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第329話 異世界ドリスデン2

エラン達は今後の方策を打ち合わせ、行動する。

 2国間和平交渉会議20日目朝。(大陸統一歴1001年11月2日7時頃)


 ベランドル帝国帝都ドール、皇城城皇帝執事室内。


 皇帝エラン、ハリー最高顧問、マーク宰相、ミリア秘書官、ハル外事局長、レベッカ局長付補佐官の6人がテーブルを囲む。


「エリーの生死は不明です……。が、死んではいないと確信しています」

 エランが、他のメンバーに自信ありげに言葉を発した。


「念話は絶え……、エリー様の反応も有りませんが……」

 ミリアが申し訳ないように、エランに発言した。


「エリーは、別次元空間へ移動したのです。そうですよね。ハリーさん」

 エランはハリーの顔を見つめる。ハリーは頷き答える。


「はい、それは間違い無いと思います。あの孤島に異世界へ繋がるゲートがあったとの情報を得ています」

 ハリーが情報を得たのはクリフォード王国からであった。しかも詳細な情報を得た。この情報は密かに動いたソアラによるものだった。ソアラも直接動く訳にはいかないので、ローゼの使徒を使い情報がベランドル帝国中枢に伝わるようにしたのである。


「詳しい情報は、これからお話しします」

 ハリーがこの場全員へ分かりやすく簡単に説明する。エランはあらかじめ、説明を受けていたので、特に驚く事もなく頷いていた。


「エリー様は生きていると……救出も可能と」

 ミリアが希望を持って声を上げた。エランは微笑みミリアへ微笑み返した。


「大丈夫です。エリーは帰って来ます」


 エランは立ち上がり執務机の受話器を取り何やら話した。そしてソファに戻りゆっくり座った。

「とりあえずは、ヒイルズも片付けなければなりません。他の大陸諸国の問題も全て処理出来た訳では有りません」

 エランはそう言ってメンバーの顔を見渡す。執務室のドアが〈トン、トン〉と軽くノックされる。ドアの外で皇帝護衛隊副隊長ビアの声がする。

「エラン陛下! 参りました」


 エランが直ぐに答える。

「どうぞ」

 執務室のドアがゆっくり開きビアが直ぐに入室して一礼する。

「エラン陛下、ミナを連れて参りました」

 ビアの後ろに紫髪の女性がついて来ていた。その女性はビアの横に出て丁寧に一礼する。


「エラン陛下、参りました」

 その女性は容姿がエランにそっくりだった。そうアンドレア戦線で捕虜になっていたミナだ。つい一週間ほど前にグラン連邦から捕虜返還により帰還したばかりだった。帝国第1医療院で検査入院を経て、新たな任務のため皇城へやって来た。


「ミナさん、こちらへ」

 エランが微笑み呼び寄せる。ミナはエランのそばに移動すると再び一礼した。

「……エラン陛下、帰って参りました……。また、お役に立てるよう尽力致します」


 そう言ってミナは涙を浮かべる。それを見てエランは立ち上がり優しく手を取って、ミナの瞳を見つめた。

「苦労を掛けましたね。また直ぐに任務で申し訳ないのだけれど……」


 ミナは首を横に振りエランの手を握りしめる。

「とんでも御座いません! エラン陛下のお役に立てるのです。むしろ汚名挽回のチャンスだと思っております」


「……ありがとう。ミナさん」

 そう言うとエランは優しく手を振り解き、メンバーの顔を見渡す。


「では、今後について説明致します」

 エランがハリーの方に視線を向けて頷いた。そしてハリーは一礼して言葉を発する。


「エラン陛下に代わりまして、皆様に今後について説明致します」

 ハリーがメンバーに今後の対応について説明を始めた。メンバー一同聞き入る。

 ハリーはまず、エリーの行方不明は絶対に外部に漏れてはいけない最重要秘匿事項であると説明した。万が一漏れた場合は、アクセリアルの欺瞞情報であると否定する。そして、エランにエリーの代役として隠蔽偽装スキルを用いて、しばらく行動してもらう。そのためのエランの影武者ミナであると説明した。

