アンドレア戦域79 帝国近衛兵団11
エラン陛下はイグラに着いたが問題が発生する。
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、13日目午後。
エリー達が、バレット市を出てから12時間ほど経過している。
ここは連邦国軍第81師団本部収容施設。エリーは、尋問室内の椅子に座り、机の反対側には皇帝に扮した帝国近衛女性士官が座っている。エリーの後ろの椅子には、ユーリが座って黙って女性近衛士官を見つめている。
あれから、帝国近衛兵団の投降した6人は特戦隊によって連行され第81師団収容施設に収容された。
エリーが女性近衛士官を微笑み言う。
「あなたが、皇帝の替え玉である事はすでにわかっています」
女性近衛士官は怯えた目でエリーを見つめて言う。
「あなたは、なぜエラン陛下のお姿をされているのですか? エラン陛下の素顔を知っているものは、側近と近衛兵団の一部の者たちだけです。なぜそんなに似ているのか私には理解できません・・・・・・」
エリーは椅子から立ち上がり女性近衛士官の横に立ち耳元で囁く。
女性近衛士官は動揺した表情になり、まじかのエリーの顔を見て声を震わせる。
「あなた様は・・・・・・、それならば理解出来ました・・・・・・」
そして女性近衛士官は顔を伏せて震えて言う。「・・・・・・なぜ、敵である。連邦国に味方をするのですか・・・・・・」
エリーは女性近衛士官から離れて背を向けて言う。
「あなたは、お父様やお母様を酷い目に遭わせた者たちに味方しろとおっしゃるのですか⁉︎ それはあり得ない話ですね」
エリーは振り返り女性近衛士官の顔を両手で優しく触り起こして髪を撫でる。
「あなたの髪の色はこの色なのですか? 私と同じ色なのですか? そして瞳の色もこの朱色なのですか?」
エリーは女性近衛士官に微笑み言った。。そして、エリーは魔力を全身に通して薄い紫色の光に包まれて輝き出す。エリーは女性近衛士官をしばらく抱擁してから立ち上がり椅子に座る。
女性近衛士官は落ち着いた穏やかな表情になり、エリーを見つめてゆっくりと口を開く。
「私は、近衛兵団飛行艦隊所属、中尉、ミナです。万が一のためのエレン陛下の身代わり要員であり、そのための容姿を似せるための手術等を受けております」
そしてエリーに頭を下げる。エリーは微笑みミナ中尉を見つめて言う。
「ミナさん、それでお姉様・・・・・・いえ、エラン陛下は何処に?」
ミナ中尉はエリーを見て首を横に振り言う。「私は詳しいことは存じません。ガルシア近衛兵団長にお聞きください」
そう言って立ち上がり頭を深く下げる。
◆◇
ここは連邦国、東の小都市イグラ、人口20万ほどのアンドレア国境付近では一番大きな町だ。エラン達、4人が乗った乗合馬車は、つい先ほどイグラの停留所に着いた。
馬車の客車を降りる際に、連邦国軍の下士官2人は慌てて駆け寄り、再び丁寧に謝罪して去って行った。
エラン達はガルシア近衛兵団長の伝手と接触するため、イグラの東地区を目指す。
「ミナさん、大丈夫ですか? 乗り物酔いとか、気分は悪く無いですか?」
ビアが心配そうにエランを見て言った。
「ええ、気分は悪く無いです。お腹は少し空いていますが大丈夫です」
ビアはエランの手を取り言う。
「ここまで無事に来れました。良かったです。一時はどうなるかと思いましたが」
ムスタングとヒルは荷物を背負いエランとビアの前を歩く。
「どのくらい歩くのですか?」エランが少し不満そうな顔をして言った。
ムスタングが少し申し訳なさそうな顔で後ろを見て言う。
「ここから1時間ほどですね。申し訳ありません。食事でもしたいのですが、お金もあまり無いので・・・・・・、早く接触したいのです」
そうして街中を歩いて4人は裏通りを進んでいると、5人くらいの男達が近寄って来て話し掛けて来た。
「お姉さん達は、何処から来たんだい、西の農村部からかな?」
4人は関わらないよう無視して歩き続けた。そして前を塞ぐように新たに5人くらいの男達が現れる。
「前をどいてもらえますか!」ムスタングが声を上げる。
男達のひとりが声を上げる。
「威勢がいいね、オレ達を見てもそんなこと言えるんだ! 気に入った!」
そう言って、男は合図した。そして男達がエラン達4人を取り囲む。男達はまずまず鍛えられた体つきをしている。全員で12人いた。
「俺たちは、お姉さん達に仕事を世話してあげたいだけだ! 親切心を無駄にするつもりかい」男達のリーダーらしき男がビアを見て笑いながら言った。
