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北部戦線55 アンドレア魔導師団8

エリー達は偵察任務に出動することになった。

 北部戦線、エリー機動大隊現地配備、12日目午後。


 エリー達が、帝国領に侵攻、バレット市郊外に到着してから45時間ほど経過している。


 ここは、バレット郊外、特別第三機動連隊野営地、重装機兵待機場。


 エリーはパイロットスーツを着用しレンベルの足元でユーリと話している。

「バレット北側30キロ圏の偵察任務ですか、せっかく楽しみだった昼食がダメになりましたね! 市内の美味しいパスタ屋さんに行く予定だったのに・・・・・・」

 エリーはユーリにガッカリしたように言った。今回の任務はハル少将からの指示で帝国軍の状況を確認するもので、当然ように選ばれたのはエリー、ユーリ、アンジェラの三人である。そしてハル少将も同行する。

「遅くなり申し訳ありません!」

アンジェラがエリー達に声を掛けて近寄って来た。

 エリーはアンジェラを見て嬉しそうに言う。

「無事、任務完了しましたか?」


 アンジェラは、一旦立ち止まり敬礼して言う。「はい、無事に終わりました」

 アンジェラは、昨日よりジェーン連隊長用の重装機兵ラムザⅣカスタムβジェーンspecialの受領を行うため、国境補給基地に出向いていたのである。


 エリーがアンジェラに寄って言う。

「ジェーン連隊長の機体はどこにあるのです? 拝見したいのですけど」


 アンジェラはエリーの瞳を見て微笑む。

「ええ、まだ運搬車両に乗ったままです。

あと、最終調整するだけですが」


アンジェラはエリーに少し考えてから言う。

「実は機体色が紅色なのです。遠目からだとレンベルと見分けがつきません。外装材も同型のものを使用しておりまして・・・・・・、見た目は完全にレンベルです」


 エリーは少し驚いて言う。

「えーーっ! なんで!」

 

 アンジェラは直ぐに答える。

「ジェーン連隊長が参謀総長に直言したと聞きました。帝国軍の情報撹乱と、エリー少佐の負担軽減が目的だそうです。そして、この新型機体ラムザⅣは、連邦国軍で初めてバックパックシステムを搭載しております」


 エリーがアンジェラに言う。

「バックパック? レンベルと同じものなの?」


 アンジェラはエリーに答える。

「いいえ、試作段階で、まだ実戦向きでは無いようです」


 エリーはユーリを見て言う。

「ユーリさん時間ありますよね、偽レンベルを見に行きませんか?」


「はい、了解しました。あと30分ほどですから、少しならかまいません」

 ユーリが答えると、エリーはアンジェラと共にすぐさま車両待機場へと向かう。


 エリー達が車両待機場に着くと、紅色の重装機兵は運搬車両から降ろされるところだった。

 エリーはその機体を見上げて言う。

「確かに、レンベルだよ。でも力を感じ無い・・・・・・」


 エリーは近くの技術士官に話し掛ける。

「コクピットに入っても良いかしら?」

 技術士官はエリーに敬礼して答える。

「申し訳ありません。まだシステム確認が終わっていないので、その後になります」


 エリーは技術士官に微笑んで言う。

「どのくらい時間掛かりますか?」

 技術士官はエリーを見て申し訳なさそうに言う。

「最短でも三時間は掛かると思います」

 エリーは技術士官に頭を下げて言う。

「はい、わかりました。お邪魔しました」

 そう言ってエリーはアンジェラの顔を見て言う。

「では出動準備を致しましょうか」


 エリー達は再び重装機兵待機場に戻り出動準備を開始する。


 エリーは、端末操作しているボビーに話し掛ける。

「ボビーさん、朝食からなんか、元気ないよ」

 ボビーはエリーを見て言う。

「あゝ、少し気分が落ち込んでいる」

ボビーは思った(朝から変な気分だ、嬢ちゃんに女性を一瞬、感じてから気持ちが滅入る)


 エリーがボビーの顔を覗き込むと、ボビーは顔を逸らして言う。

「嬢ちゃん、近いって! 誤解を招くだろう」

 エリーが嬉しそうに言う。

「そんな訳無いよ! いつもの事でしょ!

