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第327話 魔女の正体26

エリーが世界から居なくなった。

 2国間和平交渉会議20日目明け方。(大陸統一歴1001年11月2日5時頃)


 ヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。


 ここは30畳ほどの北山防衛本部室内、10名ほどの皇帝護衛隊将兵達は、重苦しい雰囲気に包まれていた。そして、先ほどクリフォード中継基地より到着した、ユーリが中央の作戦会議用テーブルの椅子に座り苛立った顔をしている。


「……それで、最下層へは何時立ち入ることが出来るのですか!?」

 ユーリは機嫌の悪そうな声で、皇帝護衛隊、ニコル隊の副長に尋ねた。女性副長は少し怯えた表情でユーリに答える。


「ユーリ様……、現在、リサ様が全力で復旧対応されておりますが、目処は立っておりません」


「……」

 ユーリは椅子から立ち上がりはっと息を吐くと言葉を漏らす。


「ニコルが負傷するとは……」

 この島にユーリは着くなり、黒ずくめの者達の集団を、連れて来た増援部隊と共に30分ほどで殲滅していた。残っていた黒ずくめのもの達は施設内に侵入したもの達比べ実力は劣っていたが、それなりの実力はあった。しかし、怒るユーリの前では無力だった。殺しはしなかったが、圧倒的なユーリの前に黒ずくめのもの達は呆気なく次々と倒されたのだ。

 ユーリは黒ずくめ者達の正体を探るべく、尋問を行ったが、強固な秘匿術式が各人に施されており、聞き出すことが出来なかった。


 ユーリは新たな敵の出現に各諜報機関に調査を依頼した。そして、この島の情報が全く無いことにも戸惑い苛立っていた。

(大陸各諜報機関が、この島の情報を全く持っていないなんて……。やはりヒイルズ帝国上層部と接触するしかないのですかね)


 ユーリは防衛本部へ来る前、封印施設に立ち入ろうとしたが、リサに断られた。リサは、とりあえず応急処置が終わり落ち着くまでは、ユーリに出来る事は無いと説明した。

 ユーリはニコル隊の女性副長から詳細な状況説明を受け、島の警備強化と人員配置を行った。


 ユーリは伝心念話で再三エリーに呼びかけたが応答はない。そしてユーリはベランドル帝国にいるトッドへ連絡を行い指示を仰ぐ。連絡を受けたトッドであったが、現在状況把握のためエラン、ハリー達と緊急の話し合いを行なっており、指示は無く、現状把握に努めよだけであった。明らかに周囲が混乱しているのがユーリにはわかりそれ以上聞いても無駄と思わせた。


(エリー様……無事でいてください)

 エリーに対してユーリに今、出来る事は無かった。それがユーリの心を不安にさせる。ユーリはエリーに絶対的忠誠を誓い、女神の祝福を受け、主人と認めている。


「ニーダ副長! 増援第二陣到着まで、第1種戦闘体制維持でお願いします。私はニコルの様子を見てから、島内のパトロールをしばらく行います。異常があれば直ぐに連絡を」

 ユーリが防衛本部のドアへ向かいながら、ニコル隊女性副長へ指示を出す。


 「はっ! 承知しました!」


 ニコル隊女性副長が答えると、ユーリは防衛本部室から出て行った。



 ◆◇◆



 エリー達は真っ暗い広い空間内にいた。先ほどアオイが意識を取り戻し、目の前にセレーナの姿をしたエリーに見惚れている。エリーは白い光に包まれその光が周囲を照らしていた。


「気がついたか? ドーラ•アクーニャ……、いやアオイだったか?」

 銀髪の赤い瞳のエリーが仰向けに寝かされているアオイに話し掛けた。


「……はい、セレーナ様、ここは……? もしかして時空体へ!? ではドリスデン?」

 アオイはエリーに顔を向けそう言って口籠る。


 エリーは膝を着きアオイの顔を見る。

「アオイ、お前は詳しい事を知っているようだな。私はここを認知していない。ローゼからもそのあたりの記憶を受け取っていない。不都合だったのか……」


 アオイは上半身を起こしてエリーの赤い瞳を見つめて頭を下げた。

「申し訳有りません……私の体に治癒をしてくださったのですよね」


 エリーは頷き精悍で高潔な美しい顔をアオイに向ける。それを見てアオイは思わず赤面してしまう。

「……またご迷惑を……」

 アオイは思い出したように周囲を見渡す。広い空間内はエリーの発光する白い光だけでは全体を視認する事は出来ない。5m離れて男性が仰向けに寝かされている。


「あれは……」

 アオイが無意識に声を漏らす。


「あゝ、イバラキだ。治癒処置はしている。命に別状はない。心配は無用だ」

 エリーはアオイに優しく答えた。そしてアオイは視線を移すと迷彩柄の軍服の男性が横たわっている。

「とりあえず大丈夫だ。フレッド隊長は回復には少し時間がかかる。一気に再生したら反動が大きいからな。まあ命は問題無いが、目覚めたら体の痛みが半端なく堪えるだろう」


 エリーはアオイに微笑み返す。

「アオイお前は、ローゼの力を分け与えられた擬似精神体だな。お前の中でローゼを見た」


 アオイは頷き答える。

「はい、仰せの通りです。私はローゼの魂精神体を分け与えられた。女神ドーラ•アクーニャです。ローゼの使徒として肉体を持たないローゼの出来ないことをするために作り出された者です」


「……そうか、だが、ローゼもひどいことをするものだな。お前はゲートの管理者として400年もの間……、悲しいとは思わなかったのか?」

 エリーを包む白い光が揺らぐ。アオイは視線を逸らして言う。


「……そんな気持ちより義務感の方が大きくて……、ドリスデンの防衛ラインを突破されてとにかく、ローゼの言うままに、私の失敗で多くの仲間も死にました。世界を守るために」


 アオイが悲しい顔をする。エリーはアオイの肩に優しく手を添える。

「アオイ、私にお前の記憶を見せてくれ。無理にとは言わない……」


「……はい、セレーナ様……、400年前の事をセレーナ様が知らないとは思っていませんでした。ローゼは隠したかったのかもしれませんが、どうぞ全てを見てください」


 アオイはそう言ってエリーの額に自分の額を重ねる。そしてアオイがエリーの光に包まれた。アオイからエリーに大量のイメージが流れ込む。そしてしばらくしてアオイがエリーから顔を離して上目遣いで見つめた。


「……あゝ、理解した。アオイも苦労したのだな……、私には慰めることも出来ないが、すまない」


「いいえ、セレーナ様だって……いえ、ありがとうございます」

 そう言ってアオイは気配を感じて、薄暗いエリーの後方を見る。そして黒い影が。

「……!?」


 アオイは強張った顔で声を上げた。

「セレーナ様! 敵……」

 

 

 どうもありがとうございました。最後まで読んでいただき、感謝致します。

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