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368話 迫る軍勢32

エリー達はゴロスネスから撤退準備する

 2国間和平交渉会議23日目朝。(大陸統一歴1001年11月5日9時頃)


 ここはエルフの集落から東へ100キロほど離れた西部統制都市ゴロスネス、中心部の地下道内。

 エリー達は黒騎士隊の秘密施設を目指して地下道を移動してした。エリー達は救出したエルフ達3人も一緒だった。あれから監獄施設は警備兵、収容者全員を外に出してから、エリーが魔法球を何十個も形成して監獄地下層へ送り込み、爆散炎上させて使用不可能にした。エリーが監獄地下層に一旦戻ったのは警備兵達を死なせないために連れ出したのであった。特に3階層警備兵達には今後、メルティアとの約束を守るために、生きて苦しみを味わってもらわなけらばならない。


 真っ暗な地下通路をエリーの発光する魔法球を先頭に進む。

《エリー様! ご指示通り、警備詰所を攻撃、兵団宿舎も破壊活動を完了しました。現在駐屯警備体制は指揮系統が混乱、まともに対応出来る部隊はおりません。あと残っていたワイバーンも翼にダメージを与え飛べないように致しました》

 ランディからの伝心念話が入った。


〈ランディ、ご苦労様! 私も目的は達成しました。隠れ家へ戻っています。カルヤはどうでした? 元味方への攻撃に躊躇などなかったですか?〉


《はい、特には、あとは帰ってからご報告します》

 ランディからの伝心念話が切れた。エリーは後ろを振り返る。

「ボリスさん! 上手く行きました! それでは都市に展開している結界を解きますね」


 ボリスはエリーを見て頷く。

「はい、承知しました。時間通りですね」


 エリーは立ち止まるとゴロスネス周辺に展開していた魔法結界を全域解除した。エリーはゴロスネス到着直後、直ぐ通信妨害のためゴロスネス周辺に魔法球を展開して強力な目に見えない魔力結界を展開していたのである。

 結界を解除したことにより西に遠征している駐屯兵団、担当官ベアリスへも惨状は直ぐに伝わるであろう。


「さて、予定通り動いてくれれば良いのですが」

 エリーは呟いと歩きだした。


 ◆◇◆


 ローゼの隠し砦から東へ60キロほど離れた街道沿いにゴロスネス軍勢4000が大森林侵攻準備をしていた。


 野営本部テント。そこへゴロスネス守備兵団長ゾリスが慌てた様子でテント内へ飛び込んで来た。

「……ゴロスネスが奇襲を受け甚大な被害が出ているとの報告が!」


 椅子に座りくつろいでいたベアリスが驚いて立ち上がり声を上げる。


「何! 反乱分子か! 南のガーギアか!」


「いえ、未だ詳細は、敵の正体は不明です。守備隊が混乱しておりまして。各城壁守備詰所が壊滅、統制本部付近も襲撃を受けた模様です。直ぐにワイバーン騎士隊10騎をゴロスネスへ向かわせました。もしかしたら連動した襲撃かもしれません! 至急、軍勢を戻すことを進言致します!」

 ゴロスネス守備兵団長ゾリスが動揺した顔でベリアスに大声で言った。


「承知した! 直ちに兵500を残し、残りを至急ゴロスネスへ返す! 騎兵1000騎を先行させよ! 私も馬で返す。守備兵団副長ヴェレンに残留兵500の指揮を執らせる。それで良いな! 兵2500はゾリス、君が指揮を執り連れ帰れ! その旨、至急通達せよ!」


「はっ! 騎馬隊の準備を急がせ出来次第、順次先行させます!」

 担当官ベリアスの指示に応えるとゾリスは一礼して慌ててテントを出て行った。


「ギリドバどう思う? ことは仕組まれたことか! 偶然では無いと思うか……」


 テントの奥に居た情報担当官ギリドバは落ち着いた様子で答える。

「私の知る限り、まだ、ガーギアが動いたとは考えられません。不穏な情報はありますが……。ただ強襲した戦力はそう多くなく、少数精鋭部隊せいぜい200程度と思われます」


