アンドレア戦域72 帝国近衛兵団4
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、13日目午前中。
エリー達が、バレット市を出てから3時間ほど経過している。
ここはアンドレアと帝国の国境平野部の小高い丘の上。
エリーはレンベルのコクピットで魔導徹甲榴弾ライフルの初期照準調整をしている。
〈警告! 兵装システムロック解除! ライフル照準システム相互間リンク確認!〉
システムアナウンスが流れる。
エリーはヘッドギアにライフル照準システムバイザーを装着している。視線を外さずバイザーにデーターが表示されるものだ。
そして無線が入る。
《こちらアンドレア魔導師団、師団長! ブライアンです! 連邦国のご協力に感謝致します!》
ハル少将が無線に答える。
「こちら連邦国軍参謀本部、作戦部長、ハルです! 貴国の同盟参加表明を受け、ご協力致します! なお、戦闘が始まりますので予定通りに連携しての行動をお願い致します」
《ハル閣下! 迅速なご判断には感謝致します! それでは失礼致します》
そう言ってブライアン師団長からの無線が切れる。
エリーはハル少将に質問する。
「アンドレアと何か取り交わしたのですか? 前々から連邦国は動いていたのでは? とにかく話しの進み具合がうま過ぎます」
サブシートのハル少将は直ぐに答える。
「私の立場では知り得ませんが。裏交渉や密約はあったものと思います」
《こちらブルーベリー1号! 予定時刻に投下開始します! 目標進路変更無し! 現在V字隊形にて進行中! 投下完了後、本戦域より速やかに離脱します! 以上!》
ランカーⅡ攻撃隊より無線連絡が入った。エリーはモニターのカウント表示を見て呟く。「あと1分か・・・・・・、こちらも射撃体制に入らないと」そしてエリーはインカムを押しユーリに無線を繋ぐ。
「ユーリさん! 射撃相互間連動システムで撃ちまくりますので、よろしくお願いします!」
ユーリが答える。
『エリー様! 了解です! システム連動問題ありません』
2機の重装機兵は、100mほど離れて銃座が固定された魔導徹甲榴弾ライフルの前に待機している。前方には低い雲が垂れ込め視界は悪い。
エリーが言う。「25キロ圏に入ったら射撃を開始します。初期射撃は補正が入らないのであまり気にせず撃って下さい」
そう言ってエリーはスキル神眼を発動、レンベルの魔導回路に接続して視感領域を拡大する。エリーの瞳の色は朱色から真っ赤な赤色に変わった。
エリーはモニターのカウントを見て呟く。
「始まった。先ずは予想ポイントに1弾目を準備だね」
レンベルはライフル銃身を動かして照準を設定する。
◆◇
アンドレア国境手前30キロ付近、高度千メートル、帝国近衛兵団飛行船艦隊50隻はV字隊形幅2.5キロほど展開して攻撃準備を終え飛行していた。
そして異変が起こった。旗艦ブリッジの観測員が叫ぶ。「手前500mで巨大な爆発発生! 発射痕跡確認出来ず!」
そして艦隊周辺、上空で次々と猛烈な炎と爆発が発生する。慌てて操船してお互いにぶつかり爆散墜落する飛行船も発生している。
ガルシア近衛兵団長が声を上げる。
「防御シールド展開急げ! 魔導兵器では無いのか防御シールドが反応しなかった!」
艦隊は陣形を乱し混乱して各艦単独で回避行動を行い四方に散らばった。
旗艦ドール号のブリッジから火を吹きながら墜落して行く僚艦飛行船が見える。
エランは動揺してそれを呆然と見つめている。(何が起こっている! 相手に先手を取られた? 攻撃を探知出来なかった! そんなことが・・・・・・、まだ、これからだ。国境のほうから物凄い魔力を感じる!)
