アンドレア戦域87 帝国近衛兵団19
エリーはエランになりすましてビア近衛大尉を騙した。
エリー機動大隊現地配備、14日目午後。
エリー達が、バレット市を出てから33時間ほど経過している。
エリーはイグラの商会施設内食堂にいた。人身売買組織を壊滅させたあと、エリーはユーリと別れ1人商会施設に帰っていた。
昼食を済ませたあと、おやつのパンケーキを調理担当者にオーダーして一旦部屋に帰り、仮眠をとって時間になったのでまた食堂にやって来た。エリーはいつものようにぼーーっとして時間を過ごしていた。
エリーは壁を眺め思った。(そうだ。ユーリさんベルニス王国の近衛副隊長の娘さんだったんだよね。今は帝国属国、一応国名は残っているけど帝国行政官が支配している。どうにかならないかな?)
そして、エリーのテーブルにパンケーキが運ばれて来た。調理担当者がハチミツを掛けて言う。「エリー様、ミルクティーでよろしいですか?」
エリーは嬉しそうにパンケーキを見て言う。「はい、お願いします」
調理担当者は頭を下げてキッチンへと去って行った。
エリーは嬉しそうにパンケーキをナイフで切り分け、フォークで突き刺してしばらく眺めてから口に放り込む。調理担当者が横に来てミルクティーをテーブルに置いた。エリーは調理担当者を見て微笑み言う。「やっぱり! ボーグさん美味しいよ。私の専属になれないのかな? お父様に相談してみようか」
調理担当者ボーグは顔を少し強張らせて言う。「わたし程度の腕前でそんな事になったら、それこそ他のブラウン商会料理人にボコられますのでこ勘弁下さいませ」そう言って料理担当者ボーグは深く頭を下げた。
エリーは残念そうな顔をして調理担当者ボーグを見て言う。
「ええ、わかりました。残念ですが、ボーグさんが困るのならしょうがないです・・・・・・」
食堂の入口からエリーを呼ぶ声がする。
「エリー様、少しよろしいでしょうか?」商会の医療担当官だ。エリーが医療担当官顔を見て言う。
「なんでしょう?」
医療担当官はエリーの近くまで来て頭を下げる。
「エラン様の護衛担当者なのですが。女性が意識混濁から戻ったのですが、エラン様に会わせろと少し騒ぎまして警備担当と揉めておりまして・・・・・・それで、エリー様に来て頂ければ落ち着くと思うのです」
エリーは少し考えて言う。
「はい、わかりました。案内して下さい」
エリーは医療担当官について施設の地下の医療ブロックに移動した。隔壁扉の警備担当者がエリーに頭を下げる。
「エリー様、少し気が立っています。注意して下さい」
もう1人の警備担当者がエリーの前に出て廊下を進む。奥の部屋に着くとドアをノックして鍵を解除してドアを開けた。
エリーは直ぐに魔力波動を通してエランの波動を再現する。そして部屋の奥の女性を見つめて声を上げる。
「ビアさん! ゴメンなさい!」
そして近寄り肩に両手を添えてビアのグリーンの瞳を見つめる。ビアの瞳は細かく痙攣したようになり潤んでいる。
「陛下・・・・・・、ご無事で・・・・・・」
ビアは床に跪き頭を深く下げる。
「私は・・・・・・なんの役にも立てず」
エリーはビアの頭に手を添えて赤色の髪を優しく撫でながら言う。
「あなたは頑張ったわ、命を懸けで私を守ろうとした。結果的に助かったのだからよかったです」
そしてエリーは、ビアにその後の経緯を若干の嘘を混ぜながら説明した。当然エランがいまいない事は言っていない。そして目の前の人物がエリーである事も言える訳が無い。混乱を避けるためだ。
エリーはビアを見て思った。(この人かなり目立つなぁ。美人過ぎて護衛には向いてない。強さはそこそこだけど・・・・・・)
エリーはビアに、あとの2人も順調に回復しているとも伝えた。
ビアがエリーを見て少し遠慮したように言う。
「エラン陛下、少し幼くなられたような気がします。たぶん気のせいと思いますが」
エリー少しビアから離れる。(わかるの・・・・・・? お姉様の記憶帯から雰囲気を魔力再生したのだけれど、まあこのまま行くしかないです)
エリーは顔を傾けて微笑み言う。
「ビアさん、お風呂でも入って下さいね」
そう言ってエリーはビアの手を優しく掴んで医療区画から出って隔壁扉の前に来る。警備担当者がエリーを見て頭を下げて言う。「エリー様、終わられたのですか? では扉を開けますのでお待ちください」
ビアがふ怪訝そうな顔をしてエリーを見る。エリーは微笑んビアを見て言う。
「ここでは私はエリーと呼ばれています。気にしないで、あなたも私のことはエリーと呼びなさいね」
ビアがハッとして呟く。
「はい、申し訳ありません。エリー様」
エリーとビアは階段を上がり地上区画に出て、一階の女性専用区画に入る。
エリーがビアの顔を見て言う。
「着替えを準備して来ます。ビアさんはお風呂に入っていて下さい」
そう言ってエリーが離れようとするとビアがエリーの手を引っ張る。
「陛下にそのようなことをさせる訳には行きません」
エリーはビアの手を優しく振り解いて言う。
「良いですよ。ここは皇城ではありません。私に任せなさい。あなたは場所もわからないでしょう。早くお風呂に入ってキレイにして下さい! 少し臭いますからね」
ビアは直ぐに深く頭を下げる。
「陛下がこのようなお優しい方とは・・・・・・噂は、大嘘でございました」
ビアは感動で顔を下げたまま上げる事が出来ない。
「良いから、お風呂に入って下さい」
