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391話 ゴロスネス攻略1

ついにゴロスネスへの攻撃が始まった。

 2国間和平交渉会議25日目早朝(大陸統一歴1001年11月7日6時頃)


 ここは異世界、ローゼの隠し砦施設。

 ゴロスネス攻略作戦が発動され、最後の攻撃部隊、攻撃型航空機バルガ20機が簡易飛行場の滑走路から次々離陸して行く。バルガ全機の胴体には対地爆弾が4発搭載され尾翼には女神の美しいイラストがペイントされている。バルガ攻撃機は上空で編隊を組むと高度1000mまで上昇、進路をゴロスネス方向へとった。


 バルガ攻撃隊隊長フィルダーが無線を繋ぐ。

「フォートレス管制!  こちらスイートウォーター1! これより全機ターゲット1へ向かう。作戦障害無いか? イーグルアイとのデーターリンク要請願う!」


 砦司令本部航空管制官から直ぐに応答が入った。

『こちらフォートレス管制! 了解! 現在、ターゲット1、周辺に障害無し! イーグルアイとのデーターリンク要請認証! スイートウォーター各機へリアルタイムデーター転送します! 以上!』


「スイートウォーター1! 了解! 定刻通り攻撃を開始する! 以上!」


『フォートレス管制! 了解! ホーク隊、オウル隊が市街地攻撃を間もなく開始します! 地上レッド隊がターゲット1作戦域で活動中なので誤爆に注意願います! 以上!』


「スイートウォーター1! 了解!」


「こちらスイートウォーター1! スイートウォーター各員に達する! 作戦域にてレッドリーダー作戦行動中! 誤爆に注意して攻撃せよ! 以上!」


《スイートウォーター2! 了解!》

 バルガ攻撃隊各機から応答無線が入った。


 バルガ攻撃隊隊長フィルダーは操縦桿を握り直して機体を左右に振るとスロットルレバーを倒し魔導モーターの出力を上げる、機体は一瞬少し振動して一気に加速した。現在、グラン連邦国軍、テスト開発機を除いた正規採用機体では最速機体であるバルガ攻撃機、その速度は700キロを超える。

 隊長機に追随して他のバルガ攻撃機も速度を上げた。

「ターゲット到達まで8分! 各員! 兵装ロック解除! 戦闘体制をとれ!」

 フィルダー隊長が無線指示を各機に出した。

 

《了解! 兵装ロック解除! 空域戦闘管制リンクオン!》

 各バルガ攻撃機から応答無線が入ると隊長フィルダーはバイザー情報表示を確認した。


「進路正常! 高度このまま! 予定通りターゲットを北東へ追い込む! 爆弾投下後は機関砲にて対地攻撃を行う! 全員無事に任務を果たすことを祈る! 以上!」


 バルガ攻撃隊は大森林上空を猛烈な速度で通過して行く。

 

 ◆◇◆


 ここはゴロスネス市西側城壁見張り台。


 ゴロスネス守備兵団警備隊兵士が西の空に無数の飛行物体を見つける。

「……大変だ! 兵士長! 西の空に……」

 見張り台の兵士が声を上げた。下の城壁通路にいた数人の兵士が西の空を見つめ慌てて駆け出す。見張り台の兵士が警報半鐘を激しく打ち鳴らした。


 そして西の空に点で小さく見えていた飛行物体はあっという間にその大きな灰色の機体が城壁に迫る。そして無数の飛行物体は猛烈な速度と轟音をたてって次々と城壁の上空100mほどを通過して行った。城壁の兵士達は頭を動かしてそれらを追う、30体ほどのワイバーンの2倍から3倍の大きさのその飛行物体は市街地上空で次々と胴体から炎を噴いた。そして炎は煙の尾を引き市街地へと落ちて行く。数秒の間を置いて爆発と爆炎が市街地の至るところで上がった。


 西城壁の兵士達は何が起こったのか理解出来ず混乱状態に陥った。

「……なんだ!? 魔法兵器なのか? あんなの聞いたこともないぞ!」

 兵士長が声を上げ、魔法通信具のある城壁下の階層、警備隊駐屯所に駆け降りた。部屋に入ると直ぐに兵士長は通信具を取り慌てて声を上げる。

(なんだ!? あの異様なものは……)

「こちら西警備隊! 市内へ敵、侵入有り! 対処願う!」

 兵士長は必死に声を上げるが、魔法通信具からは混線混乱した他の部隊の音声が聞こえるばかりで、応答する者がいない。悲鳴のような悲痛な叫び声も聞こえる。そして、兵士長は全域通信から兵団本部へ切り替えるが繋がらない。


