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第366話 迫る軍勢30

エリーはゴロスネスの監獄施設へ侵入戦闘をする


 2国間和平交渉会議23日目朝。(大陸統一歴1001年11月5日8時頃)


 ここはエルフの集落から100キロほど離れた西部統制都市ゴロスネス。


 エリー達はゴロスネス統制本部近くの監獄施設地下3階層で警備兵と対峙していた。


 メルティアは全身に魔力闘気纏い顔つきが真顔に変わる。そして足を開き拳を握り格闘術の構えを取って槍使いの兵士を見据えた。


「……!? そこそこ出来るよですが、素手で私の槍とやり合うのですか? 舐められたものです」

 槍使いの細身の警備兵がメルティアに声を上げた。それを聞いてメルティアはニヤッと笑って魔力量を上げる。メルティアを包み光が白色から薄紫色に変化して魔力闘気が迸り始めた。


「身の程を知らないのはあなたです!」

 メルティアが声をを上げると同時に前に飛び出し間合いを詰める。槍使いの男は鋭い突きをメルティア目掛けて繰り出すがメルティアは難なくするりとかわす。そして槍使いの男の前で一気に沈むと足払いを繰り出した。槍使いの男はギリギリ天井一杯飛び上がりそれを回避する。メルティアは槍使いの男のタイミングを計ったように上体を起こすと同時に魔力で強化した拳を物凄い速さで打ち出した。


「ぐーーっ!」

 槍使いの男は槍を瞬時に回して柄の部分で拳を弾こうとしたが、メルティアのスピードに対応出来ず腹部にまともに拳を喰らってしまった。

 歪む顔で槍使いの男は、着地と同時に後ろの警備兵達の位置まで後退した。


「……どう見ても、魔法士だと思ったのですが! 格闘系の戦士とは驚きました!」


 槍使いの男が腹部を左手で押さえながら感嘆の声を上げた。決して槍使いの男の攻撃が決して遅い訳では無い、セレーナの洗礼によってグレードアップした感知、身体能力向上、さらにセレーナより受けた格闘系のスキル付与によりメルティアの格闘技量はS級剣闘士を凌駕するものだった。メルティアから見れば槍の軌道も間合いもスローモーションの様に見えてすでに見切っていた。ただ実際には実戦経験が無く、トレーニングも行っていない、メルティアにはエリーやセレーナの体の動き技をトレースする魔力で強化した体は悲鳴を上げる。


「……えっ! もう……?」

 メルティアは体の異常に気づいて戸惑った顔をする。

 対峙する槍使いの男は、部下の2人組の警備兵と痛みに顔を引き攣らせずるずると後退りする。メルティアは体の変調に気づき前に出るのをためらっていた。


「メルティアさん! 何をしているのですか! 時間がありません」

 入口付近のエリーが声を上げた。メルティアは一瞬顔を強張らせる。

「……はい、エリー様!」


 当然エリーはメルティアの異常に気づいていた。ボリスも気づいている様子でメルティアを見ている。

「エリー様、メルティアさん、調子が悪そうですが……」


「ええ、それはそうでしょうね。まだ、最適化出来ていない体で無理をすれば」


「……!?」

 ボリスが戸惑った顔をする。


「良いのですか? このままで」


 エリーは正面に立つメルティアの背中を見ながら言う。

「はい、負けることはありません。何事も経験は必要です。力の使い方や修練の重要性を認識しなければなりません。大きな力にはそれなりの代償は必要です」


「でも、元々メルティアさんは魔法士、S級槍使いと肉弾戦で渡り合うどころか凌駕している。女神の加護は素人でさえ達人レベルまで引き上げる。凄い事です」

 ボリスが感心した様にエリーを見つめて言った。

「はい、でも、これくらいはやってもらわないと」

 エリーは紫色の髪をかき上げて、前で格闘戦を展開するメルティアを見つめた。


 メルティアは用心深く槍を突き入れて来る槍使いの男に手間取っていた。狭い通路でサイドの2人警備兵がショートソードを振って牽制して来るから間合いに飛び込めずにいた。

 メルティアは自分のイメージと体の動きがズレ始めていることに気づいて踏み込みが甘くなっている。

 槍使いの男は部下の2人との連携が上手く、メルティアの中途半端な攻撃では通用しない。中央の槍と両サイドショートソードの剣撃に苦労するメルティア、さすがS級剣士。


(……エリー様が見ているのに、これでは……でも、傷を負うわけにもいかない)

