390話 レンベル出撃
エリー達異世界派遣部隊はゴロスネスへ向け出撃する。
2国間和平交渉会議25日目早朝(大陸統一歴1001年11月7日5時頃)
ここは異世界、ローゼの隠し砦施設。ゴロスネス攻略作戦発動を受け各部隊が準備を終え、出撃体制に入っていた。隠し砦周辺は森が切り開かれ、周囲には整地された平地が広がっている。突貫工事で短時間で簡易飛行場、ミサイル発射管制施設、重装機兵整備ブロック、陸上部隊車両基地、もはや隠し砦で無く大要塞の様相を呈していた。異世界砦には順次、ヒイルズ孤島施設よりベランドル•グラン両軍より増援派遣がなされおり。兵力は装甲自走砲車両50両、機動装甲輸送車両30両、歩兵工兵大隊各1個、ベルーダ攻撃機20機、バルガ攻撃機20機航空群が到着し、今回の攻撃に加わる予定である。
そしてエリーは1時間前より重装機兵整備ブロックエリアへ来て、すでに朱色の重装機兵レンベルの最終チェックを終えていた。
エリーはコックピットから顔を出してレンベルの足元にいるボビー少佐に合図する。
「ボビーさん! よろしいですね! レンベル起動しますよ!」
エリーの合図を見てボビー少佐が笑顔で右手を挙げた。ボビー少佐は久々のエリーとの同一任務で嬉しそうに声を上げる。
「嬢ちゃん、了解! 接続ケーブル離線!」
ボビー少佐が周囲で待機していた整備将兵に声を上げ合図した。すると大型作業台車がレンベルより離れケーブルが離線される。そして接続ケーブル離線、プレートカバーロックを確認してボビー少佐がインカム越しに言う。
「嬢ちゃん、ケーブル離線完了! 起動してOKだ!」
「了解! レンベル起動します!」
エリーは直ぐにパイロットシートへ腰を入れ、違う正面パネルに視線を向けアラーム表示が無いことを確認する。そしてシート横に置かれているパイロットヘルメットを被りベルト固定金具をロックした。
エリーはシステム起動スタンバイボタンを押す。コックピット内の警告ランプが点灯して機体のスピーカーから女性の声でアナウンスが流れる。〈レンベル起動シーケンススタンバイクリア! 起動シーケンス、スタートして下さい!〉
エリーがコックピット正面パネルを見て確認呼称する。「起動異常アラーム無し! オールグリーンランプ確認! 起動シーケンス、スタート!」そしてセーフティーロックを解除、起動スイッチを押した。
重装機兵の融合炉が起動、高周波モーターの様な音が鳴り始める。
エリーはモニターを見て各関節稼働部コア、ジェネレータ出力数値を確認する。右手でモニター横のシールド安全装置を外しシールド開閉ボタンを押した。コックピット内にアラームが鳴り響き、レッド警告ランプがコックピット内で点滅してシールドがゆっくり閉まっていく。
エリーが再び正面パネル確認して呼称する。
「起動完了! 異常警告表示無し! 飛行制御システム異常無し! 機体制御システム異常警告無し! 兵装制御システム連動異常警告無し!」
エリーはヘルメットケーブル接続アタブタをもう一度確認してヘルメットシールドを下ろした。そして真黒だったコックピット180度モニターが点灯し外の景色を映し出される。
すでに重装機兵ラムザⅣ4機は起動してエリーの乗機レンベルを待っていた。
エリーは共通通信無線帯を選択して言う。
「こちらレッドリーダー! 各員、たた今より作戦発動! 順次出撃願います! 以上!」
《こちらフォートレスリーダー! 作戦開始定刻0630! 各部隊! 定刻まで現着後待機願う! 以上!》
隠し砦司令本部から無線連絡が入った。そして作戦開始時間に合わせて各部隊が慌ただしく移動を開始した。先ずは機甲部隊、歩兵部隊車両が移動を開始する。
エリーは無線を部隊内通信に切り替え言う。
「こちらレッドリーダー! これより重装機兵隊出撃します!」
アンジェラ中尉乗機、ラムザⅣ べランドル帝国軍仕様TYPE-C、艶消ブラックの機体がレンベルの前に移動して来た。
『レッド2号! アンジェラ先行します! よろしいですね! エリー様にはゴロスネスまで後ろで休んでいてください』
アンジェラの嬉しそうな声がヘルメットヘッドセットから聞こえる。アンジェラもエリーと作戦を共に出来る事に喜びを感じていつもよりテンションが上がっているようだった。
「では先行レッド2号! 後衛をレッド1号! 3号、4号で私の前後でお願いします。それではシンクロモードへ移行!」
エリーはそう言うと左右のレバーを離し、手前にある左右のスペースに手を入れた。機体のスピーカーから女性のアナウンスが流れる。
〈機体パイロット認証システム作動! 認証しました! エリーブラウン確認! シンクロパイロットシステムモードに移行確認!〉
