったとしてよう。

 そこに大量の水を入れる。

 普通の風船ならば途中で割れてしまうだろうが、強度のある風船なので割れる事はなく膨らむ一方だ。

 それを解き放てばどうなるか。

 当然ある程度吹き出る。

 それが現状である。

 魔力が落ち着いた頃には、部屋中魔力で満たされていて、この部屋が魔力遮断の効果が無ければこの部屋の外にも漏れ、この建造物に居る生物全員に影響を及ぼしていた。

 抵抗の無い者だと意識を失い、抵抗のある者なら身体が重くなる程度である。

「ナーク、私は君を鬼とは呼ばないよ。君は私の善き友人であるのだからな」

 そんなオッドの台詞に耳を傾けつつ俺は体内だけでなく部屋中に蔓延する魔力をも循環させた。

 要求魔力的に部屋に充満する極一部の魔力だけで事足りそうであった。

 どうやら、オッドの作成した魔力炉を用いる方法よりも俺の能力の方が魔力効率が良いのか必要魔力が少ない。

 手にある鉛の様なそれは、外部から魔力を込められ、錬金を使用された事が相成って光り輝いた。

 その発光はほんの数秒程度で収まり、それから視覚で来たモノから得られる事実は唯1つである。

「ほら、な。成功した」

 オッドに鉛の様な物で作成した剣を渡すと、オッドは待ってましたと言わんばかりに舐めるように剣を四方八方から眺め始めた。

 目に込められた魔力の循環を見る限りは解析の魔法でも使用しているのではないだろうか。

 今なら俺の込めた魔力と能力の残滓があるはずなのでその方法は有効で適切である。

 オッドが眺めている間、再び魔法道具を構築し、魔力を封印した。

 1つでこれ程なのに2つ以上になるとどうなるか想像もできない。

 それ故に怖くておいそれと封印を解除出来ないだろう。

 俺は臆病なのである。

「凄い! やっぱり見込んだ通りだ!」

 と、オッドは飛び跳ねんばかりに暴れているとしか表現できない様な挙動をして見せ、剣を振り回していた。

「そうか。まあ、期待に応えられたようでなによりだな」

 失敗した時は地味に焦った。

 友人の頼みも聞けないのかと自身を罵る所であった。

 どれぐらいオッドは飛び跳ね続けたかは知らないが、息が切れると落ち着きを取り戻した。

 とはいっても、当分息が切れたままなので正確にはそれが回復するまでは落ち着いていなかった。

「……済まなかったね。落ち着いたよ」

 とまだ引かぬ笑みを浮かべながらそう言った。

 俺はと言うと、部屋の中を物色して回っていたので別段待ち続けていたという印象は抱かなかったので謝るのはお門違いであると思える程度であった。

「いや、気にしてないから」

「そうか? いや、済まないと思ってるよ。さあ、価値の分かっていない国に取られる前にさっさと君に渡してしまおう」

 と、部屋を指さす。

 見てみると河原に落ちていそうな石ころサイズの素材から、どうやってここに入れたのだろうと疑問に思う程度のサイズの素材まで様々にあった。

「そういえば考えていなかったが、この素材は何処に運べばいい? やはりナークの家か? それにどうやって運べばいいだろうか」

 家など無いし、運ぶ必要も無いので気にしなくても良い。

 それよりも、国はオッド一人にこれを処分しろと命じたのか。

 どれだけ過酷な命令だ。

 狭いとはいえない――寧ろ広いこの部屋に所狭しとある素材があるのだ。

 その収納方法は乱雑で積み上げられているが、それ故に天井まで詰んでいたりとするので予想以上に量が多いのではないだろうか。

「いや、気にしなくて良い。俺で出来る」

「そうか? 気を遣わなくて良いぞ?」

 少々多いので集中力を高める。

 居合い切りを思い出す懐かしい感じである。

 集中力がある程度高まった所で素材を近くにあるモノから保存していた。

「ナーク、それはなんだ? 詠唱も無い様だが、魔法陣でも書けるのか?」

「ん? いや魔法陣は書けないぞ。寧ろ、後で魔法陣の書き方辺りを教えてくれよ」

「ああ、それは良いが……。それよりそれは――いや、聞かないでおこう」

 まあ、そうして貰う事に越したことはないな。

 俺としてもオッドとしても、だ。

 俺は言わずもがなであるが、もしかすると知る事によって何やら面倒な事に巻き込まれる可能性がなくはないのだ。

 巻き込まれる可能性があると考えていて態々教えたいとは思わない。

「――悪いな。まあ、話せそうになったら話す事にするよ」

「ああ、それで良い」

 そう言いながら頷く。

 俺は数分の時間をかけ素材を保存し終えた。

 当分素材には困りそうもない。