「……どうなっている」

 そして次の瞬間、耳を劈く爆発音と共に兵士長は意識を失った。


 ◆◇◆


 ここはゴロスネス市街地上空。

 攻撃型垂直離着陸機ベルーダ、ホーク隊、オウル隊30機がゴロスネス市街地へ空爆を開始していた。ピンポイントで警備隊駐屯所、守備兵団兵舎、守備兵団駐屯本部、兵団魔法士兵舎、統制本部、物資集積場、統制関連施設へ対地誘導弾を次々と発射して潰して行く。

 ホーク隊10機は上空で旋回待機して、脅威を発見次第、潰して行く。オウル隊20機は各機搭載した5発の対地誘導弾を指定された攻撃ポイントへ次々発射して行く。

「こちらホーク1! 下からワイバーンが上がって来た! 第2小隊潰せ!」


『了解! 目視確認! 急行します!』

 上空で待機していたホーク隊ベルーダ3機が市街地から飛び上がって来たワイバーン目掛けて直ぐに降下する。

 ワイバーンは火炎弾を発射しようと首を真っ直ぐにして羽をバタつかせていた。そこへ第2小隊のベルーダ1機が30mm機関砲を発射した。機関砲の閃光がワイバーンに到達、最初の数発は魔法障壁で防ぐが障壁は連続で当たる魔導特殊弾で粉砕され一瞬でワイバーンと搭乗騎兵は肉片と化した。そして粉砕された破片が無惨に市街地へ落下していく。

 そしてワイバーン騎兵駐屯所へベルーダから発射された誘導弾が命中して爆発爆炎を上げた。10騎ほどのワイバーンが地上で肉片となり絶命している。今回使用の対地誘導弾は弾頭に収納した小爆弾を拡散させ爆発されるもので1発で広範囲に被害を及ぼすものだ。建物には極力被害を与えず戦力を削ることに主とした弾頭を使用している。


 ベルーダ攻撃機オウル隊20機は搭載誘導弾、全弾を目標に放つと5分ほどで帰投して行く。

「こちらオウル1! 任務完了! 全機被害無し! これより帰投する!」


『フォートレス管制! 了解!』


 ベルーダ攻撃機オウル隊は西の空へあっという間に見えなくなった。ゴロスネス市上空にはベルーダ攻撃機ホーク隊10機が止まり脅威の排除を継続して行う。


 ◆◇◆


 ここはゴロスネス統制本部内、地下1階。


 統制担当官ベリアスは情報担当官ギリドバに急ぎ誘導され地下層まで避難していた。もし避難が遅れていたら先ほどの攻撃で死んでいたかもしれないとベリアスは思っていた。


 情報担当官ギリドバは地下1階備蓄倉庫内で懐中時計を見ながら考えていた。

(……なんと正確な攻撃タイミング……、メルティア様の念話から時計を正確に合わせるように言われていたが、誤差が無い……、どんな連携方法で攻撃しているのか? 通常遠隔連携の場合は1分ほどは誤差が生じてもおかしくないのに、この後空からの攻撃が30分ほどで終わり、地上部隊が市内に突入してくる)


「どうした! ギリドバ!」

 ギリドバが考えていると統制担当官ベリアスが苛立った声を上げた。


「いえ、まさか攻撃を仕掛けて来るとは思わなかったので……」

 情報担当官ギリドバは慌てて答えた。


「そうだな。確かに、ここを攻撃してくるとは、まだまだ準備には時間が掛かる予想だった……私の見込み違いだった……。これで皇帝陛下の信任も失った……」

 ベリアスが顔を顰め吐き捨てるように言った。


「ベリアス様、早急に脱出を、市内の全域で通信が取れません。大規模攻撃を受けているのは間違いないです。ゴロスネスは陥落するでしょう」

 唐突なギリドバの言葉にベリアスが声を上げる。

「なぜ、そうなる? まだ攻撃を受けただけで反撃はこれからだ!」


「ベリアス様、第一報では市内重要拠点へ攻撃を一斉に仕掛けたようです。しばらくすれば市内に軍勢が雪崩れ込んで来ます」


 ギリドバが諦めたように言うとベリアスが目を見開いて言う。

「まだ、諸侯の2万の兵がいる。ワイバーン、ゴーレム、重騎士、攻城魔法士だって残っている! 戦はこれからだ!」


 ギリドバがベリアスを見て悲しそうな顔をする。

「まさかその兵力を敵が放っておくとでも」


「……!? むざむざやられる訳は無かろう」

 ベリアスがそう言ってギリドバを見据えた。そして地下室に伝わっていた振動が止み静かになった。

 ギリドバが言う。


「とりあえず、ここを出ましょう!」

 ギリドバはメルティアからの念話で攻撃の詳細を知っている。第一波の空爆は5分程度で終わり空からの攻撃は単発的なものになると、地下道へ移動して攻撃を受けず統制担当官ベリアスを指定の場所へ誘導する、それがギリドバに与えられた任務だった。


 

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