重装機兵5機が歩行して整備ブロックエリアから外部エリアへ移動する。
「レッド隊、只今より、ゴロスネスへ移動します」
《了解です! 準備完了!》
ラムザⅣ4機から応答無線が入った。エリーはモニターの情報表示を確認してホバリング装置を起動した。各重装機兵が2mほど浮遊すると、アンジェラ搭乗ラムザⅣが先頭を切って勢いよく飛び出すと、それに続いて3号機、レンベル、4号機、セーヌ大尉搭乗1号機がホバリング走行を開始した。重装機兵隊はあっという間に時速80キロに到達、全域データリンクで街道沿いの障害物はすでに確認、除去整地済みであり問題は無い。
そしてゴロスネス上空には早期警戒管制機イーグルアイTYPEーA、B2機が旋回警戒中で、周囲1000キロは敵の戦力配置状況等、詳細に把握していた。今回の作戦は派遣隊航空隊第1波攻撃によりゴロスネス防衛拠点を空爆により開始される。そして重装機兵隊によるゴロスネス市北部郊外、集結敵諸侯2万兵力の分断、押し返しを行い。航空隊第2波攻撃により無力化する。そして機動歩兵大隊、機甲大隊が市内へ突入して制圧完了の予定である。抵抗残党処理はエリー大隊特殊作戦隊が行い排除する、予定時間10時間の作戦である。
エリーはバイザーデーター表示を見て通信回線を繋ぐ。
「こちらレッドリーダー! フォートレスリーダーへ、魔法障壁展開は予定通り完了していますか?」
リサの声が無線から聞こえる。
『こちらフォートレスリーダー! 予定通り半径70キロ圏まで展開完了しています。通報されることは有りませんので、安心して潰してください! 以上!』
「レッドリーダー! 了解! 5分後に接敵! 防衛陣地突破します! 後処理はフォックス隊に任せるのでよろしくお願いします」
『フォートレスリーダー! 了解しました! すでにフォックス隊は周辺で待機中です! 安心して突破してください! 以上!』
「レッドリーダー! 了解!」
エリーは部隊通信へ切り替え言う。
「こちらエリー! 各員戦闘準備! 適時射撃攻撃を行いつつ突破します」
『了解です! 私が前で初撃でよろしいですね』
アンジェラが嬉しいそうな声が無線で聞こえた。
「アンジェラさんにお任せします」
エリーは答え、エリーはふっと息を吐き、モニターを確認する。機体スピーカーからアナウンスが流れる。
《戦闘モード通常モードよりモード3に移行! 機体相互リンクシステム起動確認! 相互間リンクシステム連動確認! 防御シールド展開確認!〉
エリーは声を上げた。
「みんなそれじゃ! 行くよ!」
まだ周囲は陽が登っておらず周囲は肉眼では薄暗い。そして重装機兵5機は隊列距離を若干広げてさらに加速。時速100キロを超えた。今回ラムザⅣが装備している魔導ライフルは近距離戦闘用で、1発の威力は低いが5連射まで可能、市街戦や動きの早い接近戦を想定したライフルである。もちろん木造構造物など1連射で木っ端微塵に吹き飛ばす威力は持っている。
重装機兵隊5機はヴェレン守備兵団副長率いる500名の守備陣地へと接近する。
アンジェラから無線が入った。
『正面の見張り櫓破壊します! そのまま単射を繰り返し突破しましょう!』
「レッドリーダー! 了解!」
重装機兵5機は森林から抜け低層樹木エリアに入る。距離1キロほど、当然相手は重装機兵5機を認識している。防護柵周辺の兵士達が騒ぎ始め動き出す。防護柵の奥に見える無数の野営テント周辺では兵士達は確認出来ない。まだ、起床してないものと思われる。
アンジェラ搭乗機ラムザⅣは移動しながら上空に向けて単射を3回繰り返した。周囲に響く発砲音、防衛陣地では驚き逃げ惑う兵士達。
10mほどの高さの木造見張り櫓にラムザⅣのライフル弾が数発命中し櫓全体が爆砕した。
ラムザⅣのコックピット内でアンジェラは周辺モニターで周囲を的確に確認しながらライフルを射撃する。ラムザⅣのコックピットモニターとヘルメットバイザー射撃照準システムは射撃効果命中を自動判定、次弾にフィールドバックする。今回はさらに魔導演算装置のバージョンアップがなされてレスポンスが向上している。アンジェラはターゲットロックの点滅を見て性能向上の感心していた。
重装機兵4機は防御シールドを展開、先頭のアンジェラ搭乗2号機の後方を追従する。途中、弓矢などの攻撃を受けるが脅威になり得ない。少数の魔法士が火炎魔法で攻撃して来るも防御シールドを貫通するほどの威力は無かった。やはり一方的な蹂躙でしか無い。
エリー達、重装機兵5機は難なくゴロスネス防衛陣地を突破した。
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