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第357話 迫る軍勢21

エリー達は黒騎士隊と戦闘状態になる


 2国間和平交渉会議22日目夜。(大陸統一歴1001年11月4日23時頃)


 エルフ集落西の外れ。

 黒ローブの別働隊女性ダークエルフ戦士ドーキは、4人を率いてハイエルフを奪還するため一軒家の前に到着していた。

 ドーキは体に妙な汗を掻いていた。何時もより心臓の高鳴りを感じている。ドーキは周囲の魔力の波動を感じることが出来る能力を有していた。だが周囲に高い反応は感じ無いのに妙に不安を感じる。

(いつもと違う……? 静かすぎる!? とっくに作戦は開始されいるはずなのに、周囲から念話が入ってこない)


 ドーキは不安を感じながら、定刻通り作戦行動を開始する。そして後方の配下へ手で合図を送ると配下の4人が散開配置についた。あとはドーキの戦闘開始の合図を待つのみ。

 ドーキが突入のタイミングを図っていると、離れの一軒家のドアが開き人影が2人出て来る。ドーキの感知には相変わらず何の反応も無い。

(……何だ? ハイエルフがいるはずなのに……反応が無い?)

 ドーキは配下に待ての合図を送り、自ら出て来た2人にゆっくり接近して確認しようとする。

 ドーキは5mほど手前で立ち止まり、光魔法を発動周囲を照らす。ドーキはすでに大剣を構え防御障壁を展開して警戒体勢に入っていた。

 魔法の灯りに照らされ2人の姿が現れた。正面に金髪の女性ハイエルフ、少し後ろに銀髪の女性エルフが見える。2人とも容姿の整ったかなりの美女である。ドーキは思わずギョッとして息を呑む。

(……!? 私に警戒すらしていない。まるで予定の客人を迎えるような表情? この違和感……)


 女性ダークエルフ戦士ドーキは異様な雰囲気の2人にたじろぐ。一瞬間を置いてドーキは声を絞るように2人に声を上げた。


「私は、命を受け参った! 大人しくご同行願いたい」


 手前の金髪の美しい女性ハイエルフがドーキと視線を合わせて答える。

「私は残念ながら、あなた達と同行する気はありません」


 ドーキは思わず息を吐いて言葉を発する。

「……なら、しょうがない……力ずくで」


 ドーキは大剣を背中の鞘に収めると短く魔法詠唱をする。直ぐに配下が飛び出し銀髪のエルフの方へ襲い掛かり、ドーキは目の前の金髪のハイエルフへと距離を詰めると魔力を込めた右拳を腹部目掛けて打ち出した。

 ドーキの予想に反して右拳は空を切る。


「……!?」

 ドーキは体勢を崩して前のめりになると、脇腹へ反転した金髪女性ハイエルフからの蹴りが入って来た。

 ドーキは予想外の攻撃を脇腹へモロに蹴りを喰らって横へ吹き飛ばされた。

 ドーキは身体強化と魔法障壁を付与していたためダメージは軽減出来たが脇腹に激しい痛みを感じる。金髪のハイエルフはドーキの攻撃を瞬時に交わして反撃して来たのだ。

 ドーキは地面を転がり防御体勢をとり、そして金髪の女性ハイエルフを見据える。


(……バカな!? 格闘戦で私がハイエルフに遅れをとった! あり得ない)

 女性ダークエルフ戦士ドーキは混乱していた。感知スキルからは金髪女性ハイエルフからの魔力反応はほぼ無い状態で、自分が蹴りを喰らい地面に転がされた。幾ら相手が魔法士S級クラスでも近接戦闘で、さらに格闘戦で自分がハイエルフの強烈な蹴りを喰らうなどあり得ないことだった。全力で無かったとは言え純粋に格闘技術で華奢な女性ハイエルフに蹴りを喰らうな考えられない。ドーキは金髪女性ハイエルフの動きが全く認識出来ず、反応出来なかったことに精神的ダメージを受けていた。


 女性ダークエルフ戦士ドーキは金髪女性ハイエルフを観察しても、魔力反応がほぼ無い状態のままだった。

(……何かしらの隠蔽スキルを使用しいるのか? でなければ、あり得ないことだ! 私を近接格闘戦で上回るなど)


 ドーキは顔を顰めて背中の鞘から大剣を一気に抜き放った。

(……身柄を確保せねばならない。もはや手加減出来る相手では無い)


 ドーキは覚悟を決すと短い詠唱を繰り返し、魔法スキルを全力発動する。ドーキは大剣を上段へ構えて前へ踏み出し、余裕の表情の金髪女性ハイエルフの頭部目掛けて振り下ろした。

 激しい爆発音と光が拡散する。ドーキは当然金髪女性ハイエルフを殺すつもりは無い、大剣の魔法波動で吹き飛ばすつもりだったのだ。


「……!? な、なんで?」

 大剣を振り戻すドーキから声が漏れた。金髪の女性ハイエルフは涼しい顔をしてその場に立っていたのである。ドーキは慌てて退き間合いをとった。そしてさらに驚愕する。

 4人の配下達全員が地面に倒れていたのである。魔力の微弱な反応があるので死んではいないが、もはや戦闘どころか動く事さえ困難な状態だった。ドーキは視線を銀髪の女性へ向ける。


