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第358話 迫る軍勢22

カルヤは黒騎士とぶつかる


 2国間和平交渉会議22日目夜。(大陸統一歴1001年11月4日23時頃)


 エルフ集落東側。

 獣人女性戦士カルヤは接近する黒ローブの5人を認識攻撃体勢に入った。もう既にカルヤは全力で魔力量を上限に上げてショートソードに電撃付与を完了していた。


 そしてカルヤは黒ローブ達の手間20mに達すと躊躇なく電撃斬撃を放った。電撃は白い光と爆裂音を放ち黒ローブの5人へ到達する。直ぐに周囲は一瞬にして眩い光に包まれる。

 周囲に一瞬の静寂。

「……仕留められなかった!」

 カルヤから声が漏れる。カルヤの電撃斬撃は黒ローブの魔法防御障壁を破壊しただけだった。黒ローブの5人が健在なのを認識するとカルヤは散開した左側の魔法士らしき黒ローブへと飛翔する。そして猛烈な電撃斬撃を放つ白い光が一直線に走る。猛烈な爆発閃光が周囲を照らす。


「やっと1人……」

 カルヤがそう言って前に出ようとすると瞬時に横にランディが来て声を上げる。

「カルヤ見境ないな! 大概にしろ! もっとスマートに出来ないのか!」


「ランディ師匠の様には無理です。まだ練度が足りない事くらい承知しています。大丈夫です。生かして捕らえますから」


 カルヤはランディにすまし顔で答える。そして前でようとするとランディがカルヤの肩を掴んで引き戻した。

「セレーナ様は確かに全力でやれと言ったが、もう少し考えるんだ。さっきのはギリギリだぞ。まだ相手に魔力体力が十分に有ったから生きているが。相手が少しでも弱っていたら確実に死んでいたぞ。俺はお前の管理責任があるんだ。処罰されるのは俺なんだぞ。セレーナ様の命令は絶対だ。お前は手に入れた力で浮かれている。もう少し考えろ、お前はセレーナ様を甘く見ている」


 ランディがカルヤ言うとカルヤはランディの左手を優しく掴んで肩から引き剥がす。

「……はい、そうですね。身に余る力を得て舞い上がっていました」

 カルヤは黒ローブ達を暗闇の中スキルで視認するとランディ言う。

「あれは帝国皇帝傘下の闇部隊黒騎士隊です。亡国の魔女がいますから間違いありません」


「亡国の魔女?」

 ランディが黒ローブ達と対峙しながら隣りのカルヤに尋ねる。


「元は高貴な姫だったようですが、顔に傷を入れられて暗殺部隊の長にさせられた。冷酷非道の魔術士です。女な子供も容赦しないとの話しです。私は女子供には慈悲はありますけどね。表に出ないだけで、実力は帝国内でも3本の指に入るとのことです」


 ランディがそれを聞いて不怪訝な顔をする。

「……そんな上位者が? 何か嗅ぎつけたのか」


「そうですね。何かあるのでしょうか?私にはわかりませんが」

 カルヤは嬉しいそうにランディに答えた。そして近づく2人の気配。


「シエルさんとアオイ様が来た。射撃手は片付いたようだ」

 ランディがそう言うとカルヤが舌打ちする。

「せっかくの獲物が」


「カルヤ! お前何様だ!」

 ランディが真顔でカルヤを睨むとカルヤは少し怯えたように答える。

「いえ、滅相も有りません! セレーナ様の従者として務めを果たしたいでけです」


◆◇◆


 ランディ、カルヤ達と対峙する黒ローブのボリス達5人。

「……新手! トリナ! 先ほどからの猛烈な電撃攻撃、あれはゴロスネス部隊のカルヤ隊長ではないのか? どうなっている! なぜ私達に攻撃をして来るのだ。それに尋常でない魔力攻撃! 彼女は剣闘士では無かったのか? 私達を凌ぐほどの攻撃力は無かったはず? 何もかもがおかしい……。念話は近距離しか通じないし。ドーキ達がどうなっているかもわからない」