そしてエランの体全体に震えが来る。
ブリッジではガルシア近衛兵団長が指示を慌ただしく出している。エランはそれをただ虚な目で見つめている。
「高度を地上スレスレまで下げろ!」
ガルシア近衛兵団長が操舵手に叫んだ。
ガルシアはエランのほうを見て声を上げる。「陛下! 魔導回路に魔力を注入して防御シールドを強化して下さい!」
エランは直ぐに弱々しく答える。
「・・・・・・ええ、わかりました」
エランは皇帝のシートから立ち上がり、ブリッジ中央の魔導回路システムシートに座る。上部のパネルには現在の艦船の位置状況が表示されている。エランは艦隊の残り数を見て再び動揺する。
「なんてこと、ありえないほどに数が減っている・・・・・・、ガルシア兵団長、今注入します」
そう言ってエランが薄い紫色の光に包まれ装置が輝く。そして旗艦ドール号全体が薄紫色の光に包まれ、その光は周囲の艦隊も包み込んだ。
旗艦ドール号と共に、高度を下げた飛行船はとりあえず攻撃を突破して体制を整える。
ブリッジ観測員が報告する。
「現在、追随艦18隻! 船体破損状況は現在調査中です!」
ガルシア近衛兵団長が叫ぶ。「このまま高度維持、ドール号を中心に円形陣を組め! 進路は国境方面維持だ!」
エランが怯えたように叫ぶ。
「ガルシア兵団長! 引きましょう!」
ガルシア近衛兵団長が直ぐに声を上げる。
「陛下! 大丈夫です! 陛下の防御シールド展開後は、被害は出ていません。不意打ちをくらい損害を出しただけです。このままシールドを展開して攻撃すれば敵に損害を与えられます。ですので正面突破で攻撃します」
帝国近衛兵団飛行船艦隊は、ドール号を中心に陣形を整え国境方面突入を開始する。
そして、閃光が艦隊を襲う。旗艦ドール号正面の飛行船が爆散墜落して行く。
「・・・・・・防御シールドが破られた? あり得ぬ! そんなことが」
ガルシア近衛兵団長が声を震わせて言った。1分もしないうちに周囲の飛行船5隻が墜落して行く。
ガルシア近衛兵団長が声を上げる。
「観測員! どうなっている! 何処から撃っている!」
観測員がすぐに叫ぶ。
「発射点特定できません! かなりの距離から撃って来ているようです!」
その間にも、1隻、2隻、3隻と損傷脱落、墜落して行く。
ガルシア近衛兵団長が力無く言う。
「かなりの魔導反応です・・・・・・、魔女がいたのですよ、ここに! 我々は罠に嵌められたのでしょうか? 摂政殿の罠に・・・・・・」
エランは生気の無い顔で言う。
「そうかもしれませんが、今は逃げないと死んでしまいます」
ブリッジの操舵手が叫ぶ。
「機関損傷! 出力低下! 速度落ちてます」
ガルシア近衛兵団長が叫ぶ。
「連邦国側に進路を向けろ! 絶対に帝国領はダメだ!」
エランが顔を顰め言う。
「なぜ? 帝国領はダメなのですか」
ガルシア近衛兵団長は答える。
「それは、摂政殿の計画なら陛下は生きて帝都へは戻れません」
ガルシア近衛兵団長は操舵手に声を上げる。
「出力全開で連邦国に向かえ!」
◆◇
ここは帝都、ドール市中央部の皇帝居城ドール城内、摂政執務室。
摂政アイクルは忙しく、書類の承認処理を行っていた。
執務室のドアが激しくノックされる。
「ドアが壊れる。何事か?」
ドアが開けられ秘書官が慌てて入って来る。
「大変でございます! 近衛兵団飛行艦隊が壊滅致しました!」
アイクルは首を傾げて秘書官を見て言う。「どう言うことだ? 私には意味が理解出来ない。もう一度言ってくれるか」
秘書官は姿勢を正して再び報告する。
「皇帝直属近衛兵団飛行艦隊が、アンドレアにおいて壊滅致しました!」
アイクルは椅子から立ち上がり、秘書官の前まで近寄り顔を見る。秘書官は明らかに動揺している。アイクルはゆっくり確かめるように言う。
「本当か? 皇帝陛下はどうなった?」
「皇帝陛下の生死は不明です。旗艦が撃墜され連邦国側に落ちたため、捜索が困難とのことです」
「そうかわかった! 中央軍参謀部長を呼び出してくれ!」
「はい、今直ぐに!」そう答え秘書官は慌てて部屋から出て行く。
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