エリーがビアの体を支えて起こした。
「申し訳ありません・・・・・・、ではお言葉に甘えさせて頂きます」ビアはよろめきながら浴室へ入って行った。
エリーはとりあえず下着と着る服を準備する。新品の下着と服はユーリさん用のワンピースを持って行く。(身長はユーリさんと同じくらいだよね。体型は若干ボリュームはあるけど大丈夫だよね)
エリーは浴室の洗面スペースに入って着替えを置いて声を掛けた。
「ビアさん、着替え置いて置きますね」
そしてビアが浴室から洗面スペースに出て来た。エリーと目が合って頭を下げる。
「申し訳ありません!」
エリーはビアの体を見て言う。
「バランスの良い体型ですね。修練をキチンとこなしているのがわかります」
そう言ってエリーはビアにバスタオルを渡して微笑み洗面スペースから出て行く。
エリーは食堂で椅子に座って待っているとビアが着替えてやって来た。
「申し訳ありません」そう言ってビアは深く頭を下げる。
エリーは立ち上がり言う。
「ビアさん、パスタで良いですか? お腹減ってますよね」
エリーはキッチンスペースに移動してボーグにパスタをオーダーしてコップに水を注ぎテーブルに持って来る。
「どうぞ! お水です」
ビアはびっくりして立ち上がり言う。
「ありがとうございます! 申し訳ありません」
エリーは意地悪い顔をして言う。
「ビアさん、そんなに気を使う必要はありません。私が好きでやっているのですからね」
ビアは少しためらいながら言う。
「はい、そうなのですが・・・・・・、気持ちが落ち着きませんので、どうにも」
エリーはビアの肩に手を優しく添えて言う。「ビアさん、どうしてそんなに気を使うのですか? ここにいる間は気を抜いて気楽に行きましょう!」
ボーグがパスタをテーブルに置いて頭を下げる。「ビアさん、どうぞお召し上がりください」そう言ってキッチンスペース戻る。
エリーはビアを見て微笑み言う。
「食べてください」
ビアは頭を下げる。
「はい、頂きます」そう言ってビアはパスタをフォークで時計回りに撒き付けて、口に運ぶ。「えーーっ! 美味しい!」ビアが思わず声を漏らした。
エリーが調理担当のボーグに微笑み言う。「ボーグさん良かったね。美味しいって」
ビアはあっという間に皿のパスタを平らげた。
「ご馳走様でした」そしてビアは深く頭を下げた。
「お代わり出来ますよ」
エリーがビアの顔を見て言う。
「いいえ、十分です」
ビアは慌てて答えた。
そこへ、ユーリの大きな声がする。
「エリー様! お手伝いをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか」
ユーリが食堂に慌てて入って来る。
「ユーリさん、そんなに慌ててどうしたのですか?」
エリーがユーリの顔を見て微笑み言った。
ユーリはエリーの横に来て頭を下げて言う。「申し訳ありません。実は人身売買組織の情報が入りまして、エリー様にお助け願いたいのです」
反対側に座っているビアが不思議そうな顔をする。ユーリはビアの顔を見て微笑み言う。「あなた、やられたままじゃあ嫌よね?」
ビアは戸惑った顔をして言う。
「あなたは、どなたですか? お初にお目に掛かると思うのですが」
ユーリは頭を下げて言う。
「私はエリー様の護衛を担当しているユーリです。立場はあなたと同じですね。どうぞよろしくお願いします」
ビアは困惑して言う。
「ユーリさん・・・・・・、はい」
ユーリはビアに手を出して握手を求める。「とりあえず味方ですから、よろしくお願いします」そしてビアはユーリと握手した。
そして、ユーリは直ぐにエリーに言う。
「今日の夕方、少女達がイグラを立つのです」
エリーは椅子から立ち上がり言う。
「それは売られて行くと言う事ですか?」
ユーリは悲しそうに言う。
「はい、今日捉えた者から得た情報です」
エリーは少しためらいながら言う。
「その少女は何人くらい、いるのですか?」
ユーリは直ぐに答える。
「はい、5人ほどです」
エリーは視線を下げて言う。
「そうですか、ユーリさんは助けたいですか?」
ユーリは少し機嫌の悪い顔をして答える。「エリー様なぜ? そのようなことを聞くのですか? 助けたいに決まっています」
エリーは真剣な顔をしてユーリを見て言う。「それはベルニス王国に関係あるのですか?」
ユーリは直ぐに答える。
「いいえ、違います。人身売買が許せないからです」
エリーはユーリの顔を見る。(ユーリさん、らしくないな、どうしたんだろう)
エリーはユーリの手を握って言う。
「わかりました。行きましょう。でも、少女達がとても正常な精神状態でいるとは思えません。ですので覚悟はしておいて下さいね」
ユーリは頷き言う。
「はい、十分理解しております。ですのでエリー様のスキルを使用して頂きたいのです」
エリーがユーリを見て微笑み言う。
「あゝ、そう言うことですか。理解しました。確かにそれならなんとかなりますが、ですがそれは崇拝者を作ることになるんですよね・・・・・・」
ビアは話について行けず呆然と2人を見ている。
ユーリがエリーを見て微笑み言う。
「1時間後に出発しますのでよろしくお願いします」
エリーは少し嫌な顔をして言う。
「はい、了解しました」
そしてユーリは頭を下げて食堂から出て行った。
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