北部戦線44 再会4
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、10日目夜。
エリー達が、帝国領に侵攻バレット市郊外に到着してから5時間ほど経過している。
エリー達は今バレット市内レストラン前でセリカと戦っている。
セリカは左脇腹を左手で押さえ思っていた。(ダメージが思った以上にある。これだと3分持つか? 逃げる事は不可能ですね! ローラさん、いやエリーさんと言ってましたね! 容赦なく斬り込んで来る斬撃の威力はかなりのモノです・・・・・・、ならもう出来る事はあまりありません)
セリカの脇腹の出血は止まらない。
ユーリはセリカの動きを見ながら間合いを詰めて右上段から斬撃を放つ。セリカは身体を左に逸らして、剣を掬い上げてユーリの剣を滑らせて外に逸らせる。セリカは直ぐに両手で剣を握ると中段から鋭い突きをユーリの胸部に入れる。ユーリはかろうじて上体を引いて軍服のモールが切れて飛散する程度ですんだ。
セリカは直ぐに魔力量をさらに上げて、右下段に構えると側方いたエリーに斬り込んだ。エリーは予想していたようにセリカの剣を受けて弾くと、牽制の斬撃を放ちセリカの上体を崩し、上段からセリカの右肩に斬撃を放った。セリカは素早く剣を前に振り出して、エリーの剣を逸らそうとするが、軌道を変えたエリーの剣先はセリカの右手の甲を掠める。そしてセリカの右手から血がダラリと垂れ剣が上手く握れない。
エリーが少し悲しそうにセリカを見つめて声を上げる。「残念ですが! セリカさん終わりにしましょう! あなたはここで死にます」
そして、エリーの剣は薄紫色の光は更に輝きを増す。エリーはセリカの前に一気に詰めて渾身の突きを放った。セリカはそれを剣で中段から振り抜き逸そうとするが、エリーの剣はすり抜けセリカの胸部を貫く。「うぐーーっ!」セリカは声を上げ崩れ落ちる。エリーは剣を抜かずそのままセリカと一緒に倒れ込んだ。
「セリカさん、終わったよ」エリーは瞳を潤ませて呟く。ユーリはその状況を呆然と見つめていた。
エリーは立ち上がりユーリを見て言う。
「ユーリさん! 予定通りです! 早くセリカさんを運びましょう」
ユーリは直ぐにエリーに駆け寄り言う。
「本当に大丈夫なのですね!」
エリーにユーリの心配そうな顔を見て言う。「大丈夫です。心臓は外しています問題ありません! ショックで気を失っているだけです」
エリーはそう言うと、エリーは女神スキル治癒力を発動して、倒れいるセリカを抱え胸の剣をゆっくり抜いて行く。剣を抜き終わり手を当てると傷が塞がる。ユーリはそれを見て驚き言う。「エリー様これは一体!」
エリーはユーリを見て微笑む。
「まだ知らなった? 治癒魔法です。死んでいなけらば大体なんとか出来る魔法です」
ユーリは驚いている。(エリー様の魔法レベルが高いのは知っていた。だがここまでとは・・・・・・、やはり女神の加護なのか)
エリーはセリカの左脇腹に手を当てて傷を治癒させる。「あゝ、結構疲れますね」そして右手を持ち傷を塞ぐ。
店からカイ憲兵中尉とサラ憲兵軍曹が出て来る。直ぐにユーリが二人にセリカを車両の後部座席に運ぶ様に指示する。
セリカを後部座席に乗せ士官用車両は走り出した。
そしてしばらくして後方の離れた建物の影で男がゆっくりと立ち上がり市街地へと去って行く。「セリカ少佐、残念だ、もう二度と会えなくなったな」男は呟いた。
(だがセリカ少佐、あんたは良くやった。謎だった魔女を表に引きずり出した)
◆◇
あれから2時間ほど経過している。20畳ほどの部屋の隅にベットがあり女性が寝かされている。部屋の出入口の椅子には憲兵軍服を着た女性が椅子に座り少し眠そうな顔でベットのほうを見ていた。部屋のドアがゆっくり開けられユーリが入って来る。
「サラ軍曹どうですか?」サラ憲兵軍曹が椅子から立ち上がりユーリを見て答える。
「まだです。起きたらお伝えしますので、仮眠をとって下さい」
ユーリがサラ憲兵軍曹の顔を見て言う。
「あなただって眠そうですよ。替わりますよ、サラ軍曹」サラ憲兵軍曹は一瞬嬉しそうな顔をする。
「いえ、もう少し頑張ります」
ユーリはベットのほうを見て言う。
「もうそろそろ、目覚めるはずなのですが」
サラ憲兵軍曹がユーリに質問する。
「この方は、帝国の諜報工作部員ですよね」どうするおつもりですか?」
ユーリはサラ憲兵軍曹に答える。
「それは、エリー様がお決めになります。ただ、命を奪うような事はないと思います」