 メルティアは3人を視感して思考を巡らす。


(一気に行けば片付けられる。技の軌道イメージは出来ている。ただ、体がイメージ通り動くかどうか)

 メルティアは魔力量を上げて魔導ローブを脱ぎ捨てる。そしてメルティアの美しい白いタイトな戦闘スーツ姿が現れて驚く警備兵達。


「……!? ハイエルフ! 南のガーギア!」

 槍使いの男が声を上げた瞬間、魔力を纏いメルティアが一気飛び出した。


「……?」

 何を思ったかエリーが後方から瞬時に瞬間移動のように槍使いの男とメルティアの間に割って入る。エリーが防御シールドを展開両者を弾き飛ばした。光と爆裂音が狭い通路に響く。


「……エリー様! 何を!」

 後ろに飛ばされて着地したメルティアが声を上げた。動揺したメルティアの金髪が揺れ美しい顔を隠した。


「……いえ、暗い沈んだ感情が見えたので! 恨み、悪意……まあ、あまり好ましくないことです」

 エリーはそう言うと電撃棒を素早く伸ばして槍使いの一撃を軽くいなした。


「……とんでもない奴だ! お前もガーギアの者か?」


「ちっ! 知らないですね。そんなことそれより」

 エリーは舌打ちするとメルティアの悪感情の原因がこの槍使いの右横についているショートソードを男である事に気づいた。


(……まあ、看守なら想像はつきますが……。そろそろリミットですね。救出を急がないと合流出来なくなります)

 エリーは電撃棒を槍使いの男へ下段から鋭い電撃斬撃を放った。槍使いの男は槍の柄を下に降り下ろし斬撃を弾こうとしたが、変化するエリーの斬撃は槍使いの男を直撃、悲鳴を上げてその場に倒れ込んだ。サイドの警備兵は慌てて後ろに退がるが、もう遅いエリーの連続電撃斬撃を喰らい狭い通路の壁に激突して呻き声を上げた。


「……! コイツか?」

 エリーは倒れ込む警備兵を蹴り上げた。男は横腹を蹴られ悶絶した。すでに意識を失っている警備兵の男の顔を見下げて、さらに蹴りを入れる。ボリスがたまらず後ろから声をかけた。


「エリー様、十分です! それ以上は必要ないかと」


「ええ、そうですね。メルティアさんの嫌な記憶を見てしまったもので……」

 エリーは機嫌の悪い顔をしてさらに男を蹴り上げる、当然力加減はしている。


「メルティアさん、では独房を確認して救出を。気は晴れないでしょうが、あなたがこの者を殺すことはやめておいた方が良いと思いました。ですから私が代わりに制裁を加えました。多分この男は一生手も足もまともに動かすことは出来ないでしょう。魔導印を刻みましたからね。絶対に治癒することのない暗号術式です。これでダメですか?」


 メルティアは跪く。

「……はい、エリー様に感謝致します。殺すよりも延々の苦しみを……死は一瞬ですが、耐え難い苦痛を生きて与え続ける。そちらの方が確かに残酷でこの男には最適です」


 メルティアは顔を上げてエリーを見上げて微笑む。


「……!? そうでしょう! じゃあ奥に行きましょう!」

 エリーは脅威や殺意の反応が無いことを確認して電撃棒を縮めるとホルダーへ収納した。


 メルティアがフロア入口通路からドアのを開けて独房通路へ入った。換気はある程度されているようだが、異臭が少しする。ここは3階層主に政治犯重要人物が収容されている。メルティアは大賢者の弟子パルンディルとしてここに10年間収容されていた。そこでの扱いは酷かった。特に西地区統制担当官ベリアスが着任してからは恥辱の毎日だったのだ。エリーはそれを知っている。


「……知り合いの方でしたね」


「はい、ガーギアの方です。ヒストリアさんです。最近お話しをしていないので……」

 メルティアは答えて奥の独房のドアの前で止まる。


「ここです。生体反応はあります」


「……、そうですね。でもかなり衰弱しているようです」

 エリーは感知スキルで独房の中を確認して言った。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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