アンドレア戦域85 帝国近衛兵団17
人身売買組織壊滅作戦。
エリー機動大隊現地配備、14日目午前中。
エリー達が、バレット市を出てから28時間ほど経過している。
エリーはエランが出掛けている間イグラで過ごすことになっている。同一人物が2人いては、あとあと面倒な事になるからだ。
エリーは食堂でユーリと向かい合わせに座り、おやつのクッキーと紅茶を楽しんでいた。ご満悦なエリーを見てユーリが少し不安そうな顔をして言う。
「エラン様は大丈夫でしょうか?」
エリーはユーリを見て微笑み返して言う。
「私のお姉様だよ。大丈夫に決まっていますよ。問題はありません」
エリーが少し悪い顔をしてユーリを見る。ユーリは目を逸らして言う。
「なんでしょう? 何か良からぬことをお考えでは無いでしょうね」
「エランお姉様を襲った集団が使ってた魔導具なんだけど、色々いじってみたんだけどね。それで実戦で試したいの」
ユーリが少し驚いた顔をして言う。
「実戦とはどう言うことですか?」
「イグラの南東地区て治安が悪いらしいだけど、そこで誘拐とかの人身売買組織が暗躍しているから潰すんだよ。噂では帝国の諜報も紛れているとか」
エリーが嬉しいそうに言った。ユーリは少し考えて言う。
「はい、お供いたします」
「じゃあ、着替えようか」
エリーはユーリに言った。服装は少しキレイめの商家のお嬢様風にコーデする事にした。ポーチ内に例の魔道具を収納する。
ユーリは用心のため太ももにナイフを着用した。
紫色のロング丈のワンピースに着替えたユーリを見てエリーが嬉しいそうに言う。
「ユーリさんキレイで可愛いね。どう見ても私のちょっと上にしか見えないよ。誰も30才なんて思わないね」
ユーリが悲しそうな目でエリーを見て言う。「エリー様、私は30才ではありません。まだ29才です」
エリーが申し訳なさそうに言った。
「あゝ、ゴメン、29才だったんだね。ユーリさんキレイだから歳なんて関係無いよ」
ユーリは微笑んでエリーを見て言う。
「ありがとうございます。美しさではエリー様にとても敵いませんが、お褒め頂き嬉しいです」そう言ってユーリは頭を下げた。
そして商会施設からドノバン憲兵曹長の運転する憲兵車両で南東地区付近まで移動して、そこから歩いて地区内に入った。
ユーリがエリーに寄って言う。
「商会の手の者を周辺に忍ばせております。お気になさらず」
エリーがユーリを見て言う。
「どうりでこちらに気配は感じるけど敵意が無いと思ったよ」
南東地区は他の地区とは雰囲気が全然違う。空気もどんよりして異臭が漂っている。
エリー達の前に3人組の男達が現れる。
「お嬢さん達どうしたんだい、ここはそんな身なりお嬢様が来るところでは無いんだが? 道に迷ったんだろう。俺たちが道案内して連れ出してやるよ」
そう言って男達は下品に笑った。
エリーは男達を見て言う。
「本当ですか。ありがとうございます。では道案内をお願いします。親切な方にお会い出来て良かったです」
そしてエリーは頭を下げた。
「じゃあ着いてきな!」
男達に着いて行くとどんどん奥に入って行く。エリーは少し不安そうな顔をして言う。
「あの、すみませんが。道が違うような気がするのですが」
男達のひとりが言う。
「大丈夫だよ。もう少しだから」
そして汚い裏通りを抜け、少し大きな通りの3階建ての建物の前に来た。
「ここだ! 入りな!」
エリーがびっくりしたように声を上げる。
「えーーっ! どう言うことですか」
男達がエリーとユーリを無理矢理建物の入口から建物内に押し込む。
男が薄笑いを浮かべて言う。
「育ちの良いお嬢様は本当、楽勝だぜ!」
昼間でも薄暗い建物内部には男達の仲間がすでにいた。そして更に上の階から降りて来て人数が増える。
エリーが怯えたように言う。
「ここはどこですか? 私達を帰してください。お願いします」
上の階から降りて来た大柄の筋肉隆々の男がいやらしい笑みを浮かべて言う。
「お前ら良くやった! かなりの上玉だ! こりゃあ高く売れるぞ! しかしこんな上玉がホイホイ着いて来たな?」