 小柄な少女のようなトリナがボリスの仮面に隠れた顔を見て言う。

「……これは、かなりマズイ状況です! ボリス様! 魔力の残っているうちに転移を発動した方がよろしいかと」


 ボリスは20mほど先のカルヤ達を見据えながら頷く。

「確かに、防御障壁を展開して凌いでいるが、この状況は魔力の消耗をしているだけだ。しかし相手が発動の時間をくれるかだが……」


 トリナがボリスの前に出て声を上げる。

「時間は私が! ボリス様詠唱を」


 ボリスは左右にいる剣士と魔法士に念話で指示を出す。

「トリナ頼みます」


 トリナは頷き魔力を上げると剣に魔力を込めてカルヤ達の方向へ飛翔した。ボリス達の初めての反撃らしい反撃。

 ボリスは3人が前に出た事を確認すると、詠唱を開始する。ボリスの周囲に光が発現して魔法陣が周囲5mほどに展開する。


(……うっ!? おかしい!)

 ボリスは異常に気づく。転移先と繋がらないのである。ボリスが予め設定しておいたゴロスネスへの転移ポイントの魔法陣が開かないのである。転移のための魔力総量は不足していない、なのに開かない。ボリスに考えられる事は、何者かが強力な魔法障壁を展開して転移の妨害をしている。だが、そのような事が出来る者などこの帝国にいるはずが無い。ボリスは異常事態に混乱する。


 ボリスは念話でトリナに知らせる。

〈トリナ! 転移出来ない! 原因はわからない。現状、私達は不利だ。まともな戦いは避ける。森まで退がる〉


《……はい! 承知! なんなとか活路を開きたいのですが! 新手の女2人が来ます! 注意を!》

 トリナの少し動揺した念話が入った。ボリスは他の魔法士と剣士に指示を出した。

 ボリスは防御障壁を再度形成展開する。トリナがタイミングを見てボリスの方へ退いて来る。

 ボリスは相手側の攻撃が弱まっている気がしていた。獣人女性戦士カルヤが最初の猛攻から今は積極的に攻撃を仕掛けて来ていない。

(様子を見ているのか? このまま防御障壁を展開して攻撃を防いでもトリナ達を守り逃げれない。いっそ爆裂弾を炸裂させて……、しかし支援が足りない。誰かを待っているの?)


 ボリスはトリナと魔法士剣士の3人を魔法障壁で守りながら、攻撃火炎弾を上空に数10個形成してカルヤ達4人へ時間差で投下する。


「これぐらいで逃げれるのなら良いのですが……」ボリスは仮面の下から見える口を歪める。

 ボリスの放った火炎弾攻撃は予想通り、カルヤの隣にいた長身の銀髪の男性によって全て飛散爆散させられた。


「牽制にもならない! トリナ! ギルナスの魔剣を使う!」


 ボリスが叫ぶように言うとトリナが驚きボリスのそばに駆け寄った。

「ダメです! それを使っては! 諦めないでください! 私が囮になります!」

 トリナがそう言ってボリスの前に出た。そして詠唱を繰り返す。


「……トリナ……」

 ボリスが弱々しく呟く。前にいるトリナが紫色の光に包まれ肉体が肥大化していく。今までの華奢な少女のような面影はない、筋肉隆々の女性剣士鋭い眼光で長身の銀髪男性を睨みつける。

「……ボリス様! 今のうちにお逃げを!」

 背中越しにトリナがボリスに叫んだ。トリナはの着ていた上着は肥大化した肉体により破れ下着が露出している。トリナは魔法スキルにより肉体の能力を一時的に3倍近くに引き上げることが出来る。圧倒的な格闘機動性とパワーを引き出すスキル、もちろん失うものもある蓄えていた全魔力を膨大に消費して、膨大な魔力を通すことによる体へのダメージもかなりのものだ。持続時間はせいぜい2分から3分程度、敵を時間内に倒せなければ、力尽き敵の餌食となる。

「早く! ボリス様!」

 トリナが必死に叫んだ。ボリスは仮面隙間から涙が伝い無言で頷き魔法士と剣士と共に下がろうとする。そこへ黒髪と金髪の女性2人が牽制するように立ち塞がった。そこへボリスは杖を振るい火炎弾を連続で際限なく放って行く。


「トリナの思い無駄には出来ない!」

 ボリスは全力で黒髪と金髪の女性2人を仕留めに掛かった。




 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

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