北部戦線62 アンドレア魔導師団15
エリーは意を決してミリアと対面する。
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、12日目夜。
エリー達が、バレット市北部域戦闘終了後、5時間ほど経過している。
エリーは、いまバレット市内のブラウン商会施設内にいる。あれからジェーン連隊長の紅色のラムザⅣを見に行って、しばらくしてユーリが迎えに来た。そしていまは、エリーはブラウン商会施設内食堂にいる。
30畳ほどのスペースに調理設備と6人掛けのテーブルが四つある。エリーは入口付近のテーブルにモニカ中尉と隣り合わせで座っていた。
「食事の時間ですね、それでは参りますか」エリーが立ち上がりモニカに言った。
エリーは軍服で無く白のロング丈ワンピースを着ている。モニカはいつもの諜報軍服を着用している。そして、2階の区画扉を解除して2階廊下フロアに入る。
「こちらがミリアさんの部屋です」
モニカがドアの前でエリーに言った。
エリーは食事のトレーを持ち直してモニカに言う。
「お願いします」
「はい、わかりました」
モニカは直ぐに答えるとドアをノックした。
「食事の時間です! 入ります!」
部屋からミリアの声がする。
「はい、どうぞ」
モニカはドアを開けてエリーに部屋に入るよう即した。そしてエリーはトレーを持って部屋に入る。直ぐにミリアを見て頭を下げる。
ミリアはエリーを見て明らかに動揺している。
「え・・・・・・? ローラさん? なんで・・・・・・」呆然とエリーを見てそのあとは何も言わない。
モニカが部屋のドアを閉めて言う。
「食事の時間です。ミリアさん座ってください」
ミリアは瞳を開きエリーを見つめたまま椅子に座った。エリーはそれを見てトレーをテーブルの上に置いて言う。
「ミリアさん、ご無事で何よりでした」
エリーはミリアの反対側の席にゆっくり座る。しばらく両者間に沈黙が続く。
ミリアが口を開く。
「私は、頭がおかしくなったのでは無いのですね? 現実に目の前にローラさんがいるのですよね!」
エリーはミリアの瞳を見つめて言う。
「ミリアさん、申し訳ありませんでした。本当の名を名乗ります。私はエリーブラウンと申します。連邦国軍士官を務めております」
ミリアはエリーを見つめたまま言葉が出ない。エリーはミリアに微笑み言う。
「ミリアさんを連れ帰ったのは、私です。あのまま放置すれば死ぬことがわかっていて見過ごせなかたのです」
エリーはミリアの強張った顔を見ながら更に言う。
「ジースさんも一緒に連れ帰りました。重症だったので現在治療中ですが、命には問題がありません」
ミリアはエリーを見て声を震わせて言う。
「貴女は・・・・・・、何者? まさか・・・・・・魔女部隊?」
エリーはミリアの手を取ろうとするが、触れた瞬間に払いのけらる。
「なんなのですか! 貴女はなんのために私に会いに来たのですか!」
ミリアがエリーに声を上げた。すぐにエリーはミリアの瞳を見つめて優しく言う。
「ミリアさんの心を解放するためです」
ミリアはその言葉に反応して言う。
「私の心の解放・・・・・・? 理解出来ません。それに、貴女はビル中尉を慰めておいて、敵として簡単に殺した。貴女は残虐非道ですよ、ビル中尉の心をもて弄んだ! さすが魔女です!」
エリーは首を傾けて微笑み言う。
「ビルさんは生きていますよ。いまは、連邦国首都の収容所にいます」
ミリアは動揺して言う。
「えっ! ビル中尉は生きている?」
ミリアを見て、エリーは直ぐに答える。
「嘘などつきません! 本当のことです」
エリーはモニカを見て頷き言う。
「お願いします」
モニカはエリーを見て言う。
「はい、よろしいのですか?」
エリーは微笑み頷く。そしてモニカは白い眼帯をゆっくり外した。目の下にケロイド状の爛れが現れる。ミリアは動揺して声を発する。
「セリカ少佐! 酷い・・・・・・!」
モニカは目の下のケロイド状の爛れを剥ぎ取って言う。
「ミリアさん、セリカです。私も生きています」
ミリアは瞳を大きく開き呆然と立ち尽くす。そこへモニカが駆け寄り、ミリアを抱きしめて耳元で言う。
「貴女の大切な人はみんな生きていますよ、悲しむことは何も無いのですよ」
ミリアの瞳からは自然と涙が流れている。二人はしばらく抱き合う。
そしてモニカがミリアに言う。
「エリー様のお話を聞いて下さい」
そしてモニカはミリアから離れる。
エリーがミリアに近寄り微笑み言う。
「まずは、私の素性からお話します。ミリアさんと大きく関わる事なので、先にお話しします」そう言ってエリーはミリアの耳元で囁く。ミリアは目を見開き驚いた顔をしてエリーを見て言う。
