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378話 迫る軍勢42

エリーはエランと久しぶりの会話を交わす。

 2国間和平交渉会議24日目早朝(大陸統一歴1001年11月6日5時頃)


 ここはベランドル帝国帝都ドール市郊外の帝都防空航空隊基地。航空基地司令部建物3階応接室。


 エリーは定刻通りに到着、軽く打ち合わせを行い、今は部屋にエランと2人きりだ。


「お姉様、ご心配をお掛しました。しばらくお姉様にも頑張ってもらわなければなりません」


 ソファに横になりだらけた顔で頭だけエランの方に向けている。とても皇帝として敬う態度では無い。隣りに座るエランは、それでも嬉しいそうにエリーの紫色の髪を撫でながら優しく言った。


「ええ、承知していますよ。エリーの思うようにやってくれれば結構です。マナ鉱石は絶対に手に入れて欲しいです」


「ドリスデン世界に多分問題は無いと思うのですけど……ただ気掛かりがあるのです。孤島へアクセリアルの特殊部隊が潜入した事です。女神セレーナの隷属契約で配下としましたが、限定的情報しか引き出せませんでした。防衛体制は強力に敷いていますが。ただの偶然とは思えません」

 エリーは相変わらず、だらけた顔でエランを見て言った。エランは理解しているエリーがこんなだらけた顔をするのは信頼して心を許している者達だけだと。だから怒らず嬉しそうにエランは対応していた。


「大陸東海域へのアクセリアルの艦艇等の確認はされていませんね。侵入したのは潜水艦でしょうか? 西海域ではここ最近、哨戒網に所属不明の潜水艦が確認されていますが……」


 エランが微笑みながらエリーを猫のように撫でながら言った。


「……潜水艦!? グラン連邦の対潜探知能力は飛躍的に向上していますが……それでも探知出来ないとなると厄介です。ヒイルズ帝国との暫定協定締結を急ぐ必要がありますね。クリフォード王国からだと航空隊の哨戒範囲が限られますから」

 エリーはソファの上で転がり上体を起こす。


「孤島への航空隊と特殊部隊配置は終わっているにでしょう?」

 エランは起き上がったエリーの朱色の瞳を見つめて尋ねた。


「ええ、まあ……ユーリさんが居ますから、大丈夫だと思います」

 エリーはソファに深く座ってはーーっと、息を吐く。


「……ソアラちゃんも孤島にいるはずですね。会いたいですね。あの子はなんとなく癒されるのですが」

 エランが少し寂しそに言った。


「……!? あゝ、ソアラちゃんは今、絶対に外せない任務なので」

 エリーは素っ気なく答えるとエランは少し微笑みながらエリーを見つめて。

「……トッドさん、忙しくそうですね」


「トッドさんは今は、大陸諸国の裏工作中ですね。しばらく修練もしていないので会いたいです」


 エリーの無線電話が鳴る。直ぐにエリーはテーブルの無線電話を手に取った。

「はい、エリーです。了解しました。ええ、30分後に」


 電話の相手はニコルだった。派遣部隊の準備が整ったとの連絡だった。

 エランはエリーと視線を合わせて頷いた。

「……ここからはローラですね。各部隊長には大魔導士ローラが指揮を執ると伝えています。ローラの名は皆に安心感を与えます。私がローラの名を出した時の皆の表情の変わりようは少し嫉妬しましたよ。作戦の成功を祈ります」


「はい、お姉様、安心してお任せください」

 エリーはそう言って隠蔽偽装スキルを発動した。そして黒縁メガネを掛けて言う。


「では、参りますか! 陛下もお言葉をお願いします」

 すでにエリーは皇帝護衛隊の魔導士用軍服を着用していた。左胸には金色の大魔導士章が輝いている。


「ええ、行きましょう」

 エリーが応接室のドアを開けて控えると、ゆっくり頭下げる。

「……エリー! まったく!」

 エランが笑って言う。エリーは意地悪い顔をして答えた。

「私はローラ•ベーカーです。エラン陛下の臣下です。お忘れなきよう」


「ええ、承知しました」

 エランは短く答えると微笑み廊下へと出た。エリーが応接室のドアを閉めて一緒に歩き出す。

「エリー、……いえ、ローラしばらく会えないですね」


「まあ、1週間ですね。1週間全力でやらせていただきます! 圧倒的、理不尽なチカラを……」


 エリーは真剣な顔で言うとエランを追い越し前を歩き出す。エランは凛々しい妹の見て自分も覚悟を決めて言う。


「ローラ! こちらは任せてください! あなたを呼び出すことがないよう」

 エランは皇帝の軍服の金刺繍の襟を整えてエリーの隣りに並び立ち、2人は早足で廊下進んで行った。


 ◆◇◆


 少し時間が経過して、ここは孤島。


 北山の見張り台でユーリが観測用暗視望遠鏡を覗き込んでいる。


「……誤報ですか? それなら良いのですが。アテナ号に再度対潜哨戒を指示をお願いします。周辺は水深が浅いので探知されず接近するのは不可能です。それに海底感知器も各ポイントに設置されているので、まず周囲20キロ圏内で察知出来ないことはあり得ないですが。念には念を、追加でグラン連邦国軍参謀本部へシーウルフの増派を要請してください。現在、2機運用では哨戒範囲が限られます。せめてあと2機は欲しいと、ローラ様の要請だと伝えてくださいね。動きも早くなります」


 ユーリが観測用暗視望遠鏡から離れて隣りの女性士官に指示を出した。


「はっ! ユーリ司令、了解しました!」

 女性士官はユーリに敬礼すると向きを変え見張り台の階段を駆け降りて行った。


 ユーリは東の海上を見つめるまだ陽は昇っていない。ユーリは見張り台の手摺りにもたれ掛かりふっと考える。

(……アクセリアル、私達は対抗出来るのでしょうか……、エリー様……。女神の遊戯……なんとふざけた!)

 ユーリは一瞬顔を歪めると手摺りを右手で叩いた。後ろにいた見張り員の驚いた皇帝護衛隊下士官がユーリに声を掛ける。

「……ユーリ司令、どうかされましたか?」


「……いえ、大丈夫です」

 ユーリは振り返り微笑み答えると下士官に敬礼して見張り台の階段を降りて行く。


 


 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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