エリー達を案内して来た男が薄笑いを浮かべて言う。
「お頭! 道に迷ってる所を連れて来たんですよ。使用人と逸れた見たいですよ」
大柄の筋肉隆々の男は嬉しいそうに笑って言う。「そっちの紫色髪の女は最初にお前にやらせてやる。茶髪の女は俺がもらうからな」
エリーは声を上げる。
「私達は・・・・・・どうなるのですか! 助けてください。お願いします」
頭が笑いながら言う。
「2日くらいここで可愛がってから他国に売り飛ばす。もうお家には帰れないぜ。まあ、精神が正常に保てなくなるからどうでも良くなるよ」そう言うと周りの男たちも一斉に笑う。
エリーが男を睨み声を上げる。
「あなた達は人身売買組織なのですか? 罪の無い女性を弄んで売りさばく輩なのですね」
「そうだ! 中々の元気が残っているみたいだな。おい、お前ら! このお嬢さんたちの服を剥ぎ取れ!」
男達が薄笑いを浮かべ5人ほどがエリー達2人に距離を詰める。
ユーリが声を上げる。
「エリー様! 如何されますか? 処分致しますか?」
エリーが少し考えて言う。
「どうしようか、この人たちもう罪人だしね! でも今後利用するかな。じゃあ半殺し程度でお願いします」
ユーリが頷き手刀を構える。そしてユーリが前に出ると5人の男達が呻き声を上げて後ろに吹き飛んだ。
頭が2人を見て驚いたように言う。
「お前らどこの組織の人間だ! ガンダ達をやったのもお前らか!」
エリーは思った。(あゝ、トッドさんが切り捨てた連中だね。トッドさんは容赦無いからね。ほんとみんな即死だったみたいだしね)
エリーは首を傾げて微笑み言う。
「私達では無いですが、仲間です」
頭が引き攣り男達に指示を出す。
「お前ら、こいつらはヤバイ! ガンダをやった奴らの仲間だ。早く魔導具で対処しろ!」
男達は直ぐに電撃棒を取り出し、伸ばして構える。人数は上の階から更に降りて来て20人ほどはいる。30畳ほどスペース男達が溜まり汗臭い。
エリーが少し嫌な顔をして言う。
「今、私達に従えば、痛い目に遭わなくて済みますが、どうしますか?」
頭が強張った顔で言う。
「馬鹿か、そんな訳あるか。お前らを潰す。この人数で余裕だな」
「潰せ! 掛かれ!」
そして男達10人がエリー達を取り囲む。エリーはポーチから電撃棒を取り出して伸ばした。そして魔力を通すと電撃棒が白く輝き光に包まれた。
それを見て頭が驚いて言う。
「お前ら帝国の奴らか! 俺達が邪魔になって潰すて事か! 散々利用して置いてこの仕打ちか!」
エリーが電撃棒を上段に構えて男達を見据えて言う。
「あなた達は帝国と関係があるのですね」
頭が呆れたように声を上げる。
「何とボケたこと言ってやがる。その魔導具を持っているのに・・・・・・お前ら帝国の諜報だろう」
そして周りを囲んだ男達が一斉に踏み出し電撃棒を振り下ろした。それと同時にエリーは周囲に物凄い速度で斬撃を放った。
次の瞬間男達は、無惨に空中を悲鳴を上げながら舞って行く。それを呆然と目を見開いて見つめる頭。
男達の半分が一瞬のうちに倒れた。頭は驚愕の表情を浮かべエリー達を見ている。
エリーはユーリを見て言う。
「どうですか? 剣なら死んでますけど、これなら殺さず、かなりのダメージを与えられます」
ユーリが電撃棒を左中段に構え魔力を流す。電撃棒が白色の光に包まれる。後ろ側にいた男達は恐怖で前に出ることが出来ない。エリーが電撃棒で叩きのめした男達が痙攣して床で呻いている。
この電撃棒は本来は本体のマナエナジー収納パックで電撃攻撃を行なうものだった。だから魔法適性者で無くても使用出来る魔導具だ。それをエリーは電撃棒の魔導回路を改修して、使用者の魔力波動を流せるようにしてより汎用性を高め、電撃も周囲に拡散攻撃出来る。そして電撃波動を常に纏うことも出来る。
頭は躊躇している男達に声を上げる。
「テメエら! とっとと掛かれ! 上から助っ人を呼んだ。時間稼ぎくらいしろ!」
エリーが微笑み言う。
「ユーリさん、ちゃちゃと片付けましょう。まだ残りがいるみたいですよ」
ユーリはそれを聞いて踏み出し斬撃を放った。頭の前にいた男達が一瞬で倒れ込んだ。頭はうしろへ慌てて下がる。