「……ギリドバ……なぜ、襲撃戦力を把握している? 情報は今……」

 ベリアスが情報担当官ギリドバの顔を見る。


「いえ、私も配下から先ほど襲撃の知らせが入ったのです。襲撃が始まったのは1時間ほど前、なんらかの魔法結果が張られ通信が妨害されていたようです。敵の数は大規模で無く、小隊規模が3から5と報告を受けております。守備兵団はかなり混乱しているとのことです」

 情報担当官ギリドバは冷静な口調でベリアスに報告した。ベリアスは不怪訝そうな顔をして言う。


「どんな敵だろうとゴロスネスが危ういことに変わりは無い! ギリドバは情報収集を行い分析を行ってくれ。今よりゴロスネスへ急ぎ返す。君も一緒に、急ぐぞ! もはやエルフ集落どころの話では無くなった」


「……はい、ですが、対応はして置かなければなりません。大森林の対応はヴェレン副団長に任せるのですね。踏み込まなければとりあえず問題は無いと思いますが。ヴェレン副団長に今から話しをして来ます。直ぐに戻って来ます」


 情報担当官ギリドバは直ぐに一礼するとテントから出て行く。ベリアスは機嫌の悪い顔をしてテーブルのボトルを手に取ると地面に投げつけた。

(……なぜ! こうも立て続けに悪い事ばかり!)

 ベリアスは割れたボトルをさらに踏みつけた。



 ◆◇◆



 ここはローゼの隠し砦最下層。


 リサ達は空間転移に成功、全員無事にここへ到着していた。リサは着くなりイバラキよりエリー達の不在を聞き驚き戸惑っていたが、とりあえずは作業を優先して空間転移装置の調整行っていた。魔導工兵隊員と共に忙しく調整作業行う。

 リサはニコルへ状況確認の指示を出してエルフの集落へ向かわせていた。エリーと連絡もせず勝手に動く訳にもいかないそう思っていた。とりあえずは相互間移動をスムーズに行える様にするのが、リサの優先事項であり転移装置の復旧が1番大事な事である。幸いにもローゼの隠し砦最下層の転移装置は魔力を通し確認したが、問題無く起動した。


「……良かった。半日有れば十分調整可能です」

 リサは同行した魔導工兵隊員と打ち合わせをしながら最下層の魔導回路を起動確認して回路の調整を行う。


「しかし、凄いですね。異空間転移装置など、魔導回路は古いですが。現在は失われた技術です。それにしてもリサ様はその知識をお持ちなのですから、いくら秀才と言われても理解の範疇を超えています」

 魔導工作隊員がリサを見て言った。リサは頷き言う。

「ええ、まあ……、急ぎましょう! 昼までには動く様にしないと」

 リサはすでに全てを知っていた。魔導回路の組み合わせ、接続作動の方法等、女神カミュと女神セレーナの知識を受け取っていたからである。そして内包する女神カミュの力は絶大だった。


「……それにしても、早くエリー様にお会いしたいものです。ご無事なのは良いのですが……」

 作業の合間にリサがつぶやいた。リサはこの4日間ほぼ休む事なく働き詰めだった。カミュの力を持っているとはいえ、疲労は蓄積していたのである。エリーの顔を直ぐに見れると思っていたのに、会えないことに少し気落ちしていた。

 魔導回路に接続した端末を操作していると、後ろからビルド隊長が声を掛けて来た。


「リサさん、外へ出る準備は整っています。ここには3個分隊を残し、2個分隊をエルフ集落へ向かわせますが、よろしいですか?」


「……いえ、ニコルさんの報告を待ってください。エリー様と接触すると思いますので、その後で判断します」


「はい、了解です。リサさん、これが片付いたら少し休まれたらどうですか? 働き詰めですよね。責任者に倒れられたら困りますからね」

 

 ビルド隊長は整った顔で心配そうに言った。


「……はい、ありがとうございます。ビルドさんは優しいですね。これが片付いたら仮眠をとりますのでご安心を」

 リサは疲れた顔で無理矢理笑って答えた。

 

 

 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


これからも、どうぞよろしくお願いします。

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