 うれしい事である。

 良く考えてみると、素材が無いからそこそこ苦労していた覚えがあるのだ。

 まあ、元々無かった能力と言うモノに頼り切った発言を吐かなければならないのは自身の力不足であるだろうから反省すべき部分である。

「さて、保存し終わったし、魔法陣について教えてくれよ。あ、でも時間かかるならいいわ」

 そこで、ふっふっふと怪しい笑い声を上げながら腰に手を当てて恰好を付けていた。

「任せろ! 一瞬でやってやる!」

 オッドは怪しい雰囲気を消さずにそのままで俺の近くまで歩いてきた。

 その間、その怪しさに負けて逃げそうに何度もなったが、かろうじて踏みとどまる事に成功した。

 ガチムチに迫られるような勢いで精神的に負けそうであったが耐えきった俺に称賛を与えたい所である。

 オッドは右手を俺の額に当て、そのまま何やらぶつぶつと呪文らしきものを唱え始めた。

「よし、これでいけただろう」

 と、体感的に3分程と言うカップラーメンよろしくの時間でそれは終わった。

 俺的には何の変りも無い。

 失敗したのではないかと思わざるを得ない様な勢いで変哲が無い。

 哲学的に変りが無いと書いて変哲と書くのだろうかと少し考えてしまう程錯乱していた。

 いや、その時と言うか一瞬前まで錯乱している事にさえ気がつかなかったのだが。

「ふむ。その顔は変わり映えが無くて信じていないという顔だな」

 厳密には、信じていると言えるだろうが少々疑問に思うという、信じている側よりの疑いという所だろうか。

 対比的には8:2ぐらいで信じている。

「何か変わり映えがあったと思わせるのは実力の無い者がやる事だ。証拠に、"火の構築式の魔法陣"を書いてみろ」

 と、言われてもどうしたものか。

 俺が呆けていると、オッドはニヤニヤとし始めた。

 いったい何だというのだ。

 そんなに失敗したのがうれしいのか?

 これが腹立つ学校の教師とかであれば殴り飛ばしていそうである。

 いや、学校には言った事が無いけれどね。

 想像で言っただけである。

「ほら、疑問は吹き飛んだだろう?」

 何の事である。

 俺は呆けていただけであるので、何も進展はなく寧ろ疑問は尽きる事なく増える一方である。

 今、文句あるか? と聞かれれば文句? あるに決まってるだろうが! と叫んでその後に3時間ぐらい問い詰めてしまいそうである。

「ほら、手元を見てから文句を言え――考えろ」

 こいつ、心が読めるのか!

 心を読むな!

「ったく、手元を見て絶賛文句を――」

 そこには何やら紋様が刻まれていた。

 これが魔法陣であり、火の構築式の魔法陣である事も何故だか理解出来た。

「記憶同期の魔法をお前に使ったんだよ」

 ニヤニヤと不快さをもれなく発生させてくれる表情を浮かべつつそう言ってきた。

 少しは自重しろよと言いたかったがそのニヤニヤ具合は相当であり俺が口をはさむ隙を見いだせなかったので泣く泣く諦める事になった。

「記憶同期――名前と現状を鑑みる限り任意の記憶を相手にコピーするって所か」

「ああ、それも、自然と馴染ませられる」

 だから無意識下で魔法陣を書けるレベルまで至ったのか。

 オッドの記憶であるという事は熟練者であるオッドと同等の熟練者になったという事なのである。

「私の知識を得たと言ってもまさか空中魔法陣をいきなり使ってくるとは思わなかったがな。あれは知識云々の話じゃあないからな」

 そういえば、魔法陣は空中に浮かんでいた。

 魔法陣の線に値する部分は光の線で出来ていた。

 それは、触れても熱を持っている訳ではなく、逆に冷たい訳でもない。

 空気と同じで、感触も無くあるようで無いものであった。

「空中魔法陣が使えるなら魔法と魔法陣の素質があるという事だな。もしかするともっと高度なモノも扱えるようになるかもしれないな」

 その言葉に幾つもの単語やらが脳裏へと表出してきた。

 どうやら知識は本物の様である。

 何せ、空中魔法陣という名称さえ知らなかったにもかかわらず、それよりも高度な立体魔法陣やら多重魔法陣やら天体魔法陣といった言葉も思いつくのである。

 どうやらオッドは本当に記憶同期の魔法とやらを使ってくれたらしい。

 その感覚は、うろ覚えであるが魔道書を展開した時はこの様な感じになるのだろうか。

「まあ、記憶同期の魔法は万能じゃないけれどね。魔力を多量に消費するし、力量によっては記憶の拒絶反応で対象が廃人になる場合もあるからね」

 そうかそうか――おめえ!

 なんてもんを俺に使ったんだよ!