エリーは階段から魔導反応を感知する。すると直ぐにその反応はエリー達に猛烈な速度で一撃を入れて来た。エリーは瞬間的に魔力量を増大させ電撃斬撃を放って、ぞの斬撃をいなした。
一撃を入れて来た黒髪短髪の男は直ぐに体制を整え間合いをとった。
男は冷たい目でエリー達を見つめている。
頭が安心したように短髪の男に言う。
「シールズさん! 頼むぜ! こいつら女だがかなりやる。俺達じゃあ歯が立たない」
短髪の男は冷静な口調で頭に言う。
「この2人只者では無い。 頭、お前は何をやった。こんな者達を敵に回して未来は無いぞ。俺は降伏を進める。だが、それを相手が認めてくれればだが? しかし逃げようにも、逃してくれんだろうなぁ。つまり我々には死しかないと言うことか」
頭が驚愕した顔で短髪の男シールズを見る。
「シールズさん・・・・・・あんたでも無理なのか?」
短髪の男は頷き言う。
「あゝ、こんな震えが来るような相手は初めてだ。さっきの一撃だって本気だったら俺はもうここにいない」
頭は短髪男の近くまで下がり震えながら言う。
「あの可愛らしい外見で中身はとんでもない化け物て事か!」
短髪の男シールズが喉を鳴らし言う。
「あゝ、とんでもない魔力量だ! 俺など敵では無い。だが黙って殺されるつもりも無い」
そう言って短髪の男は剣を上段に構え魔力を通す。
エリーは電撃棒を右下段に構えて短髪の男に微笑む。
「あなたどこの剣士ですか。野党や盗賊では無いようですが。私達の技量は見切れるレベルの方と察します・・・・・・、まあいいでしょう」
そう言ってエリーは一歩踏み出して斬撃を放った。そして大柄で筋肉隆々の頭が悲鳴を上げて壁に打ちつけられた。
それを見て短髪の男シールズは階段まで下がり間合いをとる。
「あゝ、勘弁だぜ。こんなの勝てるわけが無い」
エリーが短髪の男を見て言う。
「どこの国の剣士ですか? 見たことの無い剣筋です。そして、きちんと修練した剣技です」
短髪の男は少し諦めたように言う。
「ベルニス王国、元近衛隊シールズだ。お前らはほんとに帝国の諜報か? こんな凄腕がいて、なんでこんなに戦争を苦労している」
短髪の男は一瞬考えて言う。
「あゝ・・・・・・、お前ら連邦国の裏組織か? 最近とんでもない奴らがいるって噂だ。そうか理解した。俺も運が無いな・・・・・・」
エリーは短髪の男に微笑み言う。
「ベルニス王国は帝国の属国ですね。確か軍事侵攻を受けて王国は服従したと聞いていますが。あなたは王国近衛隊の生き残りなのですね。どうりで並の強さでは無いと思いました。普通の剣士なら、あなたの一撃で死んでいたでしょうね」
ユーリがエリーの前に出て声を上げる。
「ベルニス王国近衛隊ですか、ならガルフを知っていますか!」
短髪の男は一瞬驚いて声を上げる。
「なぜ、副隊長の名前を知っている!」
ユーリは頷き言う。
「私は、ベルニス王国出身です。そしてガルフは私の父です」
隣のエリーが驚いた顔をしてユーリを見る。エリーは思った。(ユーリさんの過去は詳しく知らなかった。お父様に聞いても教えてくれなかったのに! そうなのベルニス王国出身だったんだ)
短髪の男シールズは剣を前に投げ捨て言う。「どうにでもしてくれ。副隊長の娘さんにここで会うとは・・・・・・俺もつくづく運の無い・・・・・・」
そしてシールズは跪き頭を下げる。
「申し訳ない・・・・・・あんたの父さんは守れなかった。そして俺だけ無様に生き残った」そしてシールズは床に額をつけて動かなくなった。
ユーリはシールズの肩に手を乗せて言う。「しょうがないことです。しかし、悪事に加担したことは許せません! ですがあなたがエリー様に気持ちを入れ替えて服従するならその限りではありません」
そしてユーリが合図すると、ブラウン商会の数十人の機関員が建物に入って来る。
この日、帝国と関係のある人身売買組織がひとつ壊滅した。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!
これからも、どうぞよろしくお願いします。




