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374話 迫る軍勢38

異世界ガーダ帝国、皇帝グリスダースはメルティアの出現により対策を進める

 2国間和平交渉会議23日目夜(大陸統一歴1001年11月5日21時頃)


 ここは異世界ガーダ帝国帝都バークエイ。


 ガーダ帝都皇城、帝国執行部皇帝の間。

 50畳ほどの空間に豪華な調度品が置かれ毛足の長い絨毯が敷かれている。皇帝グリスダース、帝国最高執行官ドリキスと2人が向かい合わせで立っている。皇帝グリスダースは身長2m近くあり、帝国最高執行官ドリキスを見下ろしていた。


「ドリキス……報告は青騎士から受けている。ベアリスから援軍要請があったことも……。ゴロスネスが襲撃を受け被害が出ていることもな。なぜ報告を上げなかった? 大賢者メルティアが現れたそうではないか? これは小さい問題なのか? 本来は、我に直ぐに報告すべきことでは無かったのか」


 皇帝グリスダースから最高執行官ドリキスは威圧感におされていた。


「……真偽の確認に手間取り……、ご報告が遅れました。申し訳ございません。グリスダース様のお手を煩わせることになる様な事案では無いと判断しておりました。本当に申し訳ございません」


 最高執行官ドリギスはその場にひれ伏して頭を下げた。


「……! よい! 当然、手は打っているのだろうなぁ……」

 皇帝グリスダースはひれ伏す最高執行官ドリキスを冷たい感情の無い目で見下げる。


「……はい、まだ、メルティア側は戦力は大した数は集まっておらぬ状況、せいぜい集めても3千足らずと。S級クラスの術者も数名いるようですが。問題にはならぬものと……、周辺諸侯より至急3万の軍勢を編成、ゴロスネスへ向かわせているところです。1万は明日にはゴロスネスに到着する予定です」


 最高執行官ドリキスは顔を上げて皇帝グリスダースを見上げる。皇帝グリスダースは相変わらず冷たい目で見ている。怯える最高執行官ドリキス。


「……ドリキス、我は、黒騎士隊が全滅したことは知っているのだぞ。S級クラスが数名? 問題無い? どうしてそのような言葉が出る。黒騎士隊ボリスは帝国でも指折りの魔法士なのだぞ。部下達もかなりの手練だ。それがやられたのだぞ。数の問題では無い、メルティア以外にとんでもない魔法士がいることは間違い無い。ドリキス……、お前は状況を理解しているのか? 直ぐに帝国中の戦力を総動員出来るよう手配しろ!」


 最高執行官ドリキス怯えた顔で鍛える。

「はい、総動員を発令致します」


「それと、ゴロスネスへは帝都ワイバーン騎士隊100騎すぐに向かわせろ。周辺諸侯へ持てる兵力全てを拠出せよと。10万規模の編成とせよ。早めに潰さないと、大事になる気がする。それとガーギアのグラムス公をこちらへ至急、呼べ! 悠長に構えている時では無い! これは一大事と心得よ!」


「はっ! 承知しました!」

 最高執行官ドリキスは慌てて立ち上がり、皇帝グリスダースの顔を見て一礼すると部屋から大慌てで出て行った。それを冷たい目で見送る皇帝グリスダース。


(……ドリキス、役に立たない奴だ。ボリスくらいを側に置いておけば良かったか……。今更か、大賢者メルティアに付いている者が魔王とも女神ともいう噂が流れている。気掛かりだ……)

 皇帝グリスダースが奥の庇を捲ると奥から魔導着を羽織った黒髪の女性が現れる。


「グリスダース様、何なりと」

 黒髪の女性は跪き頭を下げた。


「至急、西部領ゴロスネスへ向かい大賢者メルティアを始末せよ。出来るかどうかわからんが……、黒騎士ボリスを退けた強者がいる。万全の備えで事にあたるように」


 皇帝グリスダースが黒髪の女性に少し微笑んで言った。

「はっ! 了解致しました! それでは赤騎士隊総力で事にあたります。ご許可を」


「許可しよう。赤騎士隊総力を持ってことを成せ」


「はっ! 承知致しました! では、今より整い次第出ます! 吉報をお待ち下さい!」

 黒髪の女性はそう言うと瞬時にその場から姿を消した。


(内部の勢力を削り、我が一族を盤石にしたのはよいが地方に有力者が居ないのは少し痛かったか……。3卿を潰したために、やはり、こう言う時に即応性が無い。まあ今の段階なら潰せるであろうが、メルティアのバックに付いて者の正体が不明なのが、やはり気掛かりだ。早急に明らかにしなければ、メルティアを潰してもダメな気がする)


