アンドレア戦域75 帝国近衛兵団7
女帝エランの捜索は続く
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、13日目午後。
エリー達が、バレット市を出てから6時間ほど経過している。
エリーはあれからユーリと合流して、今はランカーⅡ5号機で、帝国近衛兵団飛行艦隊旗艦ドール号墜落地点付近を飛行している。
エリーは副機長シートに座り、操縦桿を握り機体を操縦している。
「エリー様は、流石ですね。とても2回目の操縦とは思えませんよ!」
機長がエリーに言った。
「褒め過ぎです。勘違いすると怖いからもうやめて下さい」
エリーは少し嬉しそうに機長に言った。
機長が少し厳しい顔をして言う。
「高度は150以下にはしないで下さい」
エリーは直ぐ答える。
「はい、了解です! 下限高度アシスト設定していますから大丈夫です」
ランカーⅡは墜落地点周辺を何回も旋回しながら地上を確認している。
地上には連邦国軍、第75師団の捜索隊が森の中を捜索している。
旗艦ドール号墜落地点には怪我をして動けない近衛兵団将兵が30名ほど残っていた。確認した結果、皇帝と兵団長はこの場から移動して帝国領を目指しているとの事だった。その後の捜索で50名ほど確保捕虜とした。だが依然として皇帝、兵団長の行方は掴めていない。
ランカーⅡコックピット後部席に座っているユーリが言う。
「ルート的にはアンドレア国境付近に戻って帝国領に入るのが現実的なのですが、まさか山越コースは無いと思うのですが」
エリーが操縦桿を握り操縦しながら言う。「そうだよね、皇帝を連れて歩きで山脈は越えないと思うよ」
この地域はアンドレア付近まで国境沿いに400kmに及ぶ2000mから3000m級の険しい山々が連なっているところである。
「連邦国を横断はないよね?」
エリーがポツリと言う。
「とりあえず、もう一回森を周回します」
エリーはそう言って、ランカーⅡを旋回させた。
エリーが機長を見て言う。
「カーターさん、操縦を替わってもらえますか。それで高度を100まで下げてもらえれば良いのですが」
「はい、エリー様、了解しました」
機長が直ぐに操縦を機長側に切替、高度を下げる。エリーはスキル神眼を発動して森を視感する。(おかしい? 皇帝なら魔力が高いから直ぐに見つかると思ったんだけどいないなぁ)
ユーリがエリーに言う。
「アンドレア方面は第80師団で街道筋は抑えていますから問題は無いと思います。山沿いを飛行して確認してみますか? とりあえず昼間は動かないかもしれませんが」
エリーは振り返りユーリを見る。ユーリはエリーの左の真っ赤な瞳を見て一瞬ギョッとして言う。
「スキルでも見つかりませんか? かなりのレベルの魔力隠蔽を使っているのかも知れませんね」
「そうかもね、昼間のうちに見つけたいんだけど」エリーはハッと息を吐き言った。
「カーターさん! 墜落地点から30キロ圏、山沿いを低空飛行してみて下さい!」
エリーは機長を見て微笑み言った。
「エリー様、了解です!」
機長は直ぐに可変翼を調整してランカーⅡの高度を下げ山沿いを低空飛行させる。
◆◇
ここは帝国近衛兵団飛行艦隊旗艦ドール号墜落地点より10キロほどアンドレア方面側、山沿いの森の中。
「先ほどより、上空を巨大なグライダーのような物がバリバリとうるさい音をたてて飛び回っておる。厄介だな・・・・・・」
ガルシア近衛兵団長が呟く。横の近衛士官が言う。
「連邦国軍はあのような飛行兵器を実用化しているとは驚きです。我々には、まだあのように自由に飛び回れるものなど有りません。小型の滑空飛行グライダーぐらいです」
ガルシア近衛兵団長は木の根元に座りメンバーを見つめる。
「夜までは無理だな。もう少し山に入りたいが道が険しい・・・・・・。出来れば半日は稼ぎたいが・・・・・・、ミナ中尉、捕まったらしっかり頼んだぞ」