 それに私はボビーさんのこと男性として見ていないからね、お父さんみたいなものですよ」


 ボビーは寂しい顔をして言う。

「あゝ、そうだなぁ・・・・・・、俺はお父さんだな」


「準備完了だ! 気をつけてな」

 ボビーが少し元気の無い声で言った。


 ハル少将が掛け寄って来る。

「エリーさん申し訳ありません! 遅くなりました」

 エリーはハル少将に敬礼して言う。

「いいえ、今からです。丁度良かったです」


 ハル少将は搭乗タラップを直ぐに上がりコックピット内に入った。エリーも直ぐにタラップを上る。

「ボビーさん! 行ってきます」

 ボビーはエリーに右手を挙げて合図すると、搭乗タラップを外して後方に移動した。


 エリーはコクピット内に入りパイロットシートに座る。サブシートのハル少将を見て言う。

「ハル少将、固定ベルトをお願いします」

「はい、わかっています。いま着けます」

 ハル少将は固定ベルトを装着した。


 エリーはヘッドギアを装着して固定ベルトをロックする。そして、システム起動スタンバイボタンを押す。コックピット内の警告ランプが点灯して機体のスピーカーから女性の声でアナウンスが流れる。〈レンベル起動シーケンススタンバイクリア! 起動シーケンス、スタートして下さい!〉

 エリーがコックピット正面パネルを見て確認呼称する。「起動異常アラーム無し! オールグリーンランプ確認! 起動シーケンス、スタート!」そしてセーフティーロックを解除、起動スイッチを押した。

 レンベルの融合炉が起動、高周波モーターの様な音が鳴り始める。

 エリーはモニターを見て各関節稼働部コア、ジェネレータ出力数値を確認する。

「ハル少将!コクピットシールド閉めます」

 そう言ってエリーはシールドセーフティロックを解除、シールド開閉ボタンを押した。コックピット内にアラームが鳴り響き、シールドがゆっくり閉まっていく。

 エリーが正面パネル確認して呼称する。

「起動完了! 異常警告表示無し! 制御システム異常警告無し! 兵装制御システム連動異常警告無し!」


 エリーはインカムを押し、軍管区本部に無線を繋ぐ。「こちらレッドリーダー! スタンバイ完了! 今から出ます!


『こちら本部! 了解! レッドリーダーお気をつけて! 以上!』


 エリーは部隊通信に切替て言う。

「こちらレッドリーダー! 各員! 今から出ます、問題無いですか」

《レッド二号! レッド三号! スタンバイ完了! いつでも出れます!》

 そして、レンベルを先頭に三機の重装機兵が重装機兵待機場から野営地の外へと移動する。


 エリーがインカムを押して言う。

「それでは、今から出ます! 指定コースをトレースするのでシステムロケーションを確認して下さい!」


《レッド二号! レッド三号! 了解!》

「それでは、全機出撃!」

 エリーはそう言うと左右のレバーを離し、手前にある左右のスペースに手を入れた。機体のスピーカーから女性のアナウンスが流れる〈機体パイロット認証システム作動! 認証しました! エリーブラウン確認! シンクロパイロットシステムに移行確認!〉


 三機の重装機兵がホバーリングして、レンベルがホバー走行を開始するとあとの二機が追随する。しばらくすると三機は小さくなり見えなくなった。


◆◇


 ここはバレット市から北へ25キロほど離れた木材集積場。そこには管理小屋に偽装された帝国軍観測所があった。内部には森林迷彩を着た帝国軍偵察部隊員が10人ほどいる。

 通信員下士官が声を上げる。

「ポイントエリア10にて、連邦重装機兵数機確認の報あり、本部に繋ぎます」

 偵察部隊士官が通信員に言う。

「他のポイントはどうか?」

 通信員は首を横に振って言う。

「いいえ、まだ確認されていません」


「偵察隊か? 侵攻では無いようだな。第三軍司令本部にとりあえず報告を入れてくれ」


「はっ! 了解しました!」

 通信員は直ちに通信機を本部に繋ぎ報告した。

 

 別の通信員が声を上げる。

「ポイント12にて朱色の重装機兵確認の報あり! 現在こちらに北上中! 【グランの魔女】と思われる機体とのことです!」

 

 偵察隊士官は慌てたように声を上げる。

「今すぐに、本部に報告しろ! 魔女北上中! 緊急戦闘体制発動願うと!」


 通信下士官が顔色を変えて本部通信員を呼び出す。

「こちらポイント15! 魔女確認! 北上中! 緊急戦闘体制発動願います」


《本部了解! 間違いないのか?》


 無線のマイクを取り偵察隊士官が声を荒げる。「第25師団偵察隊 中尉! ウォーレンです! すでに2カ所で確認しています! 誤報ではありません!」


《本部了解した! 司令本部に通達する》


 「確認に出る! クリス准尉、後は頼んだ!」

 そして、偵察隊士官は慌てたように小屋から出て行った。



最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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