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第341話 迫る軍勢5

エリーはハイエルフメルティアをゴブリンから救出する

 2国間和平交渉会議21日目早朝。(大陸統一歴1001年11月3日5時頃)


 ここは異世界、エルフ集落から東へ30キロほど離れた森林地帯。


 ハイエルフ、メルティアは覚悟を決めレッドウルフが待つ地面へと降り立った。メルティアは着地するなり空中で生成していた火炎球を周囲にばら撒き爆発させた。レッドウルフへの目眩し牽制である。

 メルティアの現在の能力は魔法力、魔法攻撃力はS級レベルだが、魔力総量はB級レベルしかない。多才な攻撃手法、強力な魔法スキルを有していても、それに見合う魔力量を供給出来ないアンバランスな状態だった。だから思い切った攻撃が出来ない。もし魔力が枯渇し動けなくなった後は、魔物の餌になるしかないのだから、メルティアは慎重に相手を見極めながら攻撃を仕掛けていた。


 メルティアも時間を掛けても倒せなければジリ貧状態、いずれ自分が力尽きレッドウルフの餌になるその事は理解している。

 レッドウルフ3体が一斉に火炎弾をメルティアへ飛ばしてきた。メルティアは周囲を防御障壁で覆う。なんとか火炎弾を防ぐが、これでは魔力をいたずらに消費するだけ、それはメルティアも理解している。


(……ここで終わるのなら、それも運命……、もはや迷っている状態では無いのですね。やれる事をやるしか)

 メルティアは念じて金色の光の矢尻のようなものを周囲に生成する。そしてメルティアは両手を広げて生成した金色の光の矢尻を1体のレッドウルフへ向ける。そして照準を定めるようにレッドウルフを見据えるとゆっくり前に出す。次の瞬間、金色の矢尻は弓から放たれたように猛烈なスピードでレッドウルフ目掛けて飛び出した。金色の矢尻は瞬間的にレッドウルフの前に到達、レッドウルフに回避動作を許さない圧倒的スピードだった。レッドウルフは防御障壁を展開するが、それを難なく撃ち破りレッドウルフの体を粉砕してさらに奥の大木を吹き飛ばす。それは圧倒的破壊力だった。


 メルティアは体の向きを変える。そして2体目のレッドウルフに先ほどと同じように金色の矢尻を放った。金色の矢尻はレッドウルフを粉砕、周辺を破壊する。3体目は慌てたようにメルティアから距離を取り逃げる体勢に入ろうとしていた。


(逃したりしない。こちはギリギリなのだから)

 メルティアはレッドウルフ3体目に金色の矢尻を放つ。背を向けて逃げ出すレッドウルフにそれは吸い込まれるように命中してレッドウルフの体を粉々に飛散させた。そして周囲の木々を粉砕、大木が数10本倒れ込む。


 メルティアはレッドウルフの反応が消えたことに安堵の表情を浮かべる。メルティアの体はもう満身創痍、全身が悲鳴をあげていた。

「……うっ、本当に我慢出来ないほどの痛みが……」


 メルティアは体を支えきれず膝をつく、そして体全体から力が抜けていくことに気づいた。

(……あゝ、これは……もう、どうにも)

 メルティアの意識は薄れて上体がうつ伏せに一気に地面に倒れ込んだ。


 それを待っていたかのように周囲から接近して来る緑色の多数の小さな陰。その緑色の陰は森から出て来ると、メルティアの周りを囲み警戒しながら距離を詰めていく。そう隠れていたゴブリン50体がメルティアの前に現れたのだ。


 ゴブリン2体がメルティアに近づき背中に蹴りを入れる。メルティアの反応が無いと見るや後方のゴブリン達に合図を出した。

 そして一斉にゴブリン達が前に出てメルティアに殺到した。うつ伏せのメルティアの体を転がって衣服を剥ぎとていく。ゴブリン達は器用にメルティアの体を傷つけないよう、ベルトを外しスカートを脱がせ、ブーツを脱がせ、シャツを脱がせた。透き通るように美しいメルティアの肌が露わになる。下着を取り両足を持ち上げショーツも脱がせた。ゴブリン達は知っていたのだ。女性は羞恥心から裸にすれば逃亡に躊躇することを、靴を奪えば足場の悪いこの森林では遠くへ逃げれない事を。そして死ぬまで恥辱して死ねばゴブリン達の食料となる。