ガルシア近衛兵団長は皇帝の軍服を着たミナ近衛中尉に微笑んで言った。
「はい、私はエラン陛下に成り切りますのでご安心ください」ミナ近衛中尉はキリッとした表情でガルシア近衛兵団長を見て言った。
◆◇
ここは帝国領バーグア市、帝国軍第三軍司令本部、司令官室。
マーク中将が執務机の反対側に立つブラス参謀長を見て驚いた表情をする。
「今何と! 壊滅したと言ったが?」
「はい、アンドレアの諜報員からの情報です。間違いは無いはずです」
ブラス参謀長は後ろに下がりソファーにゆっくりと座った。
マーク中将の横に立っていたミリアは驚きながら声を上げる。
「帝国近衛兵団飛行艦隊が壊滅とは、アンドレアの軍事力では到底無理と聞いていましたが!」
ブラス参謀長はマーク中将とミリアを見て少し嫌な顔をする。
「ミリア中尉、貴官はずっとここにいるようですが? 部隊に帰られたのですか」
ミリアは微笑み言う。
「部隊は解散となりまして、中央軍参謀部からは、三軍司令本部に残り参謀部連絡士官の任務をすれば良いと言われております。それと申し遅れましたが、本日付けで大尉に昇進致しました」
ブラス参謀長がミリアの階級章を見ると、確かに銀色の星が三つになっている。
「それは失礼した。ミリア大尉、だが貴官は、マーク中将付きでは無いだろう。作戦参謀室の方へ行くべきでは無いのかね」
マーク中将がブラス参謀長を見て微笑み言う。「ミリアは、私付きで良いと中央軍から許可はもらった」
ブラス参謀長はミリアを怪訝そうに見て言う。「貴官と話をしたいのだが、時間はどうかな?」
そこにマーク中将が口を挟み言う。
「私抜きの話は認めん。何んの話か知らんが、ミリアも聞く必要はない」
ブラス参謀長が戸惑った顔をして言う。「マーク閣下! どうされたのですか? このような・・・・・・」
ブラス参謀長がミリアを見て視線を下げる。「わかりました。結構です」
ブラス参謀長はマーク中将に小声で言う。
「皇帝陛下がどうやら行方不明になられたようです。中央からの連絡はいっさい有りませんが、連邦国領内に乗船されていた飛行船が墜落したとの情報です」
マーク中将は目を閉じて言う。
「どうなっている。このような事が起こるとは・・・・・・、中央軍からの情報は無いのかね」
ブラス参謀長は首を横に振った。
「アンドレアに関しては全く情報が有りません。クーデター発生以降の情報が中央軍からは全く無いのです。現状相当混乱しているものと思われますが」
マーク中将はブラス参謀長に背を向けて窓の外を見る。
「しかし、それが事実なら状況は大きく動くな」
「今回の戦闘、連邦国軍が動いたものと思われます。そして壊滅させたのは魔女級の相手と判断しますが、そのような事があるのでしょうか? 魔女は現在この戦域にいますから、魔女は2人いると考えられます。つまり帝国はこの戦争に勝てる見込みが無くなったと言う事です。ひとりでも厄介な魔女がふたりでは、もはやお手上げです」
ブラス参謀長がマーク中将の背中を見て言った。
「そうだな、停戦交渉を急ぐ必要があるな、元老院審議官に工作をしているが、帝国は動きが鈍い」
そう言ってマーク中将はミリアを見て微笑み言う。「ミリア、昼食を食べに行こう!」
「はい、そうですね、お腹が空きましたね」ミリアが微笑み返し答えた。
マーク中将はミリアの腕を掴みドアへと向かう。「ブラス参謀長も一緒にどうだ」
ブラス参謀長は少し嫌な顔をして言う。
「いえ、お邪魔でしょうから、ご遠慮しておきます」そして頭を下げる。
そしてマーク中将とミリアは部屋からで出て行った。
残ったブラス参謀長は、ため息を吐き部屋から出ると廊下を歩く2人を見て呟く。
「何だあの女、何が目的だ」
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