 と、殴り飛ばそうとするがかわされてしまった。

 速度はそれ程ではなかったので回避されるのは仕方が無かったが、命拾いしたな。

「……ナーク、本気で殴ったな?」

 俺の拳は壁にめり込んでいた。

 壁にまったく罅が入らずに拳が突き刺さっているのでどれ程衝撃の分散が無い大変なパターンの拳であったか理解できる。

「本気を出すわけ無いだろう」

「だよな、冗談だよな」

 ははは、と乾いた笑みをこぼすが、勘違いであったと思い記憶から抹消するなどということは俺がさせん。

 トラウマよろしく、心に刻まれる思い出になるがいい。

「本気だったら今、お前のヘッドパーツは虚空と同意になっていただろうな」

 もしくは、オッド入り空気である。

 粉々という言葉も生易しいと判断できる粉々具合を証明してみせよう。

 問題は、その頃にはオッドのヘッドパーツが粉々になっているため、証明を見届けるために必要な眼球と脳髄も共に粉々になり霧散してしまうところである。

 オッドは俺の目が多少本気であったことに気がついたのか顔を引きつらせていた。

 いい気味である。

「で、他に何か教えて欲しいことはあるかい?」

 あるわけが無い。あったとしても無いという。

 再び記憶同期の魔法を行うという愚行は起こさないだろうが、別形式の似たようなものをやりかねないのでこの判断である。

 もし、危険性がないと疑い所の無い挙動であっても信用できないだろう。

 当分の間、この件に関してのオッドの信頼度は零以下のマイナス値である。

 魔方陣に関しては、作成方法だけでなく、思い浮かべた魔方陣に関する質問であれば今のところ全て返答が返ってきている。

 どうやら、魔法陣は作成に時間がかかるらしいのだが、その分魔力消費が少ないし詠唱も必要としないために、事前に何処かに刻んでおけば設置型の魔法のようになるらしい。

 ベヒス嬢は詠唱を唱えていなかったようなので鎧や剣辺りにでもあのビームサーベルを発生させる魔法陣を刻んでいたのだろうか。

 ああ、だとしたら幾つか納得がいく。

 恐らく、魔法陣の補助がないとあの黄金はあまり多用できるものではないのだろう。

 魔法陣は補助的役割でもあったのではないだろうか。

 根本の部分が任意でない限りあのように自在に形状変化出来なかったはずなのだ。

 だからこそ、鎧が崩壊してから剣のみで挑み、ギリギリまで黄金を使わなかったのではないだろうか。

 まあ、憶測でしかないが。

 もし、そうならば俺が壊してしまったあの鎧はすごく重要だったのではないだろうか。

 酷く、罪悪感がこみ上げる。

 今のベヒス嬢は黄金が使用できないのではないか。

 それ故に起きてすぐの攻撃が無かったとも言えるので安心するところもあるが、今の俺のベヒス嬢に抱く好感を考えるとそう蔑ろに出来る項目でもなかった。

「教えてほしい事は無いが、ちょっとここの設備を使わせてくれ」

「ん? ああ、研究が打ち切られたからここも必要ないし問題ないよ」

 そう聞くや否や、確保していたベヒス嬢の鎧を近くの机に取り出した。

 魔法陣の知識がある今ならばわかる。

 今は壊れて見るも無残な姿となり役割を果たせないどころかそもそも役割が何であったかが素人目にはわからない惨状になっているのである。

 よく見てみると、確かに魔方陣らしきものが刻まれていた。

 俺の予想は正しかったのかもしれない――良くないことにも。

「オッド、これから見ることは他言無用で良いか?」

 と、部屋の主に尋ねてみる。

 流石に、部屋を借りている身分であるので追い出すわけには行かないし、オッドは既に友人認定をした後だ。

 そう邪険には出来ないし、多少の信用をするのが礼儀であると考えている。

 俺は再び封印を一つ外した。

 鎧の穴を補強する程度で貰った素材を使用するのであれば封印を外す必要は無かったが、ベヒス嬢の鎧の元々の素材と、俺が持っている最弱の素材を比較したとしても相当に差がある。

 それ故におそらく反発してしまう。

 なので、俺の持つ素材で身に着けていても悪影響が無い程度の魔力を内包した素材で全てを作成することにしたのだ。

形状実装(リード)

 そう呟くと見る見るうちにベヒス嬢の鎧と同形の鎧が作成された。

 魔法陣の知識はあるが、それに必要な魔法の知識が欠如していたので本質的な能力は再現できていないが、耐久値は格段に上である。

 俺は、魔道書を展開した。

 足りなければ補えば良いという精神である。

形状実装(リード)

 表面に肉眼で確認できないレベルで魔法陣を刻み、魔道書の知識と照らし合わせた。

 魔法陣は、これで再現は出来たが、まだ改良の余地があると訴えていた。

 それには鎧の表面積が足りなかったが、幸い、ベヒス嬢が身につけていた剣の形状は覚えていた。

PVが50000、ユニークが7000をついに突破しました。

これも皆さんの御蔭です。

感謝の極み、ありがとうございます。

以前から何だろうと思っていたランキングなるものの実装方法を知ったので各頁表示は鬱陶しいと思ったので目次のみに表示する様にやってみました。

これからもヌルヌルと執筆していきますので宜しくお願いします。

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