表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/33

第3話 真実を知った二人は悶える(※両視点あり)

 リュート・アークライトとして生きてきて15年。

 今日は、これまでの人生で最も衝撃的な一日だった。

 前世の記憶を思い出した。

 しかも、婚約者も同じ状況だった。


「まさか、紅羽がクレハに転生していたとはなあ……」


 クレハと会い、お互いに前世の記憶を思い出したと打ち明けた日の夜。

 俺は自室のベッドで仰向けに寝転んで、今までのことを思い出していた。

 5年もの間クラスメイトで、なんだかんだ一緒にいることが多かったけど、いつも口喧嘩ばかりしていた犬猿の仲の腐れ縁、種崎紅羽。

 前世では、いがみ合っていた俺たちではあった。

 けど。


「……実は好きだったんだよな、紅羽のこと」


 そう。前世の俺は、種崎紅羽のことが好きだった。

 でもなんとなく恥ずかしかったり、向こうが何かと突っかかってきた結果、素直になれずに言い合っていた。

 記憶が蘇ってすぐ、心残りだったのは紅羽に気持ちを伝えられないまま死んだことだったが……二人揃って転生していたとは驚きだ。


「やっぱり、同じタイミングで事故に遭ったからか……?」


 あの時紅羽も死んでしまったのは、残念だ。

 けど、考えようによっては、役得かもしれない。


「前世で好きだった相手が、転生したら婚約者って……悪い話じゃないよな。正直、今も大好きだし」


 紅羽=クレハだと分かったら、更に好きな気持ちが強くなってきた。

 転生しても一緒とか、何か運命的なものすら感じてしまう。

 一つ、問題があるとすれば。


「前世では俺の完全な片思いだったんだよなあ……」


 日常的に口喧嘩していただけあって、紅羽の方からは好意的な素振りは一切見受けられなかった……と思う。

 下手したら、嫌われていた可能性だってある。

 転生してからは仲の良い婚約者として一緒に生きていたが……記憶が蘇ったら、話が変わってくる。


「最悪の場合、振られるかも……!?」


 婚約解消。

 それだけは、避けなければ。

 俺は前世の紅羽も、今のクレハも好きなんだから。


「でも、明日からどんな顔して会えばいいんだ……」


 喧嘩していた前世の記憶といちゃいちゃしていた今世の記憶が混ぜ合わさって、極限の羞恥心を生み出していた。

 頭を抱える俺だったけど、その夜答えが出ることはなかった。



 クレハ・フラウレンとして生きてきて15年。

 今日はこれまでの人生で、最も衝撃的な一日でした。

 前世の記憶を思い出しました。

 しかも、婚約者も同じ状況でした。 


「まさか、竜斗くんがリュートくんに転生していたなんて……!」


 リュートくんと会い、お互いに前世の記憶を思い出したと打ち明けた日の夜。

 私……クレハ・フラウレンは、フラウレン家の屋敷にある自室のベッドにいました。

 枕を抱きしめながらうつ伏せになって、今までのことを思い返します。

 5年もの間クラスメイトで、何かと一緒にいる機会が多かったけど、いつも口喧嘩ばかりしていた犬猿の仲の腐れ縁、大白竜斗。

 前世でいがみ合っていた私たちではありました。

 けど。


「……実は私、竜斗くんのこと好きだったんですよね」


 そう。前世の私は、大白竜斗のことが好きでした。

 でもどこか恥ずかしかったり、彼が何かと突っかかってきた結果、素直になれずに言い合っていました。

 記憶が蘇ってすぐ、心残りだったのは竜斗くんに気持ちを伝えられないまま死んだことでしたが……二人揃って転生していたとは驚きです。


「やはり、同じタイミングで事故に遭ったからでしょうか……?」


 事故に遭う直前、竜斗くんが私を庇うように抱きしめてくれたことは、昨日のことのようによく覚えています。

 結果として、あの時は二人とも死んでしまいましたが……不謹慎ながら、最期に少しだけ良い思いができました。

 それはともかく、今回のことは考えようによっては役得かもしれません。


「前世で好きだった相手が、大好きな婚約者に転生していたなんて……これはもう、奇跡とか運命の類に違いありません……!」


 竜斗くん=リュートくんだと分かったら、好きな気持ちがいっそう強くなってきました。

 ただ、一つだけ問題があるとしたら。


「前世では、私の一方的な片思いだったんですよね……」


 日常的に口喧嘩していただけあって、竜斗くんの方からは好意的な素振りは一切なかった……はずです。

 もしかしたら、疎ましく思われていた可能性だってあります。

 転生してからは仲の良い婚約者として過ごしてきましたが、記憶が蘇ったとなると、話が変わるかもしれません。


「最悪の場合、振られてしまうかも……!?」


 婚約解消。

 それだけは、避けなければ。

 私は前世の竜斗くんも、今のリュートくんも好きなのですから。


「でも、明日からどんな顔して会えばいいんでしょう……」


 喧嘩していた前世の記憶といちゃいちゃしていた今世の記憶が混ぜ合わさった結果、とてつもない羞恥心が生み出されます。

 胸が締め付けられる気持ちを抱えながら、両足をバタバタと上下させる私でしたが……その夜答えが出ることはありませんでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