北部戦線33 国境侵攻4
北部戦線、エリー機動大隊現地配備、9日目正午。
エリー達は帝国軍重装機兵部隊の急襲戦闘終了後、三時間ほど経過している。
ここは特別第三機動連隊ベースキャンプ、連隊本部テント内。
「ハル作戦部長は、第五軍管区司令部に寄ってから来るそうだ! ここへは夕方到着予定だ!」ジェーン連隊長がエリーを見て言った。
「そうですか、それは良かったです」エリーが少し嬉しそうに言った。
「帝国軍の新型機、回収出来たのですか?」
エリーが水をボトルからコップに注ぎながら聞いた。
「機体は集めれば9割くらいは回収出来そうだ。あとはブラウン商会が持って行くのだろう?」
エリーはコップの水を飲み干して言う。
「今回の新型、数が多いと厄介です。ラムザⅢ標準機体では対応出来ませんでしたから」
ジェーンがエリーの顔を見て険しい顔をして言う。
「今回は、油断もあったが帝国軍の新型機の機動力で、随分奥まで入られて良いようやられた。エリー達がいなかったもっと酷い損害を出していただろう」
「侵入して来た22機中、9機撃破! こちらは重装機兵21機大破、装甲自走車両58台大破、将兵死傷者1000名以上だからな、それに中小損害を加えればもっと増える。こちらの損害は予想以上に多い感じだ」
ジェーンは被害報告を見て溜め息を吐く。
エリーはコップに水を注ぎ飲み干して言う。「帝国軍本体は、後方に下がったのでしょう?」
「あゝ、本体30個師団が、国境より100キロほど後退したとの情報だが、まだ確認は取れていない。戦線には展開している部隊の数も不明だ」
ジェーンは奥の部隊長テーブルまで行って引き出しから包みを取り出す。
エリーがジェーンの顔を見て嬉しいそうに言う。「旦那様からの贈り物ものですか?」
ジェーンは微笑んで言う。
「そうだ、ハリーからだ。エリーと一緒に食べろと言っていた。首都で評判のクッキーらしい」
エリーが立ち上がり言う。
「では、連隊長室に行きましょう! 美味しい紅茶を淹れますよ」
「エリー少佐! 昼食の時間だ。クッキーは後で良いだろう」
ジェーンが呆れたように言った。
「そうですか残念ですが・・・・・・、そうしましょう。では昼食に行きますか」
エリーは残念そうに言った。
ジェーンがエリーに近寄り小声で言う。
「帝国軍のパイロットの捕虜を、ブラウン商会が引き取って尋問したとの事だが、どうなっている?」
エリーは首を傾げて言う。
「私には、わかりません! 把握していないので! 最近、ブラウン商会は色々動いているみたいですけど、詳細はよくわかりません」
「そうか、知らないか! お前の父親は連邦国の上層部と繋がりが深い、正直言ってエリーはとんでもないお嬢様なのだからな」ジェーンはエリーを見つめて微笑む。
エリーが機嫌悪そうな顔をして言う。
「ジェーン連隊長が、私をお嬢様として扱った事など、一度もありませんよね!」
「そんな事はない、妹の様に可愛がっているではないか」ジェーンはエリーの顔を見て嬉しそうに言った。
ジェーンがエリーの背中を押して言う。
「昼食に行くか! 余裕があるのも今日くらいだ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここはバレット市、帝国軍第三軍司令本部、特別専任機動部隊野営地。
野営地入口でミリア中尉が遠くを見つめている。
「ミリア中尉、待っても無駄と思う。残念だがビル中尉は、魔女にやられたのは間違いない」
第一中隊長がミリアの背中を見ながら言った。
「ビルがいなかったら、私達はここにいない。ビルは自ら囮になって、私達を逃してくれたんだ! ミリア中尉には申し訳無いがビルは命を掛けて私達を逃がしてくれた。ビル中尉は感謝しても仕切れない!」
ミリア中尉は呟く。「死なないて約束したじゃ無いですか・・・・・・、嘘つきになっちゃいますよ」
ミリア中尉は少し悲しそうな顔をして第一中隊長の方を向く。
「死亡は確認されていないんですよね」
第一中隊長は少し驚いた顔をして言う。
「あゝ・・・・・・、直接確認はしていない、だから絶対という訳ではない」
「そうですか、わかりました。まだ行方不明ですね」ミリア中尉がそう言うと第一中隊長は頷く。