「それは・・・・・・、事実なのですか?」
エリーは頷き答える。
「はい、本当のことです」
ミリアは直ぐに後ろに下がり膝をつき頭を下げて言う。
「エリー様! 申し訳ありません! 我が一族の裏切により大変な思いを・・・・・・」
エリーはミリアの手を取り言う。
「そんな事、今更です。今後のことをお話し致しましょう」
エリーはミリアの手を取り立ち上がる。エリーはミリアの額に合わせて呟く。
「よろしいですか? 今から貴女の中に私を通します」
ミリアは戸惑ったように質問する。
「通す? ええ・・・・・・」
エリーは優しく言う。
「私に任せてください。楽にして私を受け入れるだけです」
エリーはミリアを抱き寄せる。そしてエリーが白色の光に包まれるとその光が広がりミリアも包み込む。そして二分ほどの静寂が流れてエリーが言う。
「ミリアさん、理解しました。どうですか? 深層部に潜り魔導スキルの封印を解除しましたが、まだもう少し時間を置いたほうが良さそうですね」
ミリアは意識が薄れ虚な目つきをしている。エリーはミリアの体を支えて椅子に座らせる。
モニカが心配そうにミリアを見て言う。
「大丈夫なのですか? 意識がもうろうとしているようですが」
エリーはモニカを見て微笑む。
「大丈夫! 五分もすればもとに戻るよ」
モニカは不安そうな顔でエリーを見て言う。
「何をされたのですか?」
エリーはミリアの顔を抱き寄せ髪を撫でながら言う。
「うん、女神の治癒みたいなものかな、それと、ミリアさんの魔力スキルの封印を解いたのですが・・・・・・」
「ミリア アリストン・・・・・・」モニカが呟いて、モニカがハッとしてエリーを見つめる。
「あのアリストン家出身なのですね」
エリーは頷き言う。
「そうです。アリストン家の血統者なのですよミリアさんは、たぶん幼少期に魔法スキルを第三者により封印されたのでしょう」
モニカはエリーに言う。
「私は、以前ミリアさんから魔力らしきものをまったく感じませんでした。それでアリストンと聞いても何も思いませんでしたが、あのベランドル王国随一の魔道士家系の血統者! それは力を封印されていたからなのですか」
「そうだと思います。今後、解放した魔力マナエナジーの制御がうまくいけば良いのですが。とりあえず、私のスキルで制御魔導回路を付与したので、たぶん大丈夫と思いますが?」
ミリアが恍惚としてわれを忘れるような表情でエリーを見ている。エリーがミリアに言う。
「気分はどうですか?」
ミリアは直ぐに答える。
「はい、生まれ変わったように心がスッキリしています。そして体の内から力が湧いてきているような感じがします」
エリーは意地悪い顔をして言う。
「ミリアさんが、ビルさんのことをそんなに思っていたとは思いませんでした。私は取ったりしませんよ。安心して下さい」
ミリアは明らかに機嫌の悪い顔をしてエリーを見て言う。
「それはどう言うことですか!」
「だって心の中すべて見たんですよ、間違いないことです」エリーは嬉しそうに言った。
直ぐにミリアは困った顔をして言う。
「エリー様、どうかご容赦ください」
そして深く頭を下げた。そしてミリアはエリーに跪き言う。
「私は運命を受け入れ、エリー様に従いますのでどうかよろしくお願い致します」
エリーはミリアの瞳を見て言う。
「ミリアさん、よろしくお願いしますね。それでは、食堂で食事をとりましょう」
そう言ってミリアの両手両足の拘束具を外していく。
ミリアがエリーに少しためらったように言う。
「ジース大佐に会うことは出来ますか?」
エリーは少し考えてから言う。
「どうでしょう? あとからのほうが良いかと思います。処置は終わっておりますが、明日のほうが良いかと思います」
ミリアはエリーに頭を下げる。
「はい、わかりました。仰せの通りに致します」
モニカは眼帯をつけて髪を整える。ミリアはモニカを見て言う。
「ここではモニカさんでよろしいのですか」
「ええ、セリカは死んだことになっていますので、モニカでお願いします」
ミリアはモニカを見て敬礼する。
「モニカ中尉! これからよろしくお願いします!」それを見てモニカは微笑んで言う。「ようこそエリー親衛隊へ」
エリーが驚いて言う。「エリー親衛隊て・・・・・・何ですか? そんな組織ありませんよ」
モニカがドアを開けて言う。
「さあ、夕食を食べましょう! 今日は濃厚ソースハンバーグパスタですよ!」
エリーがミリアの腕を引っ張り食堂へと向かうと、モニカもそれに続き食堂へ向かった。
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