アンドレア戦域 第90話 帝国近衛兵団22
エランの帰還
エリー機動大隊現地配備、14日目夜。
エリー達が、バレット市を出てから39時間ほど経過している。
エリー達は人身売買組織から少女達を救出後、ブラウン商会施設に帰り休息していた。ビアの視線があれからエリーから離れない。
「なぜ、あのようなお力を隠されていたのですか? 皇帝陛下として皆の前で誇示すべきものです」
エリーは呆れたように言う。
「政治にはいろいろあるのですよ。愚かな皇帝の方が皆が幸せな場合もあるのです。察しなさいよビアさん」
そう言ってエリーは、コップに水を注ぎ口に運び飲み干す。
ビアがエリーを見て微笑み言う。
「エリー様、そろそろ夕食のお時間ではありませんか?」
エリーは少し間をおいて言う。
「ビアさん、今日は会わせたい者がいるのです。その者と今日は一緒に食事をしますから待っているのですよ」
ビアは直ぐに頭を下げる。
「申し訳ありません。そうですよねエリー様がお食事を忘れることなど有りませんよね」
そうして施設の入口付近で複数人の声がする。それを聞いてエリーは椅子から立ち上がり嬉しそうな顔をする。
「帰って来たみたいです」
そう言って食堂から廊下に出て行った。
食堂にはビアが1人残されてキッチンのボーグと目が合いお互い微笑んだ。
ビアが微笑み言う。
「ボーグさん今日のメニューは何ですか?」
「ハンバーグと山菜キノコ煮込みですね」
ボーグがビアに微笑み言った。
「美味しそうですね。楽しみです」
ビアは微笑み返して答えた。そしてボーグがビアを見て言う。
「しかし、ビアさん相当の美人なのに嫌味が無いですね。普通は私など話も出来ませんよ」
ビアが少し嬉しいそうに言う。
「とんでもないです。ボーグさんのほうが遥かに凄いお方ですよ。エリー様の胃袋をガッチリ掴まれていらしゃいますよね。私など取柄が有りません。羨ましい限りです」
食堂の入口にエリーが微笑みビアに声を掛ける。
「ビアさん、紹介します。こちらが妹のエリーです!」
ビアが視線を向けるとそこにはエリーと同じ顔の連邦国軍の軍服を着た女性が立っている。ビアは一瞬眉を顰めてそして、戸惑った顔をする。
ビアが2人を見て言う。
「妹・・・・・・? どう言うことでしょうか? 理解出来ないのですが」
エリーがビアのそばに寄って言う。
「私達は、姉妹なのです。帝国皇帝が姉のエラン、そして妹が連邦国軍のエリーなのです」
ビアは2人を見比べて、諦めたように言う。「理解が追いつきません! 勘弁してください」
そしてエリーはビアを椅子の座らせて言う。
「落ち着いてください」説明しますね」
エリーが椅子に座ると隣にエランが座った。そしてエランが微笑み言う。
「ビアさん、無事に目覚めて良かったです」
ビアは混乱した様子のまま言う。
「確認したいのですが・・・・・・」
エリーとエランが微笑みビアを見つめる。
「連邦国軍の軍服を着ているかたがエリー様。こちらの白のワンピースのかたがエラン様ですね」
ビアはとりあえず2人を見て言った。
エリーがビアを見て意地悪顔をして言う。「残念違いますね」
エランが嫌な顔をしてエリーに言う。
「エリー、あなたスキルを使っていますね。それでは無理と思いますよ」
エリーがエランを見て口を緩めて笑う。
「お姉様の全ては、もう私の中に記憶されています。いつでもスキルを発動すれば偽装は出来ます。そうですね意地悪はやめましょう」そう言ってエリーはエランの魔力波動を解除する。
そしてエリーの雰囲気が少し変わって見えてくる。ビアが2人を見比べて言う。
「よく見ると、お二人は何となく違います。軍服のかたがエラン陛下です。間違いありません」
エランが微笑み言う。
「ビアさん、正解です」
ビアが少しガッカリした顔をして言う。
