表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
339/447

第324話 魔女の正体23

封印施設内で戦闘は続く。

 2国間和平交渉会議20日目未明。(大陸統一歴1001年11月2日3時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。


 北トンネル内部封印の間下層4層階段内部に正体不明の集団の侵入を許していた。エリーは侵入した黒ずくめの集団残る3人と戦闘中であった。

 エリーのインカム受信イヤースピーカーから雑音混じりの通信が入った。

『ニコル隊長! 負傷戦闘……ガーガー……繰り返す! ガーガー……ニコルガーガー……負傷ガーガー』


「えっ! ニコルさんが!? 負傷?」

 エリーは黒ずくめの3人と剣撃を交えながら声を漏らす。


(……他に強者が……まずいなぁ……。早々に片付けて上層へ上がらねば。でも、無理は出来ない。施設結界が崩壊したらそれこそ大変な事になるからね)

 エリーは相変わらず、魔力シールドを周囲に展開しながら魔力量を抑えながら戦闘をしている。黒ずくめの女性リーダーは、気迫の剣撃をエリーに向けるがエリーは難なくそれを弾き返した。黒ずくめの3人に疲労感が見え始める。


 施設最上部入口へは、先ほどリサが移動して強力な魔法結界を展開して他の侵入者を許していない。つまり、この黒ずくめの3人は後方の皇帝護衛隊とエリーに挟まれ消耗戦をしている状況なのだ。エリーは魔力を丁寧に制御しながら徐々に3人を追い込んでいく。当然、自分達がジリ貧になるのは黒ずくめの3人も理解している。だが、エリーを突破出来る方策が見出せないまま疲労と苛立ちが募る。


 エリーは相手を左目の神眼で視感しながら、そろそろ相手が限界付近に近づいている事を感じる。

(無謀な手に出なければ良いのですが……)


 エリーが女性リーダーに声を上げる。

「撤退するのなら! 道を開けましょう!」


 それを聞いて黒ずくめの女性リーダーがエリーに剣撃を打ち込み声を上げた。

「冗談ではない! 任務を達成する!」


 そして下がり際女性リーダーが腰から10cmほどの棒状のものをエリーに向かって投げつける。


 エリーはすかさず、それに反応して魔力量を一気に増大、周辺に強固な魔法シールドを展開した。そして大きな爆発音がすると同時に光と煙が巻き起こった。エリーは階段通路を魔力シールドで覆う。

「なんて事を!」

 エリーが声を上げる。すかさず黒い影が物凄いスピードでエリーの横をすり抜けた。


「……!?」

 エリーが反応するより早く、後方の黒ずくめの2人がエリーに間合いを瞬時に詰めて斬撃を放った。


「しまった!」

 エリーは声を漏らして黒ずくめの2人を軍刀を横の回し押し戻す。黒ずくめの2人は、残りの力の温存など考えていないような全力の剣撃をエリーに連続で仕掛けて来る。階段通路に激しい刀身の当たる金属音が響く。エリーはそれを丁寧にいなしながら階段上へと押し返した。

 エリーには焦りは無かった。アオイにはイバラキがついている。イバラキの実力ならあの黒ずくめの女性リーダーとも十分渡り合える。



 ◆◇◆


 ここは封印の間下層5階層。


 イバラキはアオイをフレッド隊長のいるところまで下がらせる。異変に気付き直ぐに対応した。


「……来る」

 イバラキは軍刀を右手で抜き放ち、両足を軽く開き右足を少し引いて中段に構える。エリーから施設内では障壁を破壊しないよう注意は受けている。だから、イバラキは身体強化に魔力を集中させた。


 そして5階層階段通路口から黒い影が物凄いスピードで飛び出して来る。イバラキと階段通路口から30mほどあったが黒影は、一瞬で距離を詰めてイバラキの間合いに到達した。


「……早い!」

 イバラキが牽制の斬撃を黒い影に放った。そして黒い影がイバラキの前で牽制の斬撃を避けると、一旦後ろへすぐさま退がる。イバラキは黒い影が黒ずくめの女性であると認識する。右手にショートソードを持ち、全身艶の無い黒いゴム質感のスーツ、身長はイバラキと一緒くらいある。なにより、タイトなスーツから体のラインがくっきりと見てとれる。手足は長く適度に鍛えられた筋肉の隆起が美しい。そして下着のような薄いラインの境目が下半身と上半身に見える。ウエストは絞られ、胸の膨らみもイバラキの手から溢れるほどの大きさがあった。黒ずくめの女性が後ろへ飛び胸が揺れたのを見て、イバラキは一瞬戸惑いの表情を浮かべ、黒ずくめの女性を見据えた。


(……俺が、動揺した。よくもこんな恥ずかしい格好で!)