「……この女も化け物か!?」

 女性ダークエルフ戦士ドーキはここ数十年敗北を喫した事は無かった。そして優秀な配下達も、相手がS級上位者だろうとそれは変わらなかった。だが今、1分も経たないうちに配下達はたった1人の銀髪の女に倒されいる。しかも魔力反応も出さずに激しい戦闘すら無い状況で瞬殺でだ。ドーキの体から一瞬力が抜ける。


(ボリス様……これはヤバイ! だから私達、黒騎士を送り込んだのか)

 ドーキは金髪女性ハイエルフと距離を取り見据えている。後ろから銀髪女性が金髪女性ハイエルフに話し掛ける声が聞こえる。


「大丈夫ですか? 遊んではダメですよ」


「はい、セレーナ様、戦闘能力を試しているだけです。エルフ族戦士の力がどれほどなのか。敵側に付いた恨みも有りますが」


 ドーキは2人の会話から銀髪女性の方が上位者である事を認識した。そして金髪女性ハイエルフが自分を弄んでいることを知った。

 ドーキは悔しさで唇を噛み締める。

(なんと言う屈辱!)


 ドーキは大剣を構え直して詠唱を繰り返し大剣が光に包まれ迸り始めた。対峙する金髪女性ハイエルフは余裕の笑みを浮かべ声を発する。


「あなたが、どれだけ力を振り絞ろうと私には届きません。あなたが人外の力を有していても、神の力には到底及びませんからね。あなたは今まで蹂躙される事など無かった。でも残念ですが今日はあなたの無力さを自覚するのです」


 金髪女性ハイエルフはそう言って金色の光を全身に纏い両足を肩幅まで開き、両手を握りしめて拳を作り格闘戦の構えをする。


 ドーキは大剣の柄を両手で握り絞り込む。

「くっ! 舐めるな!」


 ドーキは声を上げると金髪女性ハイエルフへと飛び上がり、大剣を渾身の力を込めて振り下ろした。そして凄まじい光と爆裂音が周囲を包んだ。ドーキは手加減なく全力で放った魔力乗せた一撃だった。

 ドーキの大剣は金髪女性ハイエルフの両手の掌に挟まれ顔の前で止まっていた。

 ドーキは苦悶の表情を浮かべ、慌てて大剣を捻り引き寄せようとするが、動かない。

 金髪女性ハイエルフは大剣を両手の掌で挟んだままねじ伏せた。ドーキは大剣を掴んだままあらがうがそのまま体を一緒に持って行かれた。

(……な、なんなのだ! このパワー……)


 ドーキは大剣ごと5mほど宙を舞飛ばされた。ドーキは地面に背中ら落ちて受け身は取れない。鈍い音がして体に激痛が走った。


「……なんてことだ。パワーはレッドオーク以上か? 化け物だな……」

 ドーキは口の中の血溜まりを吐き出して、よろめきながら大剣を地面に突いて立ち上がる。


 近づく金髪女性ハイエルフを見据えるドーキ。もはや残量魔力量も少ない、このままなぶり殺しあうだけと思っていると金髪女性ハイエルフの後ろの銀髪女性が声を上げる。


「メルティアさん! 私はランディのところへ行きます。あとはお任せします。殺さないようお願いしますね」

 そう言って銀髪女性が瞬時に姿を消した。ドーキはその瞬間絶望感に襲われる。


(ボリス様が危ない……念話も通じない。ボリス様といえど逃げなければ……)

 ドーキには大剣を持ち上げる力さえ残っていなかった。駆け寄る金髪女性ハイエルフに右拳を腹部へ打ち込まれ金属製の防具が砕け散る。そしてそのまま後ろへ仰向けに勢いよく倒れ込む。

「ぐーーっはあ!」

 ドーキは口から血溜まりが吹きだした。かなりの衝撃を受けドーキは一瞬意識が飛びそうになる。ドーキの鍛え抜かれた肉体がインナーが破れ露出する。

 ドーキは転がり、立ち上がろうと地面に手をつき腕に力を入れるが上体を浮かせるだけで精一杯だった。そこへ容赦なく金髪女性ハイエルフの蹴りが横腹に入った。人形のように転がるドーキ。もう反抗する力さえ残っていない。


「もう終わりですか!」

 倒れ呻き声を上げているドーキに金髪女性ハイエルフは機嫌悪そうに言い放った。

 ドーキにはもう答えることすら出来ない。体は身体強化を図ったいたのにも関わらず、かなりのダメージを受けていたのだ。体の深部への攻撃、ただ金髪女性ハイエルフの拳を数発浴びただけでドーキは深刻なダメージを受けていた。そして金髪女性ハイエルフを見上げてドーキは意識を失った。

 




最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます! これからも、どうぞよろしくお願いします。


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