「では、賊を倒されたのはエリー様なのですね」
エリーがビアを見て頭を下げる。
「ごめなさい。騙したみたいで・・・・・・、でも説明したらややこしくなるから、流れに任せてね・・・・・・わかってください」
ビアはとりあえずエリーを見て言う。
「はい、そうですよね。説明されてもたぶん信じなかったと思います」
エリーが立ち上がり声を上げる。
「みんな終わったよ。入って良いよ」
食堂にトッド、ライラ憲兵大尉、モニカが入って来る。ビアが一瞬顔を強張らせる。
エランが微笑み言う。
「みなさん、私たちの味方です。警戒は無用ですよ。ビアさん」
エランはビアを見て言う。
「トッドさんがいなかったら、私達4人は生きていなかったのです。命の恩人なのですから敬意をはらいなさい」
ビアは立ち上がり3人に姿勢を正し敬礼する。「帝国近衛大尉、ビア マクミランです。よろしくお願い致します!」
3人はそれぞれ頭を下げて名乗る。
「トッド ウォールです。一応諜報の中佐ですが、エリー様の護衛をしております」
「第2軍管区憲兵隊、大尉! ライラ イグリーです。エリー様の連絡担当をしております」
「諜報一課、中尉、モニカ バーンズです。今回、エラン様の護衛を担当しております」
モニカが名乗るとビアが白の眼帯を凝視する。エランが直ぐに言う。
「ビアさん、モニカさんは顔に負傷しているから眼帯をつけているのよ。だから外せないのよ」
ビアは直ぐに言う。
「すみません」そう言って頭を下げた。
エリーは全員を見渡して言う。
「それでは食事にしますか?」
エランが直ぐに答える。
「ごめんさなさい。シャワーだけでもよろしいかしら」
エリーが少し嫌な顔をして言う。
「あゝ、そうだね。お姉様・・・・・・。じゃあ、さっさと行って下さい!」
エランはその言葉を聞いて少し寂しそうな顔をして入口へと向かった。
エリーは直ぐにエランの後を追い肩に手を回して言う。
「お姉様、じゃあ、一緒に行きましょう!」エランは嫌な顔をしてそのまま歩いて行く。そして、2人はそのまま食堂から出て行った。
2人を見送り、ビアがポツリと言う。
「エリー様は血統者なのですね。ベランドル王族の生き残り・・・・・・、あのベランドル動乱で王家血統者は、エラン様以外全員死亡したと聞いていましたが・・・・・・」
トッドがビアの顔を見て言う。
「ええ、エリー様はベランドル王家の第2王女です。燃え盛る王城から数人の従者により救出脱出されたそうです。あまりに幼なかったので記憶は無いそうですが」
ビアがトッドの顔を見上げて言う。
「これから帝国はどうなるのでしょうか?」
トッドは微笑み言う。
「これから・・・・・・、さあ、私にはわかりかねます」
◆◇
ここは帝国領バーグア市、帝国軍第三軍司令本部、司令官室。
マーク中将が執務机の椅子に座り机の反対側のミリアを見てポツリと言う。
「ついに動くか・・・・・・、準備はどうか」
ミリアは机に寄って小声で言う。
「はい、商会の精鋭部隊2個大隊が義勇兵として参加するようです。我々第三軍は先ずは、支持を表明する。直ぐに全土に国家非常事態宣言が発令される予定です。失敗した場合は傍観すれば良いとのことです」
マーク中将はミリアに頷き言う。
「そうか、わかった。それで時期はどのくらいなのだ」
ミリアはマーク中将のそばにより耳元で呟く。
「あゝ、思ったより早いな。了解した」
マーク中将は椅子から立ち上がり窓の外を見て言う。
「私も出来れば参加したかったが・・・・・・、仕方ない」
ミリアがマーク中将の背中を見て言う。
「成功を祈りましょう」
マーク中将は外の街灯で照らされた景色を見ながら頷く。
「あゝ、成功を祈ろう」
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