 エランにはローラとしてヒイルズ帝国へ行く事も決定事項であり、サポートとしてハル外事局長とレベッカ補佐官に同行してもらい問題解決にあたる。

 エリー復帰までは、トッドに大陸諸国の問題発生時の対応を任せる。孤島、南沖合島に関してはユーリを責任者として対応する。ゲートの復旧管理はリサが行い、サポートとしてソアラが着任する予定である事。そして、グラン連邦国から増派艦隊10隻が出港準備が整い次第、ヒイルズ帝国へ出撃するなどが説明された。

 尚、先遣派遣のトーラス中佐の艦隊4隻はそのまま移動して孤島の警備に就く予定となっている。


 エランがハリーからの説明が一通り終わったのを確認して、立ち上がり一礼する。

「それでは、皆様。抜かり無くお願い致します。私は、昼にはここを立つ予定ですので、マーク宰相、ハリーさん、よろしくお願いしますね」


 一同立ち上がり、エランに一礼する。

「エラン陛下! お気をつけて」

 マーク宰相が声を上げた。そして慌てたようにエラン、ハリー、を執務室に残して出て行った。


「……上手く行きますよね?」

 エランが少し不安そうな顔をしてハリーに言った。

「ええ、大丈夫です。問題有りません」

 ハリーは微笑みエランに答えた。


 ◆◇◆


 ここは異世界ドリスデン、ローゼの隠し砦施設内。

 エリー達は施設内居住ブロックにいた。フレッド隊長、イバラキはベットのある別の部屋で安静に休養中である。


 物資保存庫には、衣類や装備が残されており保存状態は400年前とは思えない。流石に食料はダメだった。衣類は高価な特殊繊維で縫製されている物で十分使用可能だ。全員が損傷した薄汚れた、軍服、戦闘スーツを保管されていたモノの中からチョイスして着替えていた。


 エリーは中世の男性服を着ている。ここに保管されていた衣服はやはり時代モノだった。


「まずは、食料ですね」

 エリーは居住ブロックの30畳ほどのミィーティングルーム内で椅子に座ってアオイに話し掛けた。


「そうですね。水は浄化装置が使えたので確保出来ました。5日間ほどの食料は欲しいですね」

 アオイは黒髪を後ろでダンゴ結びにして纏めている。実年齢よりだいぶ若く見える。他のモノと比べて身長も低いからまるで少女のようにも見える。アオイは元ヒイルズ帝国陸軍諜報部隊の女性機関員だった。主に暗殺、工作活動をしていたらしい。剣技レベルも実力者だったようだ。そして今は、ドーラ•アクーニャの女神精神体を取り込み、彼女の元々の精神体は壊れ一部が取り込まれ記憶として残っているだけだ。もう、元の彼女に戻ることは無い。アオイの肉体は、そのうちドーラの精神体と一体化して、元のアオイの存在は完全に失われる。

 エリーはアオイを眺めて考え込んでいた。このアオイがいなければ、今回の事象は発生しなかった。魔導器具の助けがあったとしても女神の精神体を一時的にでも受け入れられる。何かしらの英雄の血統者であるとエリーは結論づける。


 この隠し砦施設内の確認は、金髪美女のシエルと長身イケメンのランディが一通り行い安全であると判断している。エリーが先行して行った感知スキルでも何も脅威は確認出来なかった。

「よく、見つからずに残っていたものですね」


 エリーは薄手の黒いローブ羽織りながらアオイに言った。


「結界と隠蔽装置が作動していたので、そのお陰でないかと」

 アオイがエリーの顔を見て答えた。アオイはそのままエリーの顔を見つめる。


「……!? どうしました?」

 エリーが怪訝そうな顔で尋ねる。


「いえ、エリー様が……、何でも有りません」

 アオイは何かを言いかけて途中で口籠る。


「私は、外の偵察へ行きます。シエルさんと行きますので、留守番をお願いしますね」

 エリーがそう言うとアオイが不安そうな顔をする。


「……、今、外がどんな状況かわかりません。エリー様なら、大丈夫でしょうが……。用心はしてください」


「無理はしません。これでも根は臆病ですから」

 エリー笑って答えた。そしてテーブルの横に置いていた軍刀をローブをめくり腰のフックに装着する。

 エリーはアオイの肩に手を優しく添えて頷くと、視線を金髪美女シエルに向ける。シエルも中世の男装衣装でローブを羽織っている。

 シエルがアオイに一礼すると、エリーとシエルは部屋から出て行った。



 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

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