北部戦線38 国境侵攻9
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、10日目午前中。
エリー達、特三機動連隊は国境より30キロ帝国領内に侵攻していた。
ハル少将がサブシートからエリーに言う。「進軍が早いですね。両サイド展開が追いついていません。このあたりで少し時間調整します。各隊に指示して下さい」
それを聞いてエリーがインカムを押し言う。
「こちらレッドリーダー! ここで友軍のサイド展開を待ちます! 各中隊、待機場所を確保して下さい!」
《特三各中隊! 待機指示了解!》
《特三リーダー一号! 待機指示了解!》
アンジェラから無線が入る。
『こちらレッド三号! 帝国領戦線整備ブロック確認! 斥候確認要請します!」
『こちらレッドリーダー! レッド第二中隊対応願います!」
《レッド第二中隊! 了解!》
エリーはレンベルを直ぐに戦闘モードに移行させ整備ブロックの周囲を警戒する。
「敵の反応はありませんね」エリーは呟き、レンベルの魔導回路を通して感知スキルを発動する。(整備ブロック内には人はいませんね、重装機兵もいません。心配なさそうです)
「こちらレッドリーダー! 大丈夫のようです、トラップ等あるかもしれないので、注意願います!」
《レッド第二中隊各員! 了解!》
エリーは後ろを向きハル少将を見て言う。
「今まで、帝国軍のトラップありませんでしたね。ここまで抵抗無く入れるのは、やはり不気味ですね」
ハル少将は頷き言う。
「そうですね、私も迷っています。予定通り進軍しても良いか・・・・・・」
エリー達、特三機動連隊は町には入らず郊外の広場で待機することにした。
重装機兵部隊は中隊単位で分散して各所待機する。その周辺に自走装甲車両が止まり歩兵中隊が展開警戒している。
エリーはレンベルの両脚を折り跪かせて、すぐにシールド開閉セーフティーロックを解除、開閉ボタンを押した。コックピット内に警報が鳴り響き、コックピットシールドがゆっくり開いていく。
エリーはベルトを外しハル少将に言う。「昼食を摂っておきますか? 一時間くらいの予定ですよね」
「そうですね、それでお願いします」
ハル少将はそう言って防弾ジャケットを着込んでいる。
「はい、了解しました。各隊に通達します」エリーはインカムで各中隊に通達した。
エリーはコックピットからハル少将を支えて一緒に出ると、レンベルの周囲には護衛兵士達が待機している。
そしてエリーはすぐにユーリの重装機兵に行くと、ユーリはすでに重装機兵にはいなかった。エリーは周囲を見渡すがユーリの姿は見えない。
(何も言わずに、いなくなるなんて・・・・・・)エリーは一瞬寂しさを感じる。
アンジェラがエリーに近寄って来る。
「昼食を食べましょう! エリー少佐!」
エリーは微笑みアンジェラの顔を見て言う。「ええ、いいですよ、ハル少将もご一緒ですが」
アンジェラは一瞬瞳を大きくして少し嫌な顔をして言う。「はい、気にしませんよ」
ハル少将がエリーのところへやって来て言う。「あちらで昼食をとります。エリーさんどうぞ」
ハル少将はアンジェラに気付き微笑み言う。「クロード外務卿のご息女アンジェラさんですね。ご一緒にどうぞ」
「はっ! ご一緒させて頂きます!」
アンジェラは姿勢を正し敬礼した。
「いいのよ、そんなに硬くならなくても、私は気にしないから、アンジェラさん」
ハル少将はアンジェラを見て微笑む。
「士官学校でも評判のお嬢様だったらしいですね。ロイから聞いていますよ」
「エリーさんともかなり仲が良いお友達でしたね。お家もかなり行き来していたとか、ロイがよく言っていました。僕は誘われないって寂しそうにしていました」
アンジェラがそれを聴きながら視線を下げる。
エリーはハル少将を見て微笑んで言う。
「え・・・・・・、食事をいたしませか」
エリー達は4人掛けの簡易テーブルに座る。エリーの隣にアンジェラが座り、向かい側にハル少将が座った。テーブルには保存携行食が置いてある。エリーは袋の封を切り中身を出しハル少将に渡す。
「申し訳ありませが、こちらの携行食でご容赦下さい」エリーが申し訳なさそうに言った。
「いいえ、エリーさんの準備してくださったものに、文句を言う訳がありません」
そう言ってハル少将は携行食を受け取る。
「それでは頂きます!」エリーは携行食のパッケージを開けスプーンで野菜スープをすくい口に運ぶ。
◆◇
そのころ、ユーリは市街地のとある建物内にいた。
「状況はどうですか?」
ユーリはテーブルの反対側に座っている男に話し掛けた。
男は帽子を深く被り目と口だけが見える。
「概ね計画通り進行している。軍は予定通りだが、諜報機関の動きは把握出来ない。諜報の担当者が一人バレット市内に残り何か計画しているようだが詳細は聞き出せなかった。諜報工作部士官のセリカマクガイヤ少佐、女性士官だ! かなりの手練だ注意しておいてくれ」
ユーリは少し考えて言う。
「セリカ少佐は諜報機関だったのですか」
男は少し驚いた様子で言う。
「さすがユーリだなもう人物を把握しているとはな」
「いえ、たまたまです。一緒に食事をしました」
さらに男は驚いて言う。
「ユーリお前は一体何者なのだ。セリカ少佐と食事をだと・・・・・・」
「最近、バレットを訪問した際に機会がありまして」
男は呆れた様に言う。
「ジョン様の配下は、とんでもない人材がいるものだな」
ユーリは微笑んで男を見て言う。
「貴方様もそのお一人だと思いますが」
男は少し考えてから言う。
「あゝ、ではミリア中尉も知っているのだな、お嬢様三人と知り合いになって、それに後に拉致されたとか聞いたが、その件なのか?」
ユーリは微笑み頷く。
「はい、その通りです」
「三人みんな美少女だったと聞いたが? ユーリお前も含まれていたのだな」
男は少し笑ったように言った。そして話しを切り替える。
「まあ、わかった。それで、連邦国軍はバレットまでは来るのだな」
ユーリは男を見て言う。
「はい、その予定です。そして、【天空の雷神】は使用しない予定です」
「そうか、計画通りだな。それでお嬢様はどうだ」
「はい、以前より力を増しておられます」
男は安心したように顔を緩ませる。
「お嬢様に直接お会いしたいものだが、今の立場ではそれも叶わん、ユーリが羨ましい限りだ」ユーリが微笑んで男を見る。
「ユーリお前は、お嬢様に心酔しているようだが大丈夫か?」
それを聞いてユーリは言う。
「ええ、私は精神魔法耐性はあるのですが、お嬢様には通用しません。多分、女神の加護の影響だと思うのですが、お嬢様の前では冷静さを欠く時が多々あり不安に思っております」
「ユーリ、お前でもか」
男はポツリと言った。
「それではそろそろ」
ユーリが椅子から立ち上がり言った。
男は手を軽くあげて言う。
「気をつけてな、また会おう!」
「はい、閣下もお気をつけて」
ユーリは軽く頭を下げて言った。そして部屋から出て行く。
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