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375話 迫る軍勢39

エリー大隊より編成された異世界派遣部隊が出撃する。

 2国間和平交渉会議23日目夜(大陸統一歴1001年11月5日22時頃)


 ここはグラン連邦国首都べマン市、東部首都防衛隊基地内、外事局特務対策課、エリー大隊本部。

 大隊本部ブロックエリア内に500m四方の重装機兵訓練スペース。

 そこに今回、異世界派遣隊のメンバー300人が集められていた。ラムザⅣ重装機兵4機、レンベル改1機、装甲機動車両10、120mm魔導砲機動車両5、重装機兵機動車両5、装甲高機動車両10、エリー大隊特殊作戦小隊3部隊。

 20分ほど前にエリーから全員へ、今回の作戦内容が説明され、部隊員達に驚きと緊張感がまだ収まっていない状況だった。作戦域が異世界だとは、そして相手の情報はまだ十分に開示されていない。


 整備技術担当責任者ボビー少佐は、エリーと話しをしている。

「嬢ちゃん、転移は技術的に大丈夫なのだろうな。転移でレンベルが壊れたりしたら大変だ! システムは全てシャットダウンするが、なにせ初めててのことだ何が起こるか予想出来ない」


「多分問題は無いと思いますよ。多分ですけど」

 エリーは曖昧に答えるとボビー少佐は機嫌の悪い顔をする。


「……まあ、とりあえず無事に現地に着けたら良しとするか」

 ボビー少佐が答えるとエリーは微笑み言う。


「それではボビーさん定位置へ移動してください。転移魔法陣を発動展開します」


 エリーはそう言って伝心念話で中継点のソアラを呼び出す。

〈ソアラちゃん! 準備は完了していますか?〉


《はい、準備は完了しています。リサさん側もスタンバイ完了しています。いつでもOKです。ただ、問題が途中で発生しても中断は出来ないので、承知しておいてください。問題は起こらない事を祈っております。では》

 孤島で待機中のソアラが答えた。


〈はい、了解です。予定通りの時刻に転移発動します。それではよろしくお願いします〉


 エリーは伝心念話を一旦切ると、後ろに控えていたボリスがエリーの横に来る。

「エリー様、転移魔法陣準備しますがよろしいでしょうか?」


「ええ、魔力量は私が補完するので、安心してください」

 エリーはそう言ってボリスの緊張した顔を見て微笑んだ。既にエリーはセレーナによってボリスの転移魔法術式を分析解析、自分でも発動出来るレベルに達していた。しかし、それは理論上で有り、実際には未だ、実践成功していない。今回、ボリスの転移魔法を補完、同時発動して状況を確認するのである。

 ボリスの魔法能力はセレーナの洗礼によって大幅に向上しているが、それでも周囲200mが限界である。それをエリーが補い術式展開範囲を周囲500m拡大するものである。それに加えて孤島の異空間転移装置もソアラとリサにより連動させ一気にローゼの隠し砦施設敷地へ転移移送する大規模なものであった。失敗すれば転移対象物は消失の恐れもあるのだが、セレーナの事前シュミレーションでは問題は無かった。


 エリーは何度も深層域のセレーナに確認をしているが、不安が無いわけでは無い。しかし、リーダーであるエリーが不安を口にする訳にもいかないから自信のある表情をしている。


 当然、不測の事態は起こらない様、孤島の警備体制はグラン連邦国軍が万全を期している。ローゼの隠し砦施設周辺もブラウン商会特殊部隊が警備を行っていた。

 エリーがヘッドセットから派遣隊各部隊長へ指示を出す。

「それでは、各隊! 注意事項確認! デバイス、各機器、電源off、停止を再度確認してください! 通信終了後、通信機器も元電源offにしてください! 以上!」


『了解!』

 しばらくして各部隊長が前に出てエリーに報告する。そしてエリーはボリスに声を上げる。


「ボリスさん! 転移魔法術式発動!」


「はい、承知しました!」

 ボリスはエリーの顔を見て答える。そして魔法の杖を高く掲げて、念じると広場の中央に白く輝く魔法陣が現れ拡大していく。エリーは魔力量を上げ薄紫色の光に包まれると両手を広げる。エリーから光の帯が魔法陣へ注がれた。白く輝く魔法陣が徐々に広がり、派遣部隊全域を包み込んだ。


