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第319話 魔女の正体18

エリーはゲートの修復を進める。

 2国間和平交渉会議20日目未明。(大陸統一歴1001年11月2日2時頃)


 ここはヒイズル帝国南部島より南へ300キロ離れた孤島、南海の魔女封印地。魔女の島北東部絶壁海岸。


 黒いボートのようなもの数隻が接岸、ボートには一隻あたり6人ほどが傍につかまっている。全員黒ずくめの潜水スーツを着用している。岩場に身を潜め目立たないよう全員身を潜めていた。人数は30名程度、全員腰ベルトショートソード拳銃ホルダーを装備している。そして全員がタイトな潜水スーツから鍛え絞られた肉体であることがわかる。体型的に女性が7人ほど男性が20人ほどいる。各ボートからそれぞれ大きめの黒いケースを岩場に下ろすと、ケースを開けて短機関銃を取り出し、全員が受け取る。


「各員! 装備確認!」

 各班リーダーらしき者が、それぞれに各班員に声を掛けた。


「お前達は、ここで待機! 予定時間がくればそのまま撤退! 待つ必要は無い」

 指揮官らしき女性が隣りの男に言った。

 

「はい、了解です。こちらが気づかれた場合は、それぞれで撤退をお願いします。真っ先に撤退しますので」

 指示を受けた男は潜水ゴーグルを上げ答えた。

「では撤退守備班を残し、全員行くぞ」


 指揮官らしき女性が静かに指示を出す。周りの者は頷き答えた。3人ほどがボートから抱えて投擲装置を持ち上げ設置すると、すぐさま発射〈びゆーう〉と20mほどの崖の上へロープを掛け渡す。

 指揮官らしき女性が右手を挙げて合図すると慣れた様子で黒ずくめの者達がロープを伝い簡単に登って行く。5分ほどで全員が登りきり、木々の間に5名の班ごとに集合する。


 指揮官らしき女性が密集し小さく集まっている黒ずくめの者達に小声で言う。


「通信機は使用は控えろ! 間違いなく傍受され位置が特定される。電源を入れる時は作戦失敗時のみだ。そして、戦闘は控えて作戦目標を優先するように。どうしても避けられない戦闘は許可するが、積極的に仕掛ける事は絶対許可しない。あとは万が一捕まった場合は予定通りの行動を。以上! あゝ、最後に、会話は大陸共用語を使うように。以上」


 そして右手で合図すると各班が拡散して素早く林の中へ消えて行く。


 ◆◇◆


 ここは魔女の島北トンネル内部封印の間50畳ほどの空間。エリーとイバラキが2人で話していた。


「キサラギ准将閣下としてお伺いしますが。ヒイルズ上層部はこの件を把握していたのですか? ここが長く持たないことを?」

 エリーはイバラキのゆっくりとした優しい口調で尋ねた。エリーとしては、ヒイルズの実力者キサラギが偽名を使い潜り込んでいたことは、すでにヒイルズはこの状況を把握していたと見込んでいる。


「……いえ、偶然です。本当に、私はたまたまここにいただけで。劣化状況など聞き及んでおりません。これは本当に偶然なのです」

 イバラキは困惑した顔で答える。エリーは呆れたように息を吐くと、イバラキを見つめる。

 エリーの左の瞳が朱色から赤色に変化する。イバラキはギョッとしてエリーに言った。


「……お疑いですか? ですが真実です」


 エリーは諦めた顔をしてイバラキを見つめる。

「……どうやら、本当のようですね。申し訳有りませんでした。神眼スキルを使わせてもらいました」


 イバラキは少し機嫌の悪い顔をして頭を下げると言った。

「ローラ様に、ご迷惑をお掛けした事には変わりは無いので、謝罪致します」


「あゝ、まあ、確かにそうですが。イバラキさんが謝ることではないですね。謝罪はワダ閣下にしてもらわないと」

 エリーは少し笑ったようにイバラキを見て言った。そして部屋の中に魔導隊の士官が上がって来る。


「ローラ様! 最下層へ入る準備が出来ました。お願い出来ますか? フレッド隊長がお待ちです」

 対魔導服を着込んだ魔導隊士官が敬礼してエリーに言った。今回の現場は魔力が高濃度のため、作戦域立ち入りは上級魔導士以上が条件になっている。基準に満たない隊員達は施設の安全区域に待機、バックアップを行っていた。

 魔力耐性が低い者は、ここの地下施設では対魔導防護服を着込んでも10分ほどしか持たない。意識を失うか、平常心を保てなくなり錯乱状態になるかのどちらかだ。そしてさらに浴び続けると最悪死に至る。エリーは防護服を着る必要も無い。と言うより、障壁展開すれば十分こと足りる。そして何よりエリーは魔力を体に溜め込みセレーナのコアにほぼ無限に圧縮吸収することも出来る。普通の魔導士なら魔力耐性オーバーで動くことすら出来なくなるだろう。


 施設階層は5層に分かれ1層降るごとに、魔力濃度が上がる。それをリサが3階層で既存魔導回路を制御しながら制御して今は抑えていた。

 そしてフレッド隊長率いる精鋭魔導隊10名が魔導回路の修復と持ち込んだ魔導回路の設置調整を行っていた。フレッド隊長はアンドレア魔導師団のこういった事案のスペシャリストと聞いている。確かに段取り良く処理が進んでいた。


 エリーは階層石造りの階段通路を3階層までイバラキと共に降りる。

 

「リサさん、ご苦労様です。予定通り進んでいますね」

 エリーはリサのそばに近づくと微笑み声を掛けた。リサはエリーを見て頭を下げる。

「……問題は今のところ有りません。各階層の魔導回路の設置も順調です。あとは最下層の物理障壁の補修ですね。朝までにはとりあえず完了すると」


 3階層の壁際にアオイが立って進捗を見守っている。エリーはアオイの前に近づき顔を見て言った。

「どうです。体に異常はないですか?」


 アオイは少し疲れた顔をしてエリーを見る。

「……大丈夫です。これくらいなら、もう対応出来るようになりました。この体は適応力はまずまずあるようです」


 エリーはアオイに微笑み返す。

「まあ、アオイさんもこれが終わったら、しばらく治療しますからもっと楽になるはずです」


「ローラ様、お心遣い感謝致します」

 アオイはそう言って頭を深く下げた。


「フレッド隊長は、ゲート前ですか?」

 エリーはリサの方を向いて尋ねた。


「はい、ゲート物理障壁の破損状況を確認中です」

 リサは直ぐに答えた。エリーは頷くとアオイを見て言う。

「では行きましょう」


「あ……はい」

 アオイは少し不安そうな顔をする。


「アオイさん、心配無用です。私も、イバラキさんも一緒ですから」


 エリーは、そう言ってイバラキを見て頷き、魔力量を上昇させて白い光に包まれる。

「では下へ行きます」


「ローラ様……」

 アオイをエリーの白く輝く魔力障壁が包み込む。


 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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