「では、作戦結果を司令部に報告して来ます」
ミリア中尉は第一中隊長に敬礼して司令本部へと向かった。
ミリア中尉が司令本部内に入ると、一階には警備兵が数名しかいない。ここも今日の夕方には全員撤退の予定になっている。
ミリア中尉が5階に着くと、司令本部付きの秘書官がミリア中尉に敬礼、電話を取り確認して秘書官がミリアに言う。
「どうぞマーク中将がお待ちです」
ミリア中尉がノックして司令官室内に入ると、セリカ少佐とマーク中将が手前のソファに座っている。ミリア中尉はマーク中将に敬礼して言う。
「作戦結果報告に参りました!」
マーク中将が立ち上がりミリア中尉に敬礼して言う。
「目的は達成出来なかった様で残念だが、協力に感謝する。犠牲者も半数近く出た様ですまなかった」
ミリア中尉はマーク中将から視線をバインダーの報告書に移し報告を始める。
「作戦結果の報告を致します。先ず、超兵器の発射地点および、保管場所の攻撃については、失敗しました。【グランの魔女】の護衛部隊により我々の第一中隊は駆逐され壊滅的打撃を受けました。出撃11機、帰還3機となっております。第二ポイントについては損害も軽微なものでしたが、重要ポイントでは無かったようです。第二中隊は出撃11機、帰還10機となっております。連邦国軍に与えたダメージはかなりなものと推測されますが、超兵器の発射使用阻止の目的は達成出来ませんでした!」
マーク中将がミリア中尉を見て言う。
「部隊は再編成が必要ですね、帝都に戻るのですか?」
ミリア中尉がマーク中将の顔を見て答えた。
「いいえ、部隊はこのまま第二中隊で維持です。当面は補充の予定もありません」
「そうですか、では部隊は今から後退準備ですか?」
「はい、夕方には移動を開始します」
ミリア中尉がセリカ少佐を見て言う。
「セリカ少佐はいつ移動されるのですか?」
セリカ少佐はミリア中尉の顔を見て答えた。「戦線の三個師団と一緒に後退する予定です。撤退命令はすでに出していますので、夜には出ると思います」
ミリア中尉はマーク中将を見て言う。
「中将閣下もご一緒ですか」
「もちろんだ!」マーク中将は直ぐに答えた。
ミリア中尉は姿勢を正し敬礼する。
「以上で報告終わり!」
ミリア中尉はセリカ少佐の顔を見て言う。「少し時間よろしいでしょうか」
セリカ少佐はミリア中尉の少し悲しそうな顔を見て言う。
「ええ、付き合いますよ、マーク中将、少し出て来ます。よろしいでしょうか?」
マーク中将は手を上げて言う。
「あゝ、構わん」
二人は司令官室から出ると3階の食堂室に入る。窓際の席に向かい合わせで座った。
「どうしたんです? ミリア中尉! 少し動揺が感じられますが、何かあったのですか?」
ミリア中尉がセリカ少佐に言う。
「ビルが帰って来てないのです!」
「ビル・・・・・・、ビル中尉ですね、第一中隊で出撃したのですね、残念でした・・・・・・」セリカ少佐は視線を下げ悲しい表情をする。
ミリア中尉はセリカ少佐を見て言う。
「出撃前、約束したのですよ死なないて、ローラさんの約束を果たすて」
ミリア中尉の瞳から涙が溢れている。
セリカはミリアを見て思った。(ミリア中尉、第一印象とだいぶ違う、エリートでお嬢様官僚的な感じだったけど、意外と普通なのだな、こんな風に泣くなんて思わなかった)
セリカ少佐は立ち上がりミリア中尉の隣に座り肩を抱き寄せ言う。
「ビル中尉のことだから上手く生き延びていると思います。もしかして捕虜になっているかも知れません? 調べてみますよ今回の件が片付いたら」
「でも意外です、ビル中尉をそんなに気にして、性格的に合わないと思うのですが」
セリカ少佐がミリア中尉に言った。
ミリア中尉は涙を拭きながら言う。
「ええ、そう思います。でもビル中尉はあの様に見えてかなり優しいですよ、私はわかります」
セリカ少佐はミリア中尉の顔を見て言う。「ビル中尉のこと確認してみます」
ミリア中尉は少し落ち着いた雰囲気になりセリカ少佐を見て言う。
「しぶといビル中尉だから、きっと生きてますよね!」セリカ少佐はそれを聞いて微笑み返す。
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