 イバラキは黒ずくめの女性を見据えたまま、右側へゆっくりすり足で移動する。軍刀の刀身へ魔力量を上げ通した。上体を沈めると床を蹴り上げ瞬時に加速、黒ずくめの女性の前へ飛び込むと上段斜めに軍刀を振り下ろした。黒ずくめの女性は直ぐに反応して上体を後ろに反らす。


 目出し帽の右側面にイバラキの刀身が微かに触れて布の裂ける音がする。黒ずくめの女性はさらに左手を床に突きその反動で2mほど飛び下がり、イバラキと距離をとった。

 黒ずくめの女性は裂けた目出し帽を左手で引っ張り外すと、金髪のショートボブヘアが広がり、切長の茶色の瞳、顔立ちの整った顔が現れた。両眼は殺気を帯びてイバラキを見据えている。


 イバラキは一瞬剣先が届いたと思ったが、寸前のところで見切られた事に少し驚いていた。


「なかなかやるな!」


 イバラキが黒ずくめの金髪女性に声を上げた。距離10m間でイバラキを見据える黒ずくめの女性は明らかに疲労感が見える。エリーとの戦闘で体力を随分削られたからだ。瞳は殺気を帯びてイバラキを見据えて口を開いた。


「……、あなたもなかなかです!」

 流暢ではないが、聞き取れるヒイルズ語でイバラキに答えた。金髪女性の声を聞いてイバラキは一瞬顔を緩める。

 イバラキは軍刀の柄を両手で絞る。そうして呼吸を深くゆっくり整え精神集中、雑念を消し魔力量を上げ斬撃を放つタイミングを図った。

 黒ずくめの金髪女性もショートソードを構え飛び込むタイミングをうかがっている。そしてしばらく両者の睨み合いが続く。

 睨み合いが時間にして1分ほど経過して、黒ずくめの金髪女性が動こうと、少し屈み込もうとしたその瞬間、階段通路口から物凄いスピードで飛び出し、一気に黒ずくめの金髪女性へ詰める白い光。

 たまらず黒ずくめの金髪女性が、後ろへ飛び退がり壁際に追い詰められる。それはエリーが階段通路の黒ずくめのd2人を片付けて、今やっと5階層へ降りて来たのである。

 エリーは黒ずくめの金髪女性を壁際へ追い込み、斬撃を繰り返し放ち逃げ場がない角へ追い込んでいく。黒ずくめの金髪女性は、必死でエリーの斬撃をショートソードで受け流しながら、自分が角地へ追い込まれいる事に気づかない。

 エリーは軍刀を振るいながら、笑みを浮かべ目の前の黒ずくめの金髪女性に話しかける。

「何処から来られたのですか! いい加減諦めて欲しいのですが!」


 黒ずくめの金髪女性は整った顔を顰めてショートソードでエリーの軍刀を巧みに受け流す。エリーも全力ではないが、この黒ずくめの金髪女性の技量には感心していた。


(剣技はセリカさんに匹敵するかもですね。ですが、もう余裕はないですね)

 黒ずくめの金髪女性は大き目の胸を揺すりながら、寸前のところでエリーの剣先をかわしていく。エリーは黒ずくめの金髪女性のバストの揺れを見て何故か少し苛立ったいた。


 イバラキは後方でエリーと黒ずくめの金髪女性の戦いを見守っている。黒ずくめの金髪女性の体型は8頭身、出るところは出て美しい体をしている。なによりイバラキの視線を釘付けにするの細い体に似合わない揺れる大きな胸だった。イバラキはこの受け入れ難い感情に戸惑っていた。エリーも十分綺麗で魅力的とは感じてはいたが、こんな感情は起こらなかった。


「……俺は、あの女に魅了されているのか?」

 イバラキはポツリと呟いた。


 

 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます!

 これからも、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