北部戦線39 国境侵攻10
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、10日目午後。
エリー達、特三機動連隊は国境より30キロ帝国領内に侵攻していた。
エリー達は食事を済ませ、今後の予定について打ち合わせをしている。
「偵察状況から周辺に帝国軍は皆無のようです。侵攻線両サイドに索敵部隊を配置していますが、敵発見等の報告は現在までありません」
ハル少将に作戦参謀が報告した。ハル少将は頷き少し考えて言う。
「現状、増援を含め23個師団をバレット市まで進出展開する予定に変更は無いのですが! 参謀本部には、さらに2個師団の増援を要請しました。これにより、この戦域には国境守備兵力を含め30個師団が展開することになります。帝国軍が何か手を打って来ても対応出来る戦力だと思います」
ハル少将はエリーに視線を移して言う。
「特三機動連隊は先行し、バレット市郊外に本日1600までに到達予定とします」
ジェーンが手を上げ少し不安そうに質問する。「帝国軍に何らかの意図はないのでしょうか?」
ハル少将はジェーンを見て微笑んで言う。「今のところは、そのような情報はありません。参謀本部は問題無いと判断しました」
ハル少将は周りを見て声を上げる。
「それではこれより! バレットへ! 解散!」
その声に全員が敬礼して移動準備に散開した。
エリーがレンベルまで戻るとユーリが待っていた。
「ユーリさん! 何処に行っていたのですか?」
ユーリは軽く頭を下げて微笑む。
「はい、情報収集です。帝国軍の全軍撤退は事実のようです。あとはパレットには強敵が待ち受けているようです」
エリーがユーリを少し不機嫌な顔で見る。「強敵とはどのような?」
ユーリはエリー近寄り顔を寄せて呟く。
「セリカさんです。帝国の諜報機関の士官でした」
エリーは朱色の瞳は大きく一瞬開く。
「そうですか、気配が違うと思いましたが、そうなんですね」
ユーリはさらに呟く。「目的はエリー様のお命かと思われます」
エリーは視線を下に向けてため息を吐く。
「目的は【グランの魔女】パイロットの抹殺ですか! セリカさんとは関わりたく無いのですが、向こうが来るならしょうがないですね」
ユーリはエリーの肩に手を回してエリーの頬に頬を合わせる。
「ご安心下さい。お手を煩わせる事はございませんので」
エリーはユーリ髪を優しく撫でて言う。
「ユーリさん、任せたよ」
そして後ろからハル少将の声がする。
「お二人は仲がよろしいのですね。私もエリーさんとそのくらい親密になりたいものです。ユーリ少佐が羨ましいです」
ハル少将は少し機嫌の悪い顔をしている。
ユーリはエリーと離れてハル少将に微笑む。「私は、エリー少佐の護衛担当ですから当然です」
ハル少将はユーリを見て嫌そうな顔をする。「諜報は、私の担当外なので手が出せませんが。貴女! 私にケンカを売っているのですか?」
ユーリはすぐに姿勢正して敬礼する。
「ハル少将閣下! 申し訳ありません! 誤解を招く発言ご容赦下さい!」
そう言って、頭を深く下げる。
ハル少将は頭を下げるユーリを見て言う。「今後は注意する事ね。まあ貴女、エリーさんのお気に入りみたいだから大目に見てあげます」
ハル少将はに視線をエリーに移し微笑む。
「では、参りましょうか」
「はい、了解です。それでは」
エリーはハル少将に近寄り、レンベルの簡易ステップにハル少将の体を支えて押し上げた。
ユーリもすぐにラムザⅣユーリspecialのコックピットに乗り込む。
エリーは、レンベルを起動し移動準備完了させて各中隊の状況を確認する。
「こちらレッドリーダー! 各員準備良いか!」
《特三各中隊! 移動準備完了!》
《特三リーダー一号! 移動準備完了!》
エリーのインカムに準備完了の応答が入れる。
「こちらレッドリーダー! 各員! 移動開始!」エリーはインカムを押して指示を発する。
各重装機兵はホバーリングをそれぞれ始める。そしてレンベルが最初にホバー走行を開始して他の重装機兵も順次移動を始めた。
エリーはモニターを確認し兵装システムロック解除をする。
「ここからは一気にバレットを目指します! 各員戦闘体制を取り! 油断せぬようお願いします!」エリーはインカムで指示を出した。
そしていつものように、レンベルとユーリの機体が先行して速度を上げる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
時間は13時間ほど戻る。ここはバレット市帝国軍、第三軍司令本部5階司令官室。
マーク中将はソファーに座り紅茶を一口飲み込みセリカ少佐を見て言う。
「セリカ少佐は一緒に行かないのか?」
セリカ少佐はマーク中将の顔見て残念そうな顔をする。「申し訳ありません。先ほど諜報部より別命を受けまして、ここに留まることになりました」
「任務ならしょうがないが、君ひとりで残るのか?」
セリカ少佐はすぐに答える。
「詳細は申し上げられませんが、私だけの予定です」
マーク中将はセリカ少佐を心配そうな顔で見て言う。「大体の予想はつくが、暗殺任務か何かかな? セリカ少佐は有能である事はわかるが、上も無理をさせるものだな」
セリカ少佐は微笑み答える。
「ご心配ありがとうございます。こういう単独任務には慣れておりますので、大丈夫です」
マーク中将は視線を窓のほうに移してふっと息を吐いた。
「しかし相手が、【グランの魔女】ならばそう簡単では無いだろう。かなりの手練の者が周りを固めているのだろう」
そしてマーク中将はセリカの顔見て言う。
「ひとこと言っておくが、無茶をして命を無駄にせぬようにな、無理と判断したらすぐに逃げる事だ」
セリカ少佐は、言葉聞いて頷き言う。
「はい、心得ておりますのでご安心下さい」
そしてセリカ少佐は立ち上がり、マーク中将に敬礼して司令官室から出て行った。
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