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第340話 迫る軍勢4

ハイエルフメルティアは大森林で魔物と対峙する

 2国間和平交渉会議21日目早朝。(大陸統一歴1001年11月3日5時頃)


 ここは異世界、ローゼの隠し砦から7キロほど離れた森林地帯のエルフ集落。


 エリーは30分前に目を覚ましぼーっとしていた。ぼおーっとしていたのだが、意識下の深層領域ではこの世界の広域に飛ばした遠視眼で集めた情報の分析をしていた。風土、生息種族、文化文明レベル、構造建築物、道路整備状況等など遠視眼から入って来る情報を取り込み過去のデーターから今後の行動指針を導きだすのだ。エリーが寝ているベットの床にはシエルがマット状もの上で毛布を被り寝ていた。


「……? 何か侵入した様ですね」

 エリーが昨日仕掛けた魔導探知機に反応があった。エリーは直ぐに上体のをベットから起こすと上着を羽織るとシエルを優しく揺する。


「シエルさん、ちょっと出て来ます」

 シエルは直ぐに目を開けて。


「準備致します。急ぎですか?」


 エリーが頷くとシエルは慌てて起き上がり、脇に置いているショートソードを手に取る。


「私とガロンさんで行って来ます。シエルさんはここの守りをお願いします」

 エリーはそう言って容姿を変化させた。髪色が輝く銀髪に、瞳が若干吊り上がり精悍な顔つきになる。

 シエルはエリーの顔を見て嬉しいそうに尋ねる。

「……エリー様のままですね?」


「うん、偽装スキルだよ。セレーナはまだ寝ているよ。シエルさん良くわかるね」


「……感じる雰囲気が違うんです。それに言葉使いが違いますね。だって私は従者です。わからない訳がありません」

 シエルはエリーを見て自信満々で笑顔で答えた。

 エリーは伝心念話でガロンとワイバーンアニーへ伝達した。

〈侵入者を確認しました。今から出ます。準備をお願いします〉


 直ぐにガロンの念話が入った。

《はい、直ぐに、5分で準備します》

 続けてワイバーンアニーの念話が入る。

《主人様! いつでも出れます》


「シエルさん、長への報告はお任せします」

 エリーは腰に装備を装着するとローブを羽織る。最後に軍刀を持ってシエルに一礼すると小屋から外へ出た。集落の広場にはすでにワイバーンアニーが翼を広げて待っていた。そこに慌ててガロンが騎乗装備を抱えてやって来る。


「セレーナ様! おはようございます!」

 ガロンが爽やかな顔でエリーに挨拶をした。


「ガロンさん……ガロン、おはよう!」

 直ぐにガロンは騎乗装備をワイバーンアニーへ装着していく。エリーもそれを手伝う。通常のワイバーンより巨大化したワイバーンアニーへ装着するのは一苦労のようだ。

 数分で金具の固定と魔力融合固定を完了する。

「セレーナ様、整いました。それでは」

 エリーがあぶみに足を掛けるとガロンがエリーの体を押し上げる。そしてガロンがワイバーンアニーの背中の鞍に跨る。エリーは腰の安全ベルトを鞍から出ている金具へ接続した。


「それでは、参ります!」

 ガロンが声を上げるとワイバーンアニーは羽ばたき土煙が一瞬上がると、直ぐに上昇を開始した。飛び立つエリー達に気づいた集落のエルフ達が深く頭を下げて見送る。


 ◆◇◆


 エルフ集落から東へ30キロほど離れた森林地帯。

 ハイエルフ、メルティアはエルフの集落を目指して1人行動していた。野営を出たのは1時ごろ、情報を元に移動工程を決めていたが思った以上に体力の消耗が激しいかった。地下牢に長い間閉じ込まれ、魔力封印の枷をはめられていたため。メルティアは弱体化していた。地下牢より出たとはいえ、まだ以前のレベルまでは回復していなかったのである。メルティアの体は身体強化を行なっても自由に動かなくなる。ここまで、数時間で山の中を30キロも進んだのだ。メルティアもかなり無理をしたと自覚している。

(……、休憩して体力回復を)


 メルティアは立ち止まり、休憩のため大木の根本の地面に腰を下ろした。

(このペースでは、あと3時間では無理ですね)

 メルティアは森林の足場の悪さに苦戦していた。本来の能力であればこのような疲労直ぐに回復するはずなのにと思っていた。無詠唱で念じて回復魔力を発動全身に通した。


(全身の細胞に上手魔力が流れません。思った以上に筋疲労回復が遅い……)

 メルティアは地図を確認する。情報担当官ギリドバから渡されたものだ。エルフの集落周辺にはエルフ達の移動脱走防止のため、魔物が距離別に配置されている。魔物の巣を避けるルートが表示されていた。そして魔物避けの短剣も一緒に渡されていた。


(オークの勢力域ですね。さすがにオークとはやり合いたくは無いですね……)

 メルティアは腰の水筒を取り、キャップを外した。そして周囲に異常を感知した。


(……、囲まれている? 道に気を取られて気づかなかった)

