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第361話 迫る軍勢25

エリーは今後についてメルティアと話した

 2国間和平交渉会議23日目夜。(大陸統一歴1001年11月5日1時頃)


 エルフの集落、離れの一軒家


 エリーはベットを横で寝ているボリスを見ていた。先ほど女神の洗礼が終わり、薄いランプの光で照らされた部屋。


 部屋の中央のテーブルには先ほど戻ってきたメルティアが静かに座っていた。


「……メルティアさん、ご苦労様でした」


 エリーがメルティアに顔を向け微笑む。


「はい、お役に立てて光栄です。それでその者はいかがするおつもりですか?」

 メルティアはエリーの言葉を聞いて嬉しそう尋ねる。


「ええ、メルティアさんの同僚になるはずです。それと早急にゴロスネスの魔炎弾の処置を行います。作戦詳細は不明ですが。魔炎弾の所在は掴んでいますので」


 エリーはメルティアに言うとベットのそばから離れて台所へ向かう。


「……その、同僚とは? ボリスさんはセレーナ様の使徒になったと」


「はい、そうです。魔族だろうとエルフだろうと獣人だろうと気になどしませんよね。これからはお互いに尊重して協力していかなければなりません。それが幸せになる第一歩ですよ」

 エリーは棚からコップを取り出しテーブルに移動する。メルティアは美しい瞳でエリーの所作を見つめていた。


「とりあえず、朝1番ゴロスネスに向かいます。魔炎弾の処理を行い統治施設を破壊、ゴロスネスを混乱させて帰還する段取りです」

 エリーはボトルから水をコップに注ぎ一気に喉を鳴らして飲み干した。


「はい、承知致しました。ですが、……攻撃に間に合いません。ここを朝いち出たとしても早くてお昼ですよ。当然、セレーナ様お考えがあると思いますが」

 メルティアは美しい瞳を輝かせてエリーに尋ねた。


「そうですね。移動はボリスさんの転移魔法陣を使います。一瞬です。10人程度なら楽に移動出来ます」

 エリーは余裕の笑みを浮かべた。


「転移魔法ですか? 安全なのですか? どこか別の場所に飛ばされるような事はないのでですか」

 メルティアが少し不安そうな顔をする。


「大丈夫です。心配は無用です。それよりメルティアさん、体調は問題ないですか? そちらの方が心配です」

 エリーはそう言って椅子に座りメルティアの顔を真剣な表情で見つめる。


 メルティアはエリーと視線を合わせて微笑む。

「……特にこれと言って問題は有りません」


 エリーはメルティアの肩に右手を添える。

「……まあ、大丈夫そうですね。1週間くらいは注意してください。妙な感じだったら言ってください」


 メルティアはエリーの顔を見つめて椅子から立ち上がり身を寄せて来る。

「……!? どうしました?」

 エリーが少し戸惑って尋ねる。メルティアは美しい透き通る様な白い肌、整った目鼻立ち、美しい金髪、そして吸い込まれそうなブルーの瞳。そんなメルティアがエリーを上目遣いで妖艶な表情で見つめる。


「……いえ、なんでも有りません。ただ、セレーナ様のお側で肌の温もりを感じていたいのです」

 エリーは一瞬嫌な顔をしてメルティアを両手で優しく押し返す。


「今日も忙しいので仮眠をとってください」

 エリーは寂しそうな顔をするメルティアに素っ気なく言った。

(……メルティアさん、まだまだ精神的に安定していない様です。十分に癒しは効いているはずなのですが、サポートを然りしないと)


 エリーはまとわり付くメルティアをやんわりと引き剥がして言う。

「メルティアさん、仮眠はアオイさんのところでお願いします。ボリスさんを見守りたいので」


「……!」

 メルティアが少し険しい顔をして奥のベットを見て言う。


「……はい、承知致しました」

 そしてメルティアはベット方へ近寄るとボリスの寝顔をマジマジと見る。

「ボリスさんてこんな綺麗な方だったのですね……」


 エリーはそう言われてボリスを見つめる。

「ええ、確かに、元々は高貴なお嬢様ですから育ちも良いのでしょうね。まあ、メルティアさんと同じく不遇の時を長く過ごされています。ボリスさんはこの容姿のお陰で命拾いしたとも言えますが」


 メルティアはボリスを冷たい表情で見つめている。

「……では、私はアオイ様のところへ」

 メルティアはエリーに視線を移して微笑むと深く一礼して部屋から出て行った。


◆◇◆


 エルフの集落から東へ50キロほど離れた街道沿いのゴロスネス派遣軍野営地。


 西地区主席担当官ベリアスは、野営テント内で情報担当官ギリドバと話をしていた。


 ベリアスはギリドバを見て不安そうな顔をする。

「……全く、隷属の腕輪の反応が消えた。連絡がつかん……、もう3時間以上。まさか帝国最強と言われる部隊が壊滅したとは思えんが、とにかく全く魔法反応も」


 情報担当官ギリドバはベリアスを見て頷く。

「……はい、どうやら強力な魔法結界が張られている様です。私の使い魔も侵入出来ませんでした。それと送り込んだパルンディル様も連絡途絶えています。かなりの魔法術者がいる様です。魔王いえ、それ以上の存在かもしれません」

 

「……ドリキス様の増援を待つしかないか。皇太子殿下に報告はしている。それでも派兵には急いでも5日は掛かる。黒騎士隊の結果がわかるまでは魔炎弾も使用出来ない。このまま待機を続ける訳にもいかん。戦力を小出しして要らぬ損害を出したものだ」

 ベリアスが椅子から立ち上がり酒の瓶を取りグラスに注ぐ。


「……私が直接確認して参ります。なんの情報も得ないままでは、事は進みません」


 ベリアスが酒のグラスをテーブルに置いて不機嫌な顔をする。

「このままなにも手を打たない訳にはいかんが、ギリドバ、君を失う訳にはいかない。却下だ。斥候隊のアルルと私の直属魔法隊を先発させて向かわせる。そして朝より全軍を持って進撃を開始する。それで良いなギリドバ」


 ギリドバはベリアスを見て言う。

「はい、現状では歩兵隊、砲兵隊を前に出し騎兵隊は後方で待機でよろしいかと」


「その旨、ゾリス兵団長へ伝達を頼んだ。あゝ、ワイバーン騎兵隊と魔法隊へは作戦延期と連絡を入れて置いてくれ」


 そう言ってベリアスは酒のグラスを取ると一気飲み干した。


「はい、承知致しました。ゾリス兵団長へは8時出発とお伝えすればよろしいですね」


「あゝ、それで頼んだ。別にまともにやり合うつもりなどない。援軍が到着するまで時間稼ぎすればそれで良い」

 ベリアスは酒瓶をグラスに注ぎながら答えた。ギリドバは一礼するとテントから出ていく。ベリアスはギリドバがテントから出て行ったのを確認して、隷属の腕輪に魔力を込めて反応を確かめる。


「…… ! 役立たずが! 何が帝国最強か!」

 ベリアスはグラスを地面に投げつけた。

 

 


 

 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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