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372話 迫る軍勢36

エリーは異世界派遣部隊の準備を進める

 2国間和平交渉会議23日目夜(大陸統一歴1001年11月5日19時頃)


 ここはグラン連邦国首都べマン市、東部首都防衛隊基地内外事局特務対策課、別名エリー大隊本部。


 大隊本部ブロックエリア内に500m四方の重装機兵訓練スペースがある。そこへ今エリー達の搭乗するランカーⅡ5号機が上空200mほどでホバーリング高度を下げ着陸体制に入っていた。そして地上の管制誘導員が両手で誘導灯を振っている。


 キャビン内へスピーカーからカーター機長の声がする。

「これより着陸します! 振動揺れがあるのでシートに座りベルトは外さず着用そのままでお願いします」


 異世界3人組にはエリーが大陸共通語に関しては言語スキルを付与して理解出来るようにしてある。エリーは微笑み隣りのメルティアを見つめて言う。

「着きました。メルティアさん達はとりあえず機内で待っていてください」


 メルティアは頷く。

「……はい、エリー様、お尋ねしてもよろしいでしょうか……」


「うん、なに?」


「はい、この世界は精霊の力を感じません。それにマナも希薄です。どうしてでしょうか?」

 メルティアの問いに対してエリーは間を置いて答える。


「それは、この世界がそうなっているから、答えになっていないかもしらませんが、精霊はこの世界には存在しない、そしてマナエナジーもメルティアさんの世界と比べると濃度はかなり低いですね。50から100分の1といったところです。でも特に不便はないですね。マナ圧縮技術がありますから、この世界では魔法士を魔道士と呼んでいます。魔道士はマナを吸収圧縮貯蔵出来るスキルを有しています。魔道士のレベルはマナの吸収速度、圧縮技術、術式展開レベルを総合的にどう扱えるかによって決まります。まあ、メルティアさんは特級魔道士ですけどね。この大陸には特級レベルは私の周りの者を除けば10人いるかどうかです。ただメルティアさん達の世界とは魔法技術は異なります」


 エリーがそう言っている間にランカーⅡ5号機は着陸して、搭乗員が搭乗ドアを開放した。

「エリー様! どうぞ!」


 搭乗員がハンドルを操作して昇降タラップを下ろした。エリーはベルトを外し立ち上がると前に座っているニコルに声を上げた。

「ニコルさん! メルティアさん達をよろしくお願いします。私は打ち合わせがあるので、30分後に集合でお願いします」


 ニコルは通路側でエリーを見て一礼する。

「はい、承知しました」


「皆さん、ニコルさんの指示に従ってくださいね。私は用事を済ませます」


 ボリスとカルヤがエリーに一礼する。エリーは右手を軽く上げると搭乗ドアから機外へと出て行った。遅れてニコルを先頭にメルティア達がタラップを降りた。目の前に軍服を着た女性士官が立っている。そしてニコルに敬礼する。


「ニコル中尉! ヤルクと申します! 案内役を仰せつかりました。それでは皆さまを部屋までご案内致します」

 ローブのフードを深く被った3人を見て女性士官は少し戸惑った顔する。


「ヤルクさんお願いします。こちらの方々は国家の重要来賓です。見た事は語らないようお願いします」


「……はい、承知しております」

 女性士官はニコルに答えると向きを変え本部建屋へゆっくり歩き出した。



 ◆◇◆



 ここはべマン市北区高級住宅街、アーサー卿の邸宅。


 30畳ほどの豪華な居室内でアーサー卿がソファに座りファイルに目を通している。居室のドアが軽くコンコンとノックされた。

「入れ!」

 アーサー卿が答えると、老練そうな執事がドアを開け入室して一礼した。


「アーサー様、エリー様が到着されたようです。玄関前にお車は待たせております」

 アーサー卿は少し嬉しいそうな顔をしてソファから立ち上がる。


「承知した。直ぐに出る」


「はい、では」

 老練そうな執事はドアを開けて横に控えると一礼する。アーサー卿は廊下に出ると執事はドアを閉めてアーサー卿の横につき小声で言う。


「不明な同行者が3人いるようです。今、確認させております。所在が4日ほど掴めなっかた事と関係があるものと思われます。ヒイルズ帝国関係者なのか? どうか……、孤島での情報収集は難航を極めております。ガードが固く詳細な情報が掴めていません」


 執事の報告にアーサー卿は頷き廊下を歩き進みながら言う。

「エリー様はその件で面会を求めてきたのでしょう。情報収集は継続でお願いします」


「はい、承知致しました」

 執事は抱えているコートをアーサー卿に羽織らせる。アーサー卿はコートの袖を通して再び歩きロビーを目指して階段を下り始めた。


 ◆◇◆


 ここはベルニス王国首都アレサンドリア市、王城の行政執行官室。


 行政執行官ウィン•フォルズは陸軍参謀から報告を受けていた。ウィンは現在、実質的なベルニス王国のトップである。動乱以降の国内のゴタゴタを抑えて内政の掌握を完了していた。


「グラン連邦国軍、ミサイル連隊が西の駐屯地からドール市近郊へ移動した模様です。作戦目的は不明、定期移動かもしれません。ベランドル帝国内の航空隊の移動も一部見られました。中隊規模の編成でドール市へ移動したとのことです。ローラ様に関してですがヒイルズからの移動は確認されておりません」


 ウィンはファイルをテーブルの上に置くと陸軍参謀を見て微笑む。

「1週間以上ですか? ヒイルズになにがあるのでしょう。オオカワ市で騒ぎが起こったようですが。そのあとローラ様の動向が掴めませんね。ベランドル帝国内の情勢も特に変わった事はないのですが……。ローラ様の所在がヒイルズ帝国内で途絶えて5日以上です。何か大きなことが起こっていると見るべきでしょう。諜報部長に伝えてください。グラン連邦国とベランドル帝国の動きは細かくチェックするように」


「……ええ、はい、了解致しました。諜報は全力で探っていますが……。ベランドルもグランも中枢への諜報活動はかなり困難を極めているようです。あまり探りを入れると、こちらが勘ぐられても困るので……」


 ウィンは陸軍参謀を見て少し機嫌の悪ような顔をする。

「……あなたは、理解していないのですね。これから起こる事象は全てローラ様を起点として始まるのです。ローラ様の動向を探りお手伝いをするのです。これは私の本意です。出来ればお側でお支えしたいのですが……。ベルニスを放り出す訳にもいきません。大陸諸国は一応相互間条約に加盟したといえ、まだ不安要素はあります。情報は出来る限り集める、そしてローラ様の障害は排除するのです。理解したのなら諜報部長へキチンと伝えてください」


 陸軍参謀は強張った顔をして敬礼する。

「はっ! 理解しました。それでは失礼致します!」


 陸軍参謀が部屋から出て行くとウィンは窓の港の風景を眺める。

(最近、アクセリアルの偵察活動が活発化しています。ローラ様の予想より早まる可能性が……。まあ、ローラ様なら当然気づかれていると思いますが。……ローラ様と一度お会いしてお話しをしたいですね)

 ウィンは銀縁メガネを外して息を吐く。そしてメガネを掛け直しテーブルの上の大陸地図を眺める。

(……分身体がローラ様の近くへ飛ばせ無い……。今どこに居られるのでしょう)


 ウィンは寂しそうな顔をして執務机の椅子の方へ向かうと受話器を取る。

「ベランドル帝国マーク宰相閣下へ繋いでもらえますか」

 ウィンは電話交換士へ伝えると受話器を一旦戻し回線が繋がるのを待った。

 

 


 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。

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