 メルティアは木に陰に隠れて、気配を消すが、すでに相手はメルティアの位置を特定して包囲網を狭めている。

(気配からオーク10体、少し離れてレッドウルフ3体、そしてゴブリン50体。魔力量を考えるときびい感じですね。突破して逃げるしかない状況ですが……レッドウルフは振り切れそうにないですね。やはりレッドウルフを片付けないと……)

 メルティアは短刀を抜いて攻撃魔法を付与する。メルティアは数100年投獄されいる間に魔力無力化の魔道具の枷をはめられ魔力圧縮貯蔵能力を大きく下がっていた。1年くらいの鍛錬では回復することは無かった。メルティアは大賢者と呼ばれた時期の1/10ほどしか体内に魔力を貯めれなかった。それは大魔法を1発放ったら魔力が枯渇して意識を失いかねない状態だ。


(……! やっぱり魔力が足りない。ここで無茶をすると後がなくなりかねない)

 そして、メルティアは以前のように繊細な魔力制御も出来ない。


(……本当に、忌々しいですね。これで魔王と接触交渉とは。死にに行くようなものです)

 メルティアは思わず本音が出る。そしてメルティアの白い肌に汗が滲む。

 地面に落下した枝が踏まれ折れる音。〈ミッシ、ミッシ〉巨大な黒い陰が、メルティアの前に走り出る。体長2mほどのドス黒いオークだ。

 メルティアは瞬時に前面に無詠唱で防御障壁を展開する。そこへすかさず1体のオークが棍棒を振り下ろした。衝撃音と共に棍棒を跳ね返しオークは体ごと後ろへ飛ばされた。


 メルティアは直ぐに飛び出すと右側にいたオークの首元に短剣を刺し込む、オークは首を抑え奇声を上げながら地面に倒れ込んだ。左側のオークがすかさずメルティア目掛けて棍棒を投げ込んで来た。メルティアは魔力障壁を展開、それを跳ね返す。


「……!?」

 今度は2方向からオークが3体ずつメルティアに距離を詰めると棍棒を一斉に振り下ろす。

 メルティアはたまらず全周に防御障壁を展開それを跳ね返した。オーク達はメルティアの防御障壁に構わず繰り返し棍棒を打ち続ける。完全にメルティアはオーク達に囲まれた。


「オークごときに……」

 メルティアは思わず声を漏らす。そして念じて火炎球を生成すると次々と周囲に放つ。周囲にいたオーク達に火炎球は命中。たまらずオーク達は後退りすると、メルティアは数十個の氷針体を生成すると体を回転させながら、オーク目掛けて射出した。無数のナイフのような氷針体はオーク達の体に次々と刺さって行く。森の中にオーク達の悲鳴が木霊する。

 そして、オーク達は力尽き次々と地面に倒れ込んだ。


「……ふっ、やっとですか。思った以上に時間が」

 メルティアは直ぐに身体強化を行い。西の方向へ駆け出した。レッドウルフの居る方向へ。

 メルティアはレッドウルフ3体が散開して移動したことを確認する。木々を避けながメルティアはさらに身体強化を図る。

(……ああああ、体が痛い。無理をし過ぎたようです)


 メルティアの正面からレッドウルフが接近、そして2体が右側方、背後へ回り込む。レッドウルフは連携してメルティアを狩ろうとしていた。

(レッドウルフは俊敏な上に魔法も使う。3体を全て叩くのはきびい……)


 メルティアは現状を分析して美しい顔が歪む。メルティアはとりあえず正面から接近するレッドウルフに火炎球を放った。火炎球は加速してレッドウルフへ。だが、レッドウルフは防御障壁を展開それをやり過ごした。


「……この程度の火炎球では防御障壁を砕け無いのか」

 メルティアは魔力節約のために火炎球の威力を抑えていた。正面から速度を上げたレッドウルフが迫って来る。メルティアは10個ほどの火炎球を生成すると周辺に拡散爆発させた。そして飛翔魔法を発動し自分の体を上空へ飛ばした。10mほどの木の枝へ飛び移る。

 後方から迫っていたレッドウルフが口から火炎弾を発射する。その火炎弾はメルティアの飛び乗った木に命中、火炎弾で幹が砕け大木が一気に傾斜し始めた。メルティアは直ぐに隣りの木に移るが、レッドウルフは3体が交互に火炎弾を行い次々と木々が粉砕されて行く。


「……さすがA級魔物、火力が違う。連携も上手い」

 メルティアは感心したように言った。レッドウルフ3体はメルティアを弄ぶように直接攻撃せず、木々を折る間接攻撃を繰り返す。メルティアは下方の火炎弾による熱風を浴びながら、ジャンプを繰り返し、全身は汗でびしょびしょになっていた。


(……い、痛あああい!)

 メルティアの体の痛みが増していく。現状回復系魔法に魔力は割り振れない。


(身体強化も限界が近いようです。身体強化が使えなかったら、とてもレッドウルフと勝負なんて出来ない)

 メルティアは覚悟を決めたように顔から迷いが消える。そして枝から地面へと飛び降りた。

 

 

 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!


 これからも、どうぞよろしくお願いします。


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