 ボリスが声を上げる。

「術式展開完了! 転移発動!」


 派遣部隊の待機している周辺が眩い光に包まれる。そして更に激しく輝くと光の粒子が周囲に散らばり一瞬にして派遣部隊が目の前で消失した。今見えるのは広場が有るだけだ。


「……とりあえずは……」

 エリーが声を漏らした。


「発動に問題は有りませんでした。乱れも無いので大丈夫です」

 強張った顔のボリスがエリーを見て言った。


「ええ、問題は無いはず……、ですね」

 エリーは微笑み大隊の何も無くなった広場を見つめる。


 ◆◇◆


 ここはベランドル帝国帝都ドール郊外の帝都防空航空隊基地。


 先ほど皇帝エランがビア皇帝護衛隊副長を伴って訪れていた。皇帝の突然の訪問に慌てる航空隊将兵達。


 基地司令、カーチス少将は皇帝訪問の知らせを受け、一度帰宅していたが慌てて基地に戻っていた。

 カーチス少将は特別部隊が基地内で編成準備していることは知っていたが、作戦内容までは知らされていなかったのである。


 皇帝エランは応接室で待っていると大慌てでカーチス少将が入って来た。

「エラン陛下! 突然のご訪問、いかがされたのでしょう」


 エランは椅子からゆっくり立ち上がり微笑む。

「カーチス司令、あなたの部下には連絡しなくて良いとお伝えしたのですが」


「……いえ、そんな訳には……」

 戸惑うカーチス少将。


「今回は、特にあなたに関係がある訳じゃあ無いから良いのです。お宅へ帰ってお休みください」

 エランが微笑み言うと、カーチス少将の顔が怯えたように歪む。


「……陛下、それはあまりにも……」


「……まあ、そんな顔しないで、私、冷たかったかしら」

 カーチス少将は、エランの幼少期2年ほど家庭教師をした事があり顔を知っていた。


「……ええ、とても悲しくなりました」

 思わず本音を漏らすカーチス少将。


「カーチス司令、じゃあ教えてあげる。ローラが帰って来るの。でもすぐに出て行くから、ここでしか会えないのよ」

 エランが嬉しいそうに言った。


「……あの、特別編成部隊はローラ様のためだと……。しかし、戦闘が行われるとの情報は入っていませんが」

 落ち込んだ様子のカーチス少将がエランの顔を見て言った。


「言っておきます。特別作戦です。超秘匿事項です。直接関係者以外は内容は申し上げることは出来ません。あなたが基地の責任者だとしても関係者では無いので申し上げてません。ごめんなさいね。カーチス」

 エランは前に出ると立っているカーチス少将の手を取った。


「……はい、そうでしたか。これ以上は無理ですね」


「私はもっと秘密裏に訪問すべきでしたね。カーチス司令傷付きましたか?」

 エランがカーチス少将の顔を見上げて少し申し訳無さそうな顔をした。


「いえ、陛下のご配慮に感謝致します。ご立派に責務を果たされている姿を見ると、陛下はやはり凄いお方なのだと改めて思います」

 カーチス少将は目を潤ませて答えた。


 エランはカーチス少将の手を優しく解くと微笑み言う。

「じゃあ、ゆっくり休んでくださいね」


「……はい、承知しました。今回の件は関わるなとおっしゃるのですね。では、お言葉に従います」

 カーチス少将はゆっくり一礼すると応接室から出て行った。


 隣りに控えていたビアがエランに尋ねる。

「カーチス司令……もう少し違う感じかと思いました。意外でした」


 エランがビアの顔を見て微笑みながら言う。

「ビアさん、騙されたのですね。あのカーチスさんは食わせ物です。凡庸に見えたのならビアさんはまだまだですね。カーチスがいなかったら今、私はここにいなかったかもしれません。ガルシア近衛兵団長とカーチスは陰で支えてくれましたから……。アイクル政権下で上手く立回り生き残って、航空兵器の運用に関しても先見の明が有りました。航空関連おいては特に優秀です。本来は航空参謀部長に任命したかったのですが、自分は現場が良いと断られたました。カーチスは今回の作戦について概要はもう把握していると思います。たぶん……ワザと来たのですよ。ああやって芝居じみた態度で確認に来たのです」


 ビアは琥珀色の瞳でエランを見つめてから頭を深く下げた。

「陛下! 申し訳ありません。私が他の人を評価するなど……、失礼しました」


 エランは少し笑って言う。

「いいんですよ。私は気にしません」


 エランが壁の時計を見て言う。


「グランの第1陣が出発しましたね。エリーは4時くらいですかね」


「そうですね。まだ5時間ほど有りますが……」


 ビアが答えるとエランは嬉しいそうに言う。

「城の中ばかりだと疲れが取れませんから、外に出たいのです。それに、セーヌさんとアンジェラさんがもう到着するはずです。会ってお話しをしたいですね。アンジェラさんとは気が合うのです」


 ビアが困った顔をしてエランを見つめる。

「私は皇帝護衛隊副長です。陛下の健康管理も職務ですので、仮眠は取ってください。セリカ隊長のような厳しいことは出来ません。陛下のご自覚にお任せいたします」


「ありがとう。ビアさんはまだまだですね。セリカさんの様にはなれませんね」

 

 エランは微笑みビアの肩に手を優しく添えた。


 


最後まで読んでいただき、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。

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