 メルティアは魔力が枯渇して意識朦朧となっていた。微かな体が動かされている感覚、今の自分の状況はわかっていなかった。ただ、レッドウルフを倒した安堵感だけが心を満たしていた。ゴブリン達はメルティアを裸すると手足に拘束具を装着した。かつて大賢者と呼ばれたハイエルフの姿はそこには無く。無残に裸体を晒し獣のように運ばれる。ゴブリン達は邪悪な笑みを浮かべ隊列を組み森の奥へ進もうとした。その時、上空を赤褐色の巨大なワイバーンが通過する。

 上空を旋回し戻って来たワイバーンはゴブリン達を威嚇するように〈ガアーーウ!〉鳴き声を上げた。それは格違いをゴブリン達にわからせる。恐怖したゴブリン達は急いで逃げ出そうとする。メルティアを運ぶゴブリン達は木々の生い茂る深い森林方向へ逃げる。知恵の働くゴブリン達はワイバーンが入れない大木の生い茂る木々の間に入ろうとしたのだ。


 赤褐色の巨大なワイバーンはゴブリン達の進む方向へ1発の火炎弾を口から吹き出した。森の深部で爆炎が起こる。その炎は直ぐに収まり鎮火した。何かしらの魔法が付与された特殊な火炎弾。退路を断たれたゴブリン達は慌てふためく。


 木々の開けた場所に赤褐色の巨大なワイバーンが羽をバタつかせ降下すると、背に乗る銀髪の女性が直ぐにジャンプして着地した。


 ◆◇◆


 エリーは強力な魔力反応を感知してやって来てみれば、森の中で全裸のエルフがゴブリン達に連れ去られようとしていた。エリーは直ぐガロンに指示を出した。

「あのエルフを助けます! 降下してください!」


 ワイバーンアニーはゴブリン達を火炎弾で牽制すると森へ直ぐに降下した。そしてエリーは落下防止金具を外すと地面に飛び降りる。


「……生きているようですけど、かなり衰弱していますね」

 エリーは神眼でゴブリン達に運ばれている女性エルフを確認する。エリーはすかさずローブの下のホルダーから電撃棒を取り出し先端を伸ばすと魔力を通す。電撃棒から白い光が迸る。そしてエリー逃げようとするゴブリン達を電撃斬撃を放ち無慈悲に仕留めていった。ものの10秒ほどでゴブリン達の悲鳴も聞こえなくなった。周りには黒焦げの炭化したゴブリンの無数の死体。


「……周囲に脅威無し。片付きましたね」


 ワイバーンアニーが着地してエリーに頭を向ける。エリーは右手をあげて微笑むと、ワイバーンアニーは何処となく喜んでいるように見えた。ワイバーンは表情はないから雰囲気だけだがそう思った。

 アニーから念話。

《セレーナ様! お役に立てて光栄です》


〈うん、アニー、ありがとう! アニーがいなかったら間に合わなかったよ〉


 エリーは慌てたように倒れている裸のエルフに近づき屈み込む。

(……とりあえず、治癒だね)

 深層からセレーナが上がって来た。

(エリー! この者は私に任せろ)


(あっ、うん、そうだね。でも、このエルフ普通のエルフじゃないみたいだけど……、あゝ、セレーナ任せるよ)

 

 エリーはセレーナと意識を交替した。容姿はセレーナのままだが、偽装スキルとは違う本物のセレーナに変化する。


 エリーは女性エルフに触れると、体を紫色の光で包み、治癒スキルを発動、魔力を通して弱ったダメージのある患部を癒していく。


「……長年、蓄積した疲労のようなものがあるようだが……」

 

 セレーナの容姿のエリーがつぶやいた。エリーは治癒しながら女性エルフの体を観察する。

(……美しいな、エルフ特有なのかと思ったが、この個体は特別のようだ。あゝ、これがハイエルフか、しかし、ハイエルフは一部を除いて生き残りはいないはずなのだが、これはどう言う事なのか、意識が戻ったらじっくり話をしなければならないな)

 

 

 

 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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