アンドレア戦域70 帝国近衛兵団2
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、13日目早朝。
エリー達が、バレット市北部域戦闘終了後、15時間ほど経過している。
エリーは現在、アンドレアを目指してランカーⅡに搭乗して連邦国上空を飛行中である。座席に座り窓の外を眺めている。
隣りに座って居るハル少将が言う。
「エリーさん、これは凄いですね! 飛行船なんて相手では有りませんね」
エリーは苦笑いしてハル少将に言う。
「ええ、これ一機で結構なお金と手間が掛かるんです。製造にも運用維持にもびっくりするぐらいのお金掛かるので軍への正式納入も無いのです。ブラウン商会は大赤字みたいですよ」
ハル少将はエリーに言う。
「そうですか、それは大変ですね。ですがそのお陰でなんとか間に合いそうですね。話しは通しておきました。外務局のほうにも手を打ちましたので、とりあえず問題は無いと思います」
そう言ってハル少将は溜め息を吐きエリーの耳元で小声で言う。
「お姉様と対峙されるのですね。ためらい無く出来ますか?」
エリーはハル少将の瞳を見つめて言う。
「お姉様との思い出はありませんから、特に思う所はありません」
そしてエリーは窓の外を見て言う。
「可哀想なお方です。お姉様も血統者であるが故に・・・・・・」
ランカーⅡの副機長がコクピットからキャビンに出て来てエリーを見て言う。
「エリー様! そろそろ中継地点です。準備をお願いします」
エリーは頷き副機長の顔を見て微笑む。「はい、了解です。積替はどのくらいですか?」
副機長は直ぐに答える。
「10分以内に出来ると思います。交代機体は既にスタンバイしています」
エリーがハル少将に微笑む。
「このまま来れば、帝国よりこちらが早く到着出来ます」
副機長がキャビンを見渡して声を上げる。「それではベルトを着用して下さい。降下着陸体制に入ります!」そう言いてコクピットに戻った。
ハル少将がエリーを見て言う。
「ブラウン商会の要員は練度が高いですね。並の連邦国軍将兵ではかないませんね」
エリーが少し笑って言う。
「それは、厳しい死ぬような修練を切り抜けた者しか、ここにはいませんからね」
ランカーⅡが降下を始める。高度を五千メートルから千メートル付近まで徐々に下げて行く。機長からアナウンスがキャビン内に流れる。
〈着陸体制に入ります! 振動、揺れ等があるのでベルトをしっかりロックして体を保持して下さい!〉
ランカーⅡは速度を落とし、可変翼を調整、ホバーリング体制に移行した。着陸地点には誘導員が旗を振って誘導している。
そして、ランカーⅡはゆっくり降下して着地した。直ぐにコンテナ換装が開始されレンベルが降ろされる。
着陸地点にはすでに5機のランカーⅡが待機してプロペラが全機回っている。
二機のランカーⅡはレンベルとユーリカスタム機体を積載準備で作業車両が接続、積載固定作業を慌ただしくしている。
残り三機のランカーⅡは爆装を行い攻撃仕様に換装されていた。
バレットから来たランカーⅡから降りたハル少将がエリーを見て言う。
「向こうにいる機体は護衛ですか?」
エリーはハル少将に微笑んで言う。
「あれは、帝国近衛兵団攻撃用です。新型爆裂弾を搭載しています。お父様から使ってくれと言われまして、試験運用部隊も同行しています。まあ、防御シールドを展開されて、どこまで通用するかはわかりませんが」
積載を見ていたユーリがエリーに近寄って来る。
「ランカーⅡの新型弾どうですかね? 半分減らせれば十分効果アリですが?」
ユーリがエリーを見て微笑み言う。
「エリー様は、総代表から愛されています。エリー様のお願いでランカーⅡが全てここに全機揃うなんて凄いです」
エリーが少し考えた顔をして言う。
「ランカーⅡて正直どのくらいの金額なの?」
ユーリは直ぐに答える。
「正確な金額は把握しておりませんが、レンベル並みと聞いておりますが・・・・・・」
エリーは顔を下げて呟く。
「そりゃダメだね。買わないよ」
エリー達、搭乗ランカーⅡの機長が駆け寄って来る。
「エリー様、搭乗をお願いします!」
エリー達はプロペラ風を避けて搭乗タラップを駆け上がる。
全員乗り込むと副機長がタラップを収納してドアを閉めロックする。副機長が声を上げる。
「ドアロック! 完了!」
「全員ベルトロックお願いします!」
そう言って副機長がコクピットへ入った。
ランカーⅡがプロペラ回転を上げホバーリング上昇して行く。そして可変翼角度を調整徐々に速度を上げさらに上昇して行った。他のランカーⅡも次々と飛び立ち上昇してエリー搭乗機に追随する。
◆◇
同時刻、帝国領上空高度千メートル、帝国近衛兵団飛行船艦隊50隻はアンドレアを目指し100キロほどの速度で飛行している。
そして艦隊の中心付近には旗艦ドール号がその巨体を誇って飛行していた。
皇帝シートに座り機嫌悪そうに前を見ているエランがガルシア兵団長に言う。
「何か周囲にプレッシャーを感じるのだけど、ガルシアはどう思う?」
ガルシアはエランを見て微笑む。
「私は、特には感じませんが。まあ、相手が魔導士なので警戒は十分しておりますのでご安心ください」
エランはアンドレア領の方向を見つめて言う。「アンドレアでとんでもに事が起こるような・・・・・・、重い空気が立ち込めている」
ガルシア兵団長はエランの手を取り言う。「陛下! 我々は最強です。恐れるものなどございません。心配しなくとも二時間もすれば戦闘は終わっています。アンドレアが屈服するのも時間の問題でしかありません」そして笑みを浮かべて司令官シートに座る。
エランは思う。(この感じは、まずいのか? とんでもない力が襲い掛かろうと持ち受けている。私以上の力? 連邦国の魔女か? だがやらねばならぬのか・・・・・・)
エランの顔が暗くなる。そしてガルシア兵団長に声を上げる。
「到着まで、あとどのくらいか?」
「はい、二時間ほどです。今日中にアンドレアは終わります」ガルシア兵団長は振り返り答えた。
帝国近衛兵団飛行船艦隊は、着々とアンドレアへと近づいて行く。
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