 皇帝グリスダースは考えを巡らせる。部屋の端にある通信魔法具に触れる。


「ゴロスネスの担当官ベリアスを呼び出してくれ。我が話しをしたいと」


 魔導具に写し出された担当官の強張った顔が慌てて対応する。

「……皇帝グリスダース陛下!? 申し訳ございません! 直ぐに……折り返し……」


「よい、折り返しベリアスに連絡を入れてくれるよう伝えてくれ」

 皇帝グリスダースは慌てふためく担当官の様子を冷たい目で見て言った。


「……はっ! 直ぐにお伝え致します!」

 そして一旦、通信魔法具の映像が消えた。皇帝グリスダースは魔法具から離れ、皇帝用の豪華な椅子に腰を下ろす。

(……我が出るしかないかもしれんな……。嫌な予感がする。西からのタダならぬ気配……、はっきりとは感じ取れんが、2日ほど前に一瞬、膨大な異様なチカラを感じた。聖なるものとも邪悪なもとも違う異質な全てを呑み込むような……)

 皇帝グリスダースは、なんとも言えない恐怖感に包まれていた。


 ◆◇◆


 ここはローゼの隠し砦施設。

 リサはブラウン商会特殊工作隊と共に施設東側の樹木を伐採して広場を構築していた。広さは500m四方を2ブロック。


「エリー様の指示通りの大きさは確保しました。クリス隊長! 根っこの処理は確実にお願いします!」

 リサが手前で図面を見ている男性に声を上げた。

「はい、最終確認は30分で終わるはずです」

 周辺は魔導照明で明々と照らされている。クリス隊長と呼ばれた男性はにこやかに答えた。


「……本当に助かりますました。本来は孤島の飛行場建設のはずが……、クリス隊長、申し訳ありませんでした」

 リサがクリス隊長に丁寧に頭を下げた。


「いえいえ、ハリー部長からも指示がありましたので、こちらが優先です。まあ、連続の仕事は少々疲れましたが……」

 クリス隊長は何でもないように答えた。


「クリス隊長、ここでのことは特定秘匿事項に指定されています。各隊員の皆さんへ周知は再度徹底してください」

 リサが少し疲れた顔でクリス隊長に言った。


「もちろんです。ブラウン商会の鉄の掟は破ればどうなるか全員理解しています。出発前に説明はしています。ご安心を」


 クリス隊長はそう言って作業をしている隊員達の方へ向かった。リサは後ろで機器の調整をしている女性魔道士に話し掛ける。


「どうですか?」


 皇帝護衛隊のカーキ色軍服を着た女性魔道士が答える。

「はい、展開準備は完了です。リサ様、最終確認をお願いします」


 リサは端末のモニター表示見つめてキーボードを操作する。

「……シルビア大尉はさすがですね。魔導回路の接続、起動状況は問題無いと思います。指定出力のテストも問題無かったので、あとは本番だけです。ご苦労様でした」


 リサが振り返り女性魔道士の顔を見つめて微笑んだ。

「……ええ、はい、お言葉をありがとうございます。リサ様に褒めてもらえて光栄です」

 女性魔道士は嬉しいそうに答えた。


「本当に、シルビア大尉をはじめ、皇帝護衛隊には優秀な技術魔導士が多くて助かります。私だけではとてもじゃないです。無茶な命令を遂行出来るのもシルビアさん達が尽力してくださるお陰です」


 女性魔道士は少し照れた顔をしてリサに敬礼する。

「褒めすぎです……。私はローラ様やリサ様のお役に立てれば何よりです。私は魔道士としてリサ様を尊敬しています。その若さでローラ様直属魔道士なのですから、特級魔道士としても卓越した魔導技術もローラ様以外対抗出来るお方はおりません。私など上級魔道士として皇帝護衛隊で任務にを出来るだけで幸せに思っております」


 女性魔道士が答えると、リサが笑って言う。

「……ありがとうございます。シルビア大尉! 期待を裏切らないように頑張ります」


 リサは女性魔道士に一礼すると、ローゼの隠し砦施設入口の方向へ歩き出した。

 


 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。

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