ビアはそのリーダーらしき男を睨みつけて声を上げる。
「間に合っている! 結構だ!」
リーダーらしき男がいやらしい笑いを浮かべる。
「言うじゃないか、ますます気に入った!」男が合図すると、男達が棒のようなものを取り出して一斉に伸ばした。
「何か知らないが、かなり自信があるようだがな。オレ達をただのチンピラと思っていたら大怪我するぜ!」
そして男達の持っている棒が白い色に光出す。そして男が笑い言う。
「これは魔道具の一種で電撃棒だ。喰らえば一瞬で気絶するから注意しな」
ムスタングとヒルは戦闘体制を取り、エランとビアの前に入る。ビアはエランの後に周りナイフを取り出して構える。
リーダーらしき男が少し機嫌悪そうに言う。「その雰囲気、素人では無さそうだな! お前ら何処かの諜報か?」
そう言って男が男達に指示を出す。
「こいつら只者ではないぞ! 囲ってひとりずつ確実にやれ、男は殺しても良いが、女は殺すなよ、大切な商品だからな」
男達は4人と距離を詰めて建物の壁側に追い込んで行く。
エランは、最初少し驚いていたが護衛の3人がいるので大丈夫だろうと思って安心していた。こんなチンピラごときに負ける訳がないそう思っていた。
男達5人が電撃棒を構え一斉にムスタングとヒルに振り下ろした。そして次の瞬間ムスタングとヒルが地面に倒れ込み痙攣して口から泡を吹いていた。
「ミナさん! こちらへ」ビアがエランの肩を引っ張り壁へ寄せて前に出た。
エランは前に倒れている2人を見て完全に動揺していた。(えーーっ! こんな簡単に・・・・・・、このムスタングさん、ヒルさんはそれなりに強いはずなのに?)
男達のリーダーらしき男が薄笑いを浮かべて言う。
「思ったより、大したことないよだが、前の女はたぶん、結構ヤルぞ! だがこの人数じゃ持たないか」
ビアがナイフを構えて男達を見据える。男達は電撃棒を構え、仕掛けるタイミングを見計らっている。そして、5人がビアに距離を詰めると一斉に電撃棒を振り下ろした。ビアは上体を後方に逸らし2人を交わし、ナイフでひとりの電撃棒を受けた瞬間、悲鳴を上げてエランのほうへ倒れ込んだ。
「ミナさん・・・・・・うーーっ」ビアの顔は痛みで歪んでいる。そしてエランのシャツを掴んで体を必死で支える。
エランは思った。(なんで・・・・・・、私は帝国皇帝! なんでこんなところでチンピラごときに)
男達のリーダーが言う。
「後ろのお嬢さんは、抵抗する気は無いようだ。前のお嬢さんと一緒に連れて行くぞ! 引き上げるぞ!」
そして3人の男達がナイフを取り上げ、意識が朦朧としているビアを担ぎ上げる。2人がエランの手を引っ張り連れて行こうとした。
その時、路地の角から声がする。
「オイ!!お前たち何をしている!」
そして、声を発した男が薄暗い街灯の下に姿を現す。ダークブルーの軍服右肩にはモールがついている。階級章は中佐だ。腰には拳銃ホルダーと軍刀1本を着けている。
男達のリーダーが中佐を見て言う。
「その軍服は諜報の中佐殿だな。俺たちに関わるな、いくら連邦国軍の中佐殿でもちょっかい出したらタダでは済まさないぜ! とっとと失せな!」
諜報の中佐は男達を見て言う。
「それは無理だな。この状況で下がれば、私は、主に顔向け出来ませんからね」
そして諜報中佐は、軍刀を鞘からゆっくり抜いて構えて男達に言う。
「ここで引けば見逃してやろう! だが引かねば容赦はしない」
男達のリーダーが高笑いを上げて言う。
「中佐殿! 俺たちを舐めるじゃねえ! やれ!」 そして男達10人ほどが諜報中佐の前に距離を詰めて電撃棒を構える。
そして異変が起こった。
諜報中佐が前に出た瞬間、悲鳴と呻き声は上がり、腕や首が空中を舞う。男達が次々と倒れ込んでいく。
男達のリーダーが顔を引き攣らせて諜報中佐を見つめている。あっという間にリーダーの前に距離を詰めていた。
「あんたは何者?」
そして諜報中佐は軍刀を前に突き出して言う。「諜報一課のトッドウォールです」
男達のリーダーは軍刀で胸部を貫かれ剣先は背中から突き出ている。
「うっ・・・・・・!」
諜報中佐が軍刀をリーダーから抜き取ると、男達のリーダーは地面に崩れ落ちた。
エランはその状況を目を見開いて見ていた。(なんという圧倒的な強さ! 私は助かったのか? しかし・・・・・・)
諜報中佐は壁際で呆然としているエランに近寄って来る。エランは身動き出来ず、ただ立ち尽くしていた。
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