セリカは周囲から人の話声が聞こえてくる。会話の内容は認識出来ない。セリカはまだ微睡の中にいる。
(私は死んだはず・・・・・・、体の感覚がある? 確か、ローラさんが目の前に飛び込んで来て剣が胸に通る感覚があった。それで私は絶命したはず! だが身体の手足の感覚もある。何故? 生きているのか、体に痛みは若干あるが体は動く! 確か傷もあるはず手を動かして胸の下、脇腹を触るが傷痕もない? やはり夢・・・・・・!」確認すると衣服下着も身につけていない裸であった。シーツが被せられている状態でベット上に寝かされている。両手首と両足首には何かリングのような拘束具が取り付けられていた。
セリカの顔の近くで話す声がする。
「セリカさん、目覚められたようですね」
ユーリがセリカの枕元に顔を寄せって言った。ユーリが振り返りサラ憲兵軍曹に声を掛ける。「エリー様をお願いします」
サラ憲兵軍曹は部屋を慌てて出て行く。
「お目覚めはどうですか? 気分悪くないですか」ユーリがセリカに話掛ける。セリカは、まだ呆然とした顔をしている。
ドアが乱暴に開けられエリーが部屋に入ると、セリカに駆け寄り左手を握る。
「セリカさん、良かった! 無事に帰って来れて!」エリーの朱色の瞳からは涙が溢れている。そしてセリカの頬に顔を寄せって呟く。「帝国諜報部少佐、セリカマクガイヤは死にました。今ここにいるのは、ただのセリカさんです」
セリカはそれを聞いてブルーの瞳から自然に涙が溢れてくる。
「何故? 私は生きているのですか」
エリーが呟く。「それは貴女に使命があるからです」
セリカがエリーの頬の感覚を感じながら言う。「使命とはなんなのですか?」
「それは私に仕え女神の加護を世界に行き届かせる事です。あなたはマクガイヤ家の秘術を受け継ぎし者なのでしょう」
エリーはセリカから一旦離れ横に立ちセリカを見つめる。そしてエリーは女神スキル神眼を発動させた。エリーの瞳の色が朱色から真っ赤な血の色に変わる。セリカのシーツを捲り上げて全身を視感する。
「問題ありません!」そう言って、右胸の下と脇腹を触る。そしてセリカの手を取りエリーからセリカへと徐々に魔力を流し始める。エリーが白色に輝き、その輝きがセリカへと広がって行く。
「これで痛みは取れたはずです」
エリーの瞳は朱色に戻っている。セリカはエリーの顔を見て恍惚として我を忘れる状態になっている。
「エリー様! 私はどのような謝罪すれば良いのか思いつきません!」
そう言ってベットから降りてセリカは、エリーに跪き頭を下げ手をつく。
「セリカさん、あなたはマクガイヤ家のこと父親のことを良く思っていませんね」
セリカは驚きエリーの顔を見上げる。
「何故でしょう? 私が父を憎んでいることがわかるのですか?」
エリーはセリカの手を取り微笑んで言う。
「だって、私はセリカさんの中に意識を通して確認したのですから、ほとんどのことはわかりました。初恋の人のイメージもありましたよ」
後ろに居たユーリが驚いたように言う。
「エリー様! あまりに力を披露し過ぎです!」
「ゴメン! ユーリさんでも、セリカさんのためには必要なんだよ」
エリーはそう言いてセリカを見て言う。
「セリカさんのお父様に関してだけどね、旧べランドル王国の旧臣に聞いた話だけど臆病者や卑怯者なんかじゃないよ。家族や家臣のためにとった行動なんだよ。だからセリカさんは勘違いしてたんだよ」
セリカはエリーを見て言う。
「何故、旧ベランドル王国をそんなに詳しいのですか」それを聞いて、エリーはセリカの耳元で呟く。そしてセリカは表情が驚き変わり、エリーの膝に顔を埋め泣き始めた。しばらくしてセリカは落ち着きを取り戻して跪き言う。「私、セリカ マクガイヤ! エリー様に生涯の忠誠を誓ます」
「あゝ、忘れてた。これ外すね」エリーが拘束具にさわりロックを解除する。
エリーはセリカの顔を見て微笑んで言う。「ありがとう! でも風邪引くから服を着ますか」セリカは慌ててシーツを身体に巻きつける。
「申し訳ありません! お見苦しいものをお見せ致しました」セリカは少し恥ずかしそうに言った。エリーはセリカを見て微笑んで言う。
「そんなことないよ! 良い身体してるよ。羨ましいと思ったよ」
ユーリが慌てて部屋の開きから下着と上着を取り